いよいよ始まる「トランプvs習近平」米中首脳会談で急浮上する恐れのある「日本問題」の深刻度
米中会談「第4の問題」
いよいよドナルド・トランプ米大統領の北京訪問(5月14日〜15日)が迫ってきた。習近平中国国家主席との首脳会談は、間違いなく、今年世界で最重要の首脳会談となるだろう。
米中首脳会談で話し合われるのは、主に「3大問題」と見られている。すなわち、イラン、貿易、台湾である。
イラン問題は言うまでもなく、アメリカと中国双方にとって、いま最も喫緊のイシューだ。それに対し、貿易問題はどちらかというとアメリカ側が重要視していて、台湾問題は中国側が重要視している。
だが私は、中国が「4つ目の問題」を議題に持ち上げるのではないかと、危惧している。それは、日本問題だ。
昨年11月7日に、高市早苗首相が国会答弁で、「台湾有事と存立危機事態」について言及。そこから周知のように、中国側のヒステリックとも言える異常な「日本叩き」が始まった。
5月7日で「高市発言」から半年が経ったが、中国の日本批判は一日も止むことはない。それどころか、むしろますます声高になっている。
例えば、5月9日晩のCCTV(中国中央広播電視総台)の『中国新聞』のトップニュースは、中国国防部の蒋斌(しょう・ひん)報道官(新聞局副局長)が発表したという声明だった。それは、次のようなものだ。
「われわれは、日本の政権当局が、いわゆる『自由・開放』や『安全保障協力』という名目を掲げ、陣営の対立を煽(あお)り、『小さなサークル』を作り上げ、他国の戦略的安全保障と利益を損なうとともに、自国の軍事規制緩和の口実や突破口を図ろうとする動きに、断固として反対する。
今年5月3日は、東京裁判の開廷80周年の記念日である。この80年間、日本の右翼勢力は、人類の良心と歴史的正義を代表する厳粛な判決を意図的に軽視し、これに抗い、黒い歴史として記録された日本軍国主義の侵略罪行を歪曲し、否定してきた。
天を衝く罪を犯したA級戦犯が『英雄』として称えられ、靖国神社に祀られている。日本政府の『平和憲法を守り、平和国家の道を歩む』という立場は、明確な公約として表向きは従いながら、裏では逆行する態度へ、そして現在の高市早苗政権による公然とした改憲推進へと変化している。日本の右翼勢力は偽装を徐々に剥ぎ取り、密かな軍備増強から公然たる戦争準備へと転換しており、日本の『新軍国主義』が地域の平和に及ぼす現実的な脅威が、日増しに顕在化している。
戦争ではなく平和を、対立ではなく協力を求めることこそが、現代の真の要請である。われわれは日本の政権当局に対し、偽りの自己美化と軍備増強、戦争準備の危険な野心を止め、真摯に歴史と向き合う姿勢と誠実な反省の行動を示し、アジアの近隣諸国および国際社会の信頼を勝ち取るよう強く求める」
このように、国防部報道官が強い口調で吠える様子を、テレビで流したのだ。日本に対して、「新軍国主義」(新たな軍国主義)、「新戦前」(新たな戦前)という物騒な言葉を使って非難するのが、最近の中国の風潮となっている。日本が戦後80年あまりにわたって貫いてきた「平和主義」「専守防衛」といったものから脱皮を図っているとして、強い警戒感を持っているのだ。
さらに2番目のニュースでも、蒋斌報道官が登場して、再び吠えた。
「日本とフィリピン両国の特定の政治家が、海洋問題に関して虚偽の主張を煽り、根拠なく中国を中傷していることに対し、われわれは強い不満を抱き、断固として反対する。これらの国は、地域の国々の平和と発展を求める共通の願いを無視し、また自国民の反対を顧みることもなく、私利私欲のために軍事的な連携を強化し、地域の情勢を緊張させているのだ。
日本側は合同演習に(自衛隊の)部隊を派遣し、初めて海外で攻撃型ミサイルを発射するなど、『専守防衛』の原則を意図的に破ろうとしている。フィリピン側も、域外の勢力を引き入れて自らの権利侵害行為を後押しさせようとし、さらに中国側に責任転嫁しようとしている。これはまったくの誤算だ。
中国軍は、自国の領土主権と海洋権益を守るという決意を揺るぎなく堅持している。われわれは関係各国に対し、パートナーを集めて陣営の対立を煽ることを止め、地域の平和と安定に真に資する行動を多く取るよう強く促す」
これは、自衛隊が初めて「バリカタン」(アメリカ軍とフィリピン軍の合同訓練)に本格参加したことと、GWに小泉進次郎防衛相がフィリピンを訪問して、両国が中国を「敵視」したことを非難したものだ。
フィリピンとは「準同盟」
