田中圭、ポーカーに続き主演舞台でも注目 鈴木おさむとの再タッグ作は本人ともリンク?
2024年に放送作家を引退した鈴木おさむが、完全新作舞台『母さん、ラブソングです。』で作・演出を手がける。主演は田中圭、共演は矢崎広。2026年7月31日に東京芸術劇場プレイハウスで開幕し、仙台、名古屋、上田、大阪を巡るツアー公演も行われる。
参考:田中圭、舞台で二人芝居に挑む 『母さん、ラブソングです。』で鈴木おさむと4度目のタッグ
本作で描かれるのは、かつてヒットを飛ばしたものの現在は落ちぶれたミュージシャンの兄と、彼を支え続けてきた弟の物語。母への愛憎、記憶のズレ、そして目を背けてきた過去の“罪”に向き合う二人芝居だ。さらに、タイトルにもある「ラブソング」というキーワードを担うように、楽曲提供として平井大が参加する。
この発表で何より楽しみなのは、鈴木と田中が再びタッグを組むことだ。2人はこれまで、2011年の『芸人交換日記』、2017年の『僕だってヒーローになりたかった』、2021年の『もしも命が描けたら』と舞台で作品を重ねてきた。だからこそ今回も、田中の俳優としての魅力を、鈴木がどう引き出すのかに期待せずにはいられない。
近年の田中と言えば、ポーカーでの活躍も外せない。2025年には、ラスベガスで開催された世界的なポーカー大会「ワールドシリーズオブポーカー(WSOP)」のイベントで3位に入賞し、賞金11万5295ドルを獲得。さらに今月に入り、オーストラリア・メルボルンで行われた「Aussie Millions Poker Championship」でも7位に入り、賞金11万1720オーストラリアドルを獲得した。俳優としてだけでなく、ポーカーの世界でも結果を残していることは、田中圭の新たな一面として大きな注目を集めている。
田中は、身近にいそうな人物を魅力的に見せることに長けた俳優だ。『おっさんずラブ』シリーズ(テレビ朝日系)の春田創一では、不器用でどこか頼りない男の愛らしさを見せながら、恋に揺れる切実さも丁寧ににじませた。『あなたの番です』(日本テレビ系)では、愛する人を失った男の喪失感や怒りを、特別な出来事としてではなく、日常が突然壊れてしまった人の感情として見せていた。どちらの役にも共通しているのは、田中が演じる人物が、遠いヒーローではなく、観る側のすぐ近くにいる人として立ち上がってくることだ。
そう考えると、『母さん、ラブソングです。』で田中が演じる役にも期待が高まる。かつてヒット曲を生み出したミュージシャンという設定には、表舞台に立っていた人間のプライドがある。一方で、今は落ちぶれているという現在には、過去への未練や、家族にしか見せられない弱さもにじむ。田中の持つ人懐っこさや愛される力は、この役に温かさを与えるはずだ。その一方で、近しい相手に甘えてしまう身勝手さや、過去にすがる情けなさが見えた時、その魅力は一気に複雑なものになる。そこにこそ、田中がこの役を演じる面白さがある。
その田中を、鈴木がどう動かすのかも大きな見どころだ。鈴木の作品は、家族や愛、後悔といった感情を、登場人物の会話の中でまっすぐにぶつけていくところに強さがある。きれいごとだけでは済まない思いや、普段は口にできない本音を、舞台の上であらわにしていく。今回、鈴木は「放送作家を引退した僕の使命はまだ終わってない」とコメントしており、引退後の新たな活動の中で田中と再び舞台を作ることへの強い思いも伝わってくる(※)。
さらに、今回は田中と矢崎による二人芝居というのだから楽しみでしかない。矢崎はミュージカルからストレートプレイまで幅広く出演し、舞台で確かな経験を重ねてきた俳優だ。矢崎も今回の出演にあたり、鈴木と田中のタッグを「特別な存在」と語り、田中との二人芝居には「負けられない」という思いも明かしている。多くの出演者の中で役割を担うのではなく、兄と弟として真正面から向き合う二人芝居。言葉だけでなく、沈黙や間、目線の動きまで芝居になる空間で、田中が矢崎とどんな緊張感を生み出すのかも見どころになるだろう。
何より『母さん、ラブソングです。』というタイトルもいい。母へ捧げるラブソングなのか、母に届かなかったラブソングなのか。あるいは、愛という言葉では片づけられない感情を、どうにか歌にしようとする物語なのか。家族への思いは、いつもきれいな形をしているわけではない。愛しているからこそ憎むこともあるし、忘れたいのに忘れられない記憶もある。本作が描く「母への愛憎」や「過去の罪」というテーマは、田中の持つ柔らかさと危うさを、より深いところまで引き出すはずだ。田中圭という俳優が、どんな顔で“母へのラブソング”を歌うのか。劇場でその答えを見届けたい。
参照※ https://realsound.jp/movie/2026/05/post-2387354.html(文=川崎龍也)
