イラン紛争で乱高下に見舞われるなか「いま処分しておくべき」株式・投資信託一覧
投資家が直面する「出口戦略」
心臓に悪い―。そう感じた人も多いはずだ。
米トランプ大統領とイスラエルによるイラン攻撃で、株式市場は大きな乱高下に見舞われた。マーケットは攻撃前の株価水準を回復したが、米国は新たにキューバへの攻撃をほのめかし、緊迫続く国際情勢は予断を許さない。
投資をしている人は、二転三転する状況に肝を冷やしたり糠喜びをしたりと、一喜一憂した人も多いだろう。はたして、「人生の後半戦」において、心理的ストレスを感じるほどの資産運用は必要なのだろうか―そんな疑問が生じても不思議ではない。
株式評論家で、雨宮総研代表の雨宮京子氏がそんな疑問にこう答える。
「長年、投資をしてきたベテランなら、コロナ明け以降の株価上昇で、保有銘柄に含み益を抱える人も多いと思います。しかし、たとえどんなに含み益があっても、その株を持ったまま、あの世には行けません。したがって、ある程度は整理していく『出口戦略』を考えることが重要です。
株式投資の目的には老後の資産形成もありますが、中には老後資金のメドが立った人も多いでしょう。だとすれば、株の売却益を元気なうちに使って、豊かな老後を送ることも大切ではないでしょうか」
「DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)」
近年、「DIE WITH ZERO(ゼロで死ね)」という考え方が静かなブームとなっている。文字通り、資産を使い切って人生を終えることを目指すものだ。米国の資産家、ビル・パーキンス氏が著した同名の本は、日本でも66万部を超える世界的なベストセラーとなっている。マネーコンサルタントで、Money&You代表の頼藤太希氏が解説する。
「こうした考え方が話題になっているのは、老後資金を自分のためにきちんと使いたいと考えている日本人が多いからなのでしょう。
逆に言えば、日本人は資金を貯めるのがうまくても、使うのが苦手ということ。長く投資をしている人は、時間をかければまとまった資産が築けることを経験しています。だから、年をとっても、おカネを使うことがもったいないと感じてしまう。資産価値が上昇して、数字が増えるのを見るとうれしいですからね。
でも、健康寿命を過ぎてしまえば、趣味や食事、旅行などにおカネを使いたくても使えないフェーズになってしまいます。老人ホームくらいしか使い道がなくなってしまう。それは気持ちのいい使い方ではありません。そうならずに、自分のために使えるよう、『資産配分』を変えていくことが必要になります」
金融資産を漫然と持っていると、その存在が悩みのタネとなることもある。資産運用アドバイザーで、びとうファイナンシャルサービス代表の尾藤峰男氏が実例を挙げる。
「高齢者層は、近年の株価上昇の恩恵をフルに受け、資産価値が大きく膨らんでいる。にもかかわらず、自分の持っている株や投信をどうしたらいいかよくわからず、そのまま放っているケースも多い。こういう資産を、家族と相談して適切な形に整理しておくことも重要です。
一番恐ろしいのは、判断力が低下する『認知症』のリスクです。80代も後半になれば、衰えは急激に加速します。株式の売却もままならず、本人は運用の恩恵を受けられないまま人生を終えることになってしまう。そうなる前に一部を売却して使ったり、相続対策に充てたりするのも家族への配慮とも言えます」
だからといって、すべてを現金化するのは乱暴だ。売るべき資産と保有を続ける資産を分けることが重要となる。まずは、もう手放してもいい銘柄について考えていこう。
かつては輝いていた投資商品に「お別れ」
現役の投資家で、株の学校ドットコム講師の窪田剛氏は、長年保有した元政府系の銘柄は売り時だと指摘する。
「シニア層は、NTTや日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険などの民営化した旧公社株を保有していることが多いですね。上場する際に大々的に宣伝もされましたし、証券会社も積極的に売り込んでいたので、上場当時に買われている。こうした株は売却して、今後の人生を楽しむためのおカネに変えることをおすすめします。国策企業系の銘柄は、安定的な配当は期待できますが、これからの5〜10年で株価が大きく上昇する見込みが薄いからです」
創業者が一代で会社を巨大にした企業も、今後は持ち続けることがリスクになるかもしれない。前出の頼藤氏が興味深い見解を述べる。
「ニデックの例がわかりやすいですが、不適切会計問題が発覚し、創業者の永守重信名誉会長が退任することになって、株価は下落傾向のままです。このように『本当に強い創業経営者』が交代する事態になると、株価には大きなマイナスになります。
たとえば、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長、ディー・エヌ・エーの南場智子会長、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長、サイバーエージェントの藤田晋会長といった、『稀代の経営者』がいなくなった時の会社のリスクは考えたほうがいいですね。
すぐ退任することは考えられませんが、いずれは代替わりの時期がやってきます。トップの強いリーダーシップで成長してきた企業は、トップ交代が手じまいの判断材料の一つになるので、ニュースなどで動向を注視しましょう」
かつて輝きを放った投資テーマにも別れを告げる頃合いかもしれない。前出の尾藤氏が言う。
「厄介なのが、銀行や証券会社などの勧めで購入した『テーマ型ファンド』です。メタバースや