「パリカタン」については、4月14日に防衛省・自衛隊が概要を発表している。それによると、4月20日から5月8日までフィリピンで行われ、日本以外にはフィリピン、アメリカ、オーストラリア、カナダ、フランス、ニュージーランドが参加した。
参加した自衛隊の部隊は、多岐にわたる。
統合幕僚監部、陸上幕僚監部、陸上総隊、北部方面隊、陸上自衛隊富士学校、陸上自衛
隊高射学校、陸上自衛隊補給本部、自衛艦隊、情報作戦集団、航空幕僚監部、航空総隊、
航空支援集団、航空教育集団、航空システム通信隊、入間病院、統合作戦司令部及び自衛隊サイバー防衛隊の人員約1400名並びに護衛艦「いせ」、「いかづち」、輸送艦「しもきた」、輸送機「C−130H」、救難飛行艇「US−2」、88式地対艦誘導弾等
訓練内容も、8項目にあたる。
(1)多国間海上訓練、(2)水陸両用作戦訓練、(3)対着上陸射撃訓練、(4)対艦戦闘訓練、(5)統合防空ミサイル防衛訓練、(6)サイバー攻撃等対処訓練、(7)統合衛生訓練、(8)滑走路被害復旧訓練
小泉防衛相は、5月5日〜6日、フィリピンを訪問した。その目的や成果については、5日夜にマニラのシャングリラホテルで記者会見を行っている。そこで、ギルベルト・テオドロ国防相との会談について、こう述べた。
「テオドロ大臣との間では、東シナ海及び南シナ海における、力または威圧による、いかなる一方的な現状変更の試みにも、強く反対することを改めて確認し、地域情勢が緊迫化する中、情勢認識の継続的な共有を行っていくことを確認しました。あわせて両国の安全、及び地域の平和と安定を確保するため、必要な場合には、両国で協議を実施することでも一致しました。
また、フィリピンの海洋状況把握能力向上のため、我が国はこれまでも警戒管制レーダーの移転等を進めてきました。今般の日本の防衛装備移転三原則、及び運用指針の改正について私から説明したところ、地域と世界の平和と安定に対する日本の貢献を更に強化するものとして、テオドロ大臣から支持と、期待の表明をいただき、地域の抑止力・対処力の強化に資する、防衛装備・技術協力を更に推進・促進していくことを、両大臣で確認しました。その上で、この新たな装備移転制度の下、本日、テオドロ大臣との間で、防衛装備・技術協力の更なる推進に関する、声明に署名を行いました。
この中で、両国防衛当局の政策・運用・装備部門を含むワーキンググループを設置しました。そして、『あぶくま』型護衛艦及びTC−90を早期に移転することを目指し、これらを含む防衛装備品の移転について、教育訓練・維持整備・運用面での連携、情報共有・装備品の適切な管理の在り方を含め、包括的な装備協力を実現する議論を進めることで一致しました。
さらに、テオドロ大臣との間で、昨年9月の円滑化協定(RAA)の発行や、今年1月のACSA(物品役務相互提供協定)署名をはじめとする、防衛面での一層の連携強化を可能とする、法的基盤の整備を歓迎しました。明日、円滑化協定発効後、自衛隊が初めて参加する、アメリカ及びフィリピン主催の、大規模多国間共同訓練『バリカタン26』をテオドロ大臣とともに視察します。円滑化協定(RAA)の発行により、今まで出来なかったフィリピン国内への武器の持ち込みが可能となったことから、フィリピン国内でははじめてとなる地対艦ミサイルの実弾射撃を含む、実働訓練を実施します。(以下略)」
このように、日本とフィリピンは、中国という共通の脅威を前に、「準同盟」のような関係になりつつあるのだ。フィリピン情報庁は5月8日、次のような中国を非難する声明を発表している。
<フィリピン沿岸警備隊(PCG)は昨日、カラヤン群島で、中国による違法な海洋科学研究活動に抗議するため、海上領域認識飛行を実施した。飛行中、中国の海洋調査船「向陽紅33」がロズル礁の西約7.34海里で静止しているのを観測した。船は岩礁にボートを積極的に出しており、無許可の作戦が進行中であることを確認した。同じ場所では、中国沿岸警備隊の船舶がロズル礁西部で徘徊しており、13隻の中国海上民兵船が周辺海域に停泊していた。
「向陽紅33」は4月15日に中国を出港し、フィリピン排他的経済水域内の複数の地形で体系的に調査活動を行っている。(中略)パグアサ島に接近する際、PCGの航空機はさらに28隻の中国海上民兵船を監視した。中国海警の船舶がパガサ島の西約2海里の地点に位置しているのが観察された。これらの活動は、国連海洋法条約(UNCLOS)に対する明白な違反である。(以下略)>
これはもしかしたら、「パリカタン」に日本を参加させたことや、小泉防衛相のフィリピン訪問に対する中国の「嫌がらせ」かもしれない。
中国包囲網の「合従」?
