磐越道バス事故 免許返納を考えていた運転手、保険会社から打ち切り告げられていた 「よくぶつける人」の声も 前日夜にみられた異変

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磐越道で高校生1人が死亡したマイクロバス事故で、事故の数時間前から運転手に異変がみられたことが、防犯カメラ映像や関係者の証言で分かった。車内で違和感を覚え、保護者に連絡した生徒もいたという。惨事を止めることはできなかったのか。

センターラインをまたぎ走行・・・

新潟市にある北越高校。レンタカー店から高校へ向かうバスの姿を、周辺の防犯カメラが捉えていた。

午前4時41分、まだ交通量が少ない夜明けごろ。『Mr.サンデー』が独自入手した防犯カメラ映像には、若山容疑者が運転しているとみられるそのバスが映っていたが、なぜかセンターラインを大きくまたぎ、反対車線にはみ出して走行していた。

その先の防犯カメラには、信号待ちをする白い車。バスは、なぜかじわじわと低速で接近。車間距離をかなり大きくあけ、信号を待った。

レンタルしたばかりのバスの運転に、まだ慣れていなかったのだろうか。その先の交差点でも低速で接近し、ゆっくりと左折。北越高校へ向かった。

高校で20人の部員を乗せたとみられるバスは、午前5時半ごろに遠征先へ出発。すぐ後ろを走る赤い車は、顧問が運転する車とみられる。

事故翌日の、学校側の会見では・・・。

校長
前方を走っていた顧問の自動車の後に、部員20人を乗せたマイクロバスが追走する形で郡山方面に進んでいました。

バスは、前で先導する顧問の車について行ったと説明されていたが、映像ではバスの後方にいた。

その後、入れ替わるのかと思えば、少し先の映像から、後方にいたはずの赤い車が姿を消した。

一体どこへ…。

周辺の防犯カメラをくまなく探すと、同じ時間帯に、別のエリアで先ほどと同じ赤い車を確認できた。その場所は、バスが進んだ道路の、やや南にあるバイパスの入り口だった。

もしはぐれたのだとしたら、うまく連携が取れていなかったのだろうか。

「どう見てもおかしい、と」

7日に行われた北越高校の保護者説明会では、保護者からこんな声が。

保護者:
私も聞いた話ですけど、どうもその運転手さんが子供たちから見ても、どう見てもおかしい、と。様子がおかしいと。この言葉が正しいか、言っていいのかわからないというか、ガンギマリだったと。どう見てもおかしいんだという子供たちが言っていたのは、先生が会った時にそれは気づかないものなんでしょうかね。

校長
今のようなことがあったということについては、私も今初めてお聞きしましたので。

若山容疑者を見た生徒の中には、様子がおかしいと感じた人もいたという。

保護者:
運転手さんが目がもうバッキバキにキマっていたって言ってたんで。(学校側が)朝、見た時におかしさに気づかなかったのか。本当そこが悔やみます。

車内から保護者に連絡も

生徒が違和感を覚えながらも、若山容疑者が運転するバスはそのまま高速道路に乗り、福島県へ向かった。

その時の様子についてソフトテニス部について知る人は、「福島県に入ったぐらいのところで運転がおかしくなり、生徒が保護者に『運転がおかしい』と連絡していた」と明かす。

車内から保護者に届いていたという異変を伝えるメッセージ。そして、事故は起きてしまった。

専門家「回避動作なかったのでは」

交通事故鑑定人の中島博史氏によると、事故現場の痕跡から、若山容疑者の運転の異様さが見て取れるという。

中島氏:
バスが走ってきてガードレールが位置関係として、このまま(真っすぐ)行くというのは基本的に考えづらい。(運転手は)避けようとするだろうと。

指摘したのは、バスにガードレールが貫通していること。

バスは、正面からガードレールに突っ込むと、そのまま直進を続け、ガードレールが車体を貫通。そこに後続車が衝突し、被害はさらに拡大した。

ガードレールが車体をまっすぐ貫通するケースは、中島氏も見たことがないという。

中島氏:
やっぱり人間、回避しようとするので、よけようとしたのであれば、ぶつかる時に斜めに当たるので、突き抜ける向きは斜めになる。本当に真ん中まっすぐなので、全く回避動作してないと思います。

若山容疑者が、ガードレールを全く避けようとはしなかったとみられる。

足を引きずって歩く容疑者

『Mr.サンデー』は、事故前夜、若山容疑者と一緒にいた人物に話を聞くことができた。

店主:
午後6時から店に来て、お酒を飲んでいました。刺身とポテトサラダとイカ焼きを食べて行きました。

そう語ったのは、若山容疑者の行きつけだという飲食店の店主。

来店した際、「翌日に高校生を乗せて運転する」と聞いていた店主は「引率の前日は店に来ないと思っていて。『あれ?先生、明日遠征じゃないんですか?』って聞いたら、『だから今日は早く帰って寝る』って」と当時のやりとりを振り返った。

