安全保障環境の悪化に伴い、機微技術の流出を防ぐ重要性が一段と増している。

 政府は外資による投資の審査を強化し、重大な脅威を招く事態を防がねばならない。

 工作機械大手「牧野フライス製作所」の買収計画を巡り、政府は、日中韓に拠点を置く投資ファンドのMBKパートナーズに対し、計画の中止を勧告した。

 勧告は、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく措置で、2例目となる。規制を強化した2017年の法改正後は初だ。

 MBKは牧野フライスの完全子会社化に向け、6月にも株式公開買い付けを始める予定だったが、勧告を受け入れて中止した。

 米国と中国のハイテク技術を巡る覇権争いは激しい。軍事と民生の垣根は低くなり、両面で利用できる「デュアルユース」の技術が広がっている。

 片山財務相は今回の勧告について、「国の安全を損なう事態を生ずる恐れがあると認められた」と説明した。経済安全保障の観点から、外資をチェックする重要性を示した先行例と言えよう。

 牧野フライスは自動車や航空機などに使われる部品を高精度で加工できる工作機械を手がける。

 東京商工会議所も、この種の難易度の高い加工ができる工作機械は、ウラン濃縮用の遠心分離器など、軍事目的で利用される懸念があると警鐘を鳴らしてきた。

 中国は、近年、急速に工作機械の製造技術を高めているという。政府の勧告の背景には、こうした事情もあるのだろう。

 政府が外為法を適用して、中止勧告を出したのは、08年に続いて2回目だ。前回は、英投資ファンドによる電力卸「電源開発(Jパワー)」の株式買い増しを対象にしたケースだった。

 ただ、外資を萎(い)縮(しゅく)させる弊害などから、政府はそれ以降、基本的に自由な投資を尊重してきた。今回は、各国が経済安保関連の施策を強化する時代に入ったという現状認識から勧告に踏み切った。

 適用に際しては政府がインテリジェンス(情報収集、分析)の機能を高めることが不可欠だ。単なる外資排除と映っては対日投資の減少を招く。恣意(しい)的な運用だと誤解を与えないよう対外的に発信していくことも重要だ。

 政府は特別国会に、財務省や経済産業省、国家安全保障局などで構成する「対日外国投資委員会」の創設を柱とする外為法改正案を提出した。審査体制のさらなる強化を図ってほしい。