「子どものために」が苦しめてしまうこともある…不登校の家庭で起きていること
2025年9月に発売された書籍『不登校から人生を拓く――4000組の親子に寄り添った相談員・池添素の「信じ抜く力」』(講談社)。40年にわたり、4000組以上の不登校の親子に寄り添ってきた相談員・池添素さんに、ジャーナリストの島沢優子さんが丁寧に取材を重ねてまとめた一冊だ。発売を記念して、池添さんの地元・京都の大垣書店イオンモール京都桂川店でトークイベントが開かれ、約100人が参加した。
イベントレポート前編【「親は反省しなくていい」4000組の不登校親子を見てきた相談員が語る、子どもを前に親が変えられること】では、「不登校に悩む親に伝えたい3つのこと」のうち2つをお伝えした。子どもを信じて、サインを受け止めること。そして親自身のあり方やこれまでの経験を見つめ直すこと。そのどれもが、親子の関係を考えるうえでの土台になる。
後編では、池添さんと島沢さんが語った3つ目について伝える。不登校の子どもに悩む親に限らず、すべての子育て中の親にとって、「信じる」とは具体的にどういうことか、何が子どもを苦しめてしまうのか、そして親に何ができるのかを語った内容を紹介する。
不登校を家の中だけで抱えない
池添素さん:子どもの不登校に悩む方に伝えたいことの3つ目は、「家族の問題を社会に開いていくこと」です。親御さんにとってはとても大変なことですが、私はこれが大事だと思っています。子どもが学校に行けていないことは、なかなか周りに言いづらいことですし、できれば知られたくないと思うものです。お正月や親戚が集まる場などでも、いろいろ聞かれてしまい、しんどさを感じることもあると思います。
でも、「家の中だけで抱え込まない」ということ、つまり家族の問題を少し社会に開いていくことが大切だと思います。なぜかというと、それで一番ホッとするのは子どもだからです。親が「外には出さないようにしなきゃ」と必死になればなるほど、子どもはとても敏感にそれを感じ取ります。そして、「自分は悪いことをしているんだ」と思い込んでしまうことがあります。不登校は決して悪いことではないのですが、子どもは親の苦労を感じて、「自分のせいで迷惑をかけている」と考えてしまいがちです。その結果、「自分が悪い」とどんどん否定的になり、自分を責めてしまいます。
だからこそ、『不登校から人生を拓く』でも書かれているように、親子で一緒に昼間買い物に出かけたり、お茶をしたりするなど、日常の中で少しずつ外とつながっていくことが大切です。また、周りの人に知ってもらうことも一つの方法です。そうすることで、子どもは少しずつ楽になっていきます。それはその子一人だけでなく、同じように悩んでいる子どもたち全体を支えることにもつながると思います。
私は、子どもは「社会から預かっている存在」だと思っています。たまたま今、この家庭で預かっているだけであって、本来は社会とつながりながら育っていくものです。だからこそ、そのつながりをつくっていくことも親の大切な役割だと思います。
子どもは「受け止められる場所」で育つ
島沢優子さん:私はスポーツの指導についても長年取材をしているのですが、最近、少年サッカーや少年野球の現場のコーチの方からこんな話をよく聞きます。「学校には行かないけれど、少年団の練習には来る」「試合には参加する」という子どもがいて、それを今はコーチたちが自然に受け止めているということです。おそらく8年〜10年前であれば、「学校には行けないのにサッカーだけ行くの?」という見方になっていたかもしれません。でも今は、「うちの子は学校には行っていませんが、サッカーには行ってもいいですか」と親が伝え、「いいですよ」と受け止められるようになってきています。
また、スポーツの現場でも親御さんは、「どう声をかけたら頑張れるのか」「どうしたらやる気が出るのか」といったことをよく質問されます。そうした悩みも、不登校の子どもへの関わり方と本質的にはとても近いものだと思います。
池添さん:そうですね。私も同じだと思います。「声を出せ」とか「頑張れ」といった声かけをよく聞きますよね。親としては、「頑張れと言えば頑張れるはず」と思ってしまうこともあるかもしれません。でも、それだけでは子どもはなかなか頑張れないことも多いと思います。
むしろ大事なのは、その子がいる場所で「うまいね」「すごいね」「頑張ってるね」と受け止めてもらえることです。そこに自分の居場所があって、肯定的に見てもらえる。それが子どもにとってはとても大きな安心や喜びになります。
フリースクールのような居場所は、「そこにいていいんだよ」と受け止めてもらえる場所です。さらに、頑張っている姿を見てもらえる場所でもあります。そうした場所が一つでもあることは、とても大切です。そしてそれはスポーツだけの話ではなく、学校でも同じことが言えると思います。放課後だけ遊びに行く、保健室に行く、担任の先生に何かを渡しに行くだけでもいい。関わり方は一つに決められるものではありません。その子がやりたいことを、いろいろな場所で少しずつ実現していけること。それが一番大事なのではないかと思います。
島沢さん:スポーツの現場で指導者の方がよくおっしゃるのは、「お父さんやお母さんの目はギラギラしている」ということです。「レギュラーになってほしい」「プロになってほしい」といった思いが強くなる一方で、その横で子どもの目は死んでいる。親の期待が強くなるほど、子どもとの間にズレが生まれてしまうこともあるのだと思います。だからこそ大事なのは、子どもを信じて待つこと。これはスポーツでも、不登校の子どものことでも、どの子育ての現場でも同じなのだと感じます。
構成・文/峯重咲希(FRaUweb)