店主:
食べることも飲むことも好きで、もうがーっと食べて、がーっと飲んで。「またね」っていなくなる感じの人です。朝4時半にレンタカー屋さんで、5時に学校って言っていたかな。

翌朝に備えて、午後8時には店を出たという若山容疑者。だが、店主はある異変に気付いていた。

それは最近、若山容疑者が雨でもないのにビニール傘を持っていたこと。

店主が「今日は雨が降るんですかね?」と聞くと、若山容疑者は「いやいや、これは杖代わりだよ」と答えたという。

3月ごろから傘を杖のように使い、足を引きずって歩いていたといい、地元のタクシー運転手は「(タクシーの)乗り降りも大変なくらい足が悪いくらいな人だった」と話す。

保険会社から「契約終わりにして」

足を悪くしていたとみられる若山容疑者。その足で、20人の高校生を、150キロ先まで運ぼうとしていたのだろうか。

体調との因果関係は不明だが、実は若山容疑者は、4月から相次いで事故を起こしていた。

自動車修理会社の関係者:
よくぶつけるような人。この2カ月で4回、5回くらい。事故が頻繁に起きている人で…。

話してくれたのは、若山容疑者と15年来の付き合いのある自動車修理会社の関係者。この男性によると、若山容疑者が車の修理を依頼してきたのは4月24日頃。「こすった、ぶつけたですね。まだ走れる状態で、自分で持ってきたものですから」(修理関係者)

自分の車を修理に出し代車を受け取った若山容疑者だが、そのわずか数日後、今度はその代車で事故を起こしたという。

近隣住民:
(代車の)ボンネットがめくりあがったというか、正面衝突でもしたのかなと思われるような車が(若山容疑者の自宅近くに)止まっていたことがあった。

驚くことに、若山容疑者は、その代車にそのまま乗り続けると、1日、またも事故を起こしていた。前方のバンパーは外れ、ヘッドライト付近がデコボコになり、ボンネットも曲がってしまっている。

自動車修理会社の関係者:
私のところから代車として出しておいた車が、全損ぐらいになったんです。神林ICの近くで、前方の車というか、止まっていたんだと思いますけど。パンクした車があって、そこにぶつけたということですね。

高速道路で脇に止まった車への追突事故。

そのわずか5日後、またも高速道路上で、脇に置かれたクッションドラムに突っ込んだ若山容疑者。

自動車修理会社の関係者:
保険会社から「もうこれ以上のものは保険会社も見られない」「うちとは契約をこれで終わりにしてもらいたい」ということがあった。

若山容疑者が、事故が相次ぐあまり、保険会社から契約の更新はできないと言われたと話していたという。

自動車修理会社の関係者:
本人が免許を返納したいと。その方がいいなと思って。ちょくちょく小さな事故を起こしているような人は、必ず大きいものにつながると私は思ってましたから。

バス会社と学校、食い違う主張

若山容疑者を知る人にとっては大きな事故が心配される中で、現実となってしまった惨事。

地元のタクシー会社関係者:
足腰がちょっと(悪い)なんで(引率を)断らなかったのかと。

短期間に事故を繰り返し、足も悪かったとみられる若山容疑者が、なぜ、マイクロバスのハンドルを握ることになったのか。

手配をしたバス運行会社、蒲原鉄道と、北越高校の説明は食い違っていた。

蒲原鉄道 営業担当:
学校側からの要請で、レンタカーを手配をして、なおかつ人も頼むよという中で紹介をした。やっぱり予算面だというふうには理解していました。運転手については、僕は紹介して、学校から承諾をいただいたというふうに理解をしています。

これを、学校側は真っ向から否定した。

校長
運転手の依頼もあったといった発言がなされておりますが、ソフト(テニス)部の顧問によれば、こうした発言はしていないということを確認しております。
バス会社には、パッケージとして人数と場所と行き先をですね、これぐらいなので、この形で(貸切)バスの運行をお願いしたいという依頼をしている。

「学校の方から安いものをと依頼したのか?」という質問に対して、校長は「事実ではございません」と否定した。

どちらの主張が正しいのか。

4年前からスキーム存在か

ソフトテニス部を知る人物からは、新たな証言も出ている。

ソフトテニス部について知る人:
高校側は問題があると認識していなかったと思うが、レンタカーやドライバーを蒲原鉄道に依頼するスキーム(仕組み)は、少なくとも4年前には存在していた。費用は、保護者がマイクロバスを運転した場合の「実費のみ」とほぼ変わらない額だった。

ある保護者は、費用の安さについて蒲原鉄道はこの金額で大丈夫なのか?と顧問に確認したこともあったという。

さらに、ソフトテニス部の生徒が事故に巻き込まれるのは、今回が初めてではないという。

3年前のインターハイ前日、顧問が生徒を乗せた車で、北海道で事故を起こし、顧問が運転する車への生徒の乗車が禁止されたという。

マイクロバスに乗っていた高校生1人が命を落とし17人が重軽傷を負った今回の事故。真実、そして責任の所在は、どこにあるのか。
(「Mr.サンデー」5月10日放送より)