日本は高市早苗首相が、GW中の5月1日から5日まで、ベトナムとオーストラリアを訪問した。この両国訪問も主に、イラン問題(石油関連問題)と中国問題のためだった。高市首相は5月4日にオーストラリアで行った会見で、こう述べた。
「ベトナムとの間では、先月、私が発表した「パワー・アジア」(4月15日に発表した「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」)の初案件としまして、ベトナムの原油の追加調達支援を進めることになりました。日本企業がベトナムで生産する医療物資は日本に輸出されております。地域のサプライチェーンの重要拠点でありますベトナムの経済活動に必要なエネルギーの調達を支援するということは、日本、ベトナム、双方の国民生活の安定を支えるものであり、これは大変重要でございます。
また、両国首脳との間で、地域情勢、また安全保障協力についても充実した議論を行うことができました。東アジア情勢を始めとしたインド太平洋地域の戦略課題についての連携、中でも安全保障協力の一層の深化について、両国首脳との間で一致しました。特に、先駆的な安全保障協力を進める同志国連携のフロントランナーでありますオーストラリアとの間では、言わば『準同盟国』とも言えるレベルの関係にあるパートナーとして、更なる協力強化を力強く確認しました」
このように高市首相は、5日間にわたるベトナムとオーストラリア訪問の成果を強調したのだった。おそらくでは、「日本−台湾−フィリピン−ベトナム−オーストラリア」という「中国包囲網の合従(がっしょう)」を思い描いているのではないだろうか。
実際、最初の訪問国ベトナムについては、5月2日に行われた黎明興(レイ・ミン・フン)首相との会談の成果を、日本外務省はこう発表している。
<両首脳は、昨年初めて開催された次官級「2+2」や艦船の相互寄港を始め、安全保障分野における協議・交流の進展を歓迎しました。
その上で、両首脳は、地域の平和と安定のため、安全保障協力や海上法執行能力強化支援の具体化を一層進めることで一致しました>
ベトナムと中国は「運命共同体」
これだけ読むと、ベトナムが日本の「誘い水」に乗ったかのようである。ところが、ベトナムの蘇林(トー・ラム)共産党書記長は、4月9日に国家主席も兼務するようになると、15日にはもう夫人同伴で北京に飛んで、習近平主席との首脳会談など一連のイベントに臨んでいた。その時、以下のように発言している。
「中国が一連の特別な配慮を行い、ベトナムに対する特別な友好の情を示してくれたことに、ベトナムは深く感動している。現在、ベトナムと中国関係は、歴史上最も良好な時期にある。今回の訪問では多くの重要な合意がなされ、数多くの協力協定が締結されて大成功だ。
また今回の訪問では、習近平総書記が提唱した一連の重要な提案が実行に移され、大きな成果を上げているのを目の当たりにした。ベトナムは中国と共に、それらの全面的かつ着実な実施に努めていく。今回の訪問で得られた重要な合意を、両国の友好協力推進の新たな原動力へと転換し、両国のさらなる発展を促進し、より高いレベルの戦略的意義を持つ運命共同体の構築に向けて、新たな一歩を踏み出していきたい」
このように、ベトナムと中国は史上最良の関係にあり、「運命共同体」とも述べているのである。「運命共同体」は、習近平主席が友好国などに提唱している用語で、蘇林主席もそれを踏襲したのだ。蘇林主席は当然ながら、高市首相をハノイに迎えることに対して、習主席に仁義を切っただろう。
ちなみに、高市首相が誇った「日越2+2」は、両国の外務・防衛の次官級協議だが、中国とベトナムはすでに「3+3」(外務・防衛・警察)であり、かつ大臣級だ。ベトナムの昨年の貿易額も、中国とが全体の28%で、日本とは6%。つまり約4・7倍も中国の方が多いのである。
