【逃亡の果ての逮捕】腕時計9600万円相当を横領『シチズン』元幹部はなぜ「お金が欲しかった」のか

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高級腕時計約420本を横領か

「お金が欲しくてやった」

1年9ヵ月もの間、逃亡生活を続けた男は警察の調べに対してこう語り、容疑を認めたという。

5月27日、警視庁捜査二課は大手時計メーカー『シチズン』の元幹部・本間欣哉容疑者(57)を業務上横領の疑いで逮捕した。

「容疑は’19年12月ごろから’20年2月ごろに、子会社の倉庫で保管中だった腕時計8本(販売価格約220万円相当)を新宿の買い取り店に持ち込み、約80万円で売却したというものです。

警察は本間容疑者が’19年12月ごろから’24年4月にかけて約420本(販売価格約9600万円相当)の腕時計を40回以上にわたって売却。代金の約3000万円以上を飲食やゴルフ代などに使っていたとみて捜査を進めています」(全国紙社会部記者)

当時、本間容疑者は店頭での販売促進業務を担当しており、宣伝目的での展示用に自社のシステムで倉庫の在庫を取り寄せられる立場にあった。

「このシステムを悪用して’20年4月に昇進したあとも不正な持ち出しを繰り返したとみられます。シチズンでは’24年に商品の在庫状況の確認を強化することとなりました。本間容疑者はその直後の9月、上司に『出勤できない』などと伝えて失踪したのです。その後、社内調査で横領が発覚し懲戒解雇。同年12月には警視庁に被害届が提出されていました。

行方をくらましていた本間容疑者ですが、熱海市内の温泉旅館で働いていたところを見つかり、逮捕されたのです」(同前)

シチズンという有名企業の幹部でありながら、その立場を利用してずるずると悪事を繰り返した本間容疑者。ここ最近、世間を騒がせた業務上横領事件には次のようなものがある。

・静岡県沼津市の沼津夜間救急医療センターで経理を担当していた臨時職員の男(‘24年6月に死亡、当時69歳)が、労災保険や自賠責保険などで支払われる診療報酬を横領。5月11日に静岡県警が被疑者死亡のまま書類送検した事件。

男は’19年1月から’24年6月に診療報酬約6200万円を秘密裏に作成した銀行口座に計882回にわたって振り込ませていた。その後、男は不起訴となったが、’08年から計約2億5000万円を横領したとみられている。

・新潟簡易裁判所の判事が、公務員宿舎の管理組合の共益費を横領し、オンラインカジノで賭博をしていた。4月17日に秋田地検は業務上横領と常習賭博の罪で判事を在宅起訴した。

この判事は’23年4月から’25年5月に、当時住んでいた横手市の国家公務員宿舎の管理組合が居住者から集めた共益費のうち、計278万5200円を自分名義の預金口座に入金するなどして横領。一部をオンラインカジノでの賭博に使用したとされる。判事は共益費が振り込まれる口座の通帳を管理していた。最高裁はこの判事の罷免を求めて5月13日に弾劾裁判を請求している。

預かり、管理を任されていたものを私物化した

これらの事件は、本来は病院の口座に振り込まれるべきおカネを自分の口座に振り込ませたり、管理していた共同の口座のおカネを流用していたケースだ。このように「業務上横領」というと、“おカネを使い込む”イメージだが、会社の腕時計をパクって売り飛ばした本間容疑者の犯行は「窃盗」とは違うのだろうか。また、会社に損害を与えたという意味では「背任」には当たらないのか。アトム法律事務所の松井浩一郎弁護士に聞いた。

「窃盗は、他人が占有している物を、その意思に反して持ち去る犯罪です。店頭の商品を客がこっそり盗む、といった場合がこれに当たります。ポイントは『物の占有が他人にある』点です。

業務上横領は、自分が業務として預かり・管理を任されている他人の物を、不法に自分のものにする犯罪です。すでに自分が物を手元に持っている点が、窃盗との決定的な違いになります。

背任は、他人のために事務を処理する者が、任務に背いて本人(委託した人)に財産上の損害を与える犯罪。特定の物を自分のものにするというより、『任務違反による財産的損害』という構造の犯罪で、不当な融資などが典型です」

では本間容疑者の犯行が「業務上横領」となったポイントはどこなのだろうか。

「本件は、営業企画一課長という立場で、子会社倉庫に保管されていた腕時計を職務上の権限で取り寄せ、自分の支配下に置いたうえで売却した事案です。腕時計はもともと会社側が占有していた物ですが、課長が職務上これを取り寄せられる立場にあったことから、領得(他人の財物を自らのものにしようとすること)した時点では本人の占有下にあったと評価できます。

このように、自分が業務上扱える立場にある会社の物を私的に売却して領得した、という構造であるため、店頭の物を奪う窃盗ではありません。また財物そのものを自分のものにしている以上、財産的損害にとどまる背任でもなく、業務上横領罪が成立するという整理ができます」

逃亡の果てに逮捕されることになった本間容疑者。真面目に定年まで勤めあげれば、退職金も含め横領で得た以上のカネを稼げたのではないか。なぜ彼は積み上げてきたキャリアを失うような犯罪に手を染めたのか。詳細な事情は今後の調べで明らかになるはずだ。

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