オーストラリアと中国の関係
オーストラリアのアンソニー・アルバニージ政権も、これまでのオーストラリアの右派政権に較べると、かなり「親中政権」である。やはり5月3日に高市首相を迎えるにあたって、4月29日に中国系のペニー・ウォン(黄英賢)外相を北京に派遣して、中国と「第8回外交・戦略対話」を行っている。高市首相を迎えるにあたって、仁義を切っているのだ。
中国側の発表によれば、その時のウォン外相の発言は、以下の通りだ。
「私は外務大臣として3度目の訪中を果たした。今回、新たな『オーストラリア・中国 外交・戦略対話』を行うことができて、大変嬉しく思う。
オーストラリアは対中関係の発展に尽力しており、中国と率直に意思疎通を図り、相互理解を深め、協力を強化し、意見の相違を適切に処理していきたいと考えている。オーストラリアは『一つの中国』政策を堅持し、『台湾独立』を支持せず、台湾問題が平和的に解決されることを望んでいる。
オーストラリアと中国の経済は、高度に補完的であり、経済・貿易をはじめとする各分野での緊密な協力は、双方の発展に寄与し、双方の共通の利益に合致するものである。オーストラリアは、(今年11月に)中国が主催するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)サミットを積極的に支持する。
太平洋島嶼国はいかなる国の『裏庭』でもなく、オーストラリアは、島嶼国の発展のためにいかなる国とも協力することを排除しない。中国は世界の大国として、国際的な懸案事項の解決に不可欠な役割を果たしている。オーストラリアは、支配する側とされる側という不合理な国際体制の形成には賛成せず、中国側と共に国際ルールを維持し、エネルギー安全保障を確保し、世界の平和・安定・繁栄を促進していきたいと考えている」
このように、「中国に寄り添う」発言をしているのである。オーストラリアも昨年の貿易額で見ると、中国はトップで全体の40%、日本は3位で12%ある。やはり中国が約3・5倍だ。
今回の高市首相のオーストラリア訪問で、「強化された防衛・安全保障協力に関する首脳声明」を発表した。そこにはこう明記している。
<日豪間の防衛・安全保障協力は、外務・防衛閣僚協議を通じたものも含む両国の継続的かつ緊密な連携によって強化される。その主要な優先事項は以下を含む。
• 強化された情報及びインテリジェンス協力
• 防衛能力の共同開発及び共同生産
• 新たな防衛装備品及び新興技術の試験
• 「もがみ」型護衛艦の能力向上型を含む防衛装備品の維持・整備
• 全ての領域における強化された訓練及び演習
• サプライチェーン協力
• 重要な海上交通の安全確保
日豪関係は、包括的で強靭な、自由で開かれたインド太平洋の実現に貢献する。日豪は、国際法の尊重に下支えされた安全で繁栄した地域に対する揺るぎないビジョンを共有する。2026年4月18日の防衛相共同声明及び「もがみメモランダム」の署名に示されたとおり、日豪は、将来の課題に共同で対応できるよう、それぞれの能力の構築において互いに支援することにコミットしている>
「もがみメモランダム」とは、4月18日に小泉防衛相とリチャード・マールズ・オーストラリア副首相兼国防相の間で締結された、オーストラリアの次世代汎用フリゲート3隻の建造に関する防衛協力覚書だ。日本とオーストラリアが官民一体となって、もがみ型護衛艦をベースとしたフリゲートを共同開発・生産するプロジェクトを始めることになったのだ。
すべては中国の脅威に対抗するためと言ってよい。だがオーストラリアはその一方で、中国との連携を深めているのである。
ともあれ、今週の米中首脳会談で、「日本」がどう扱われるのか、注視ていく必要がある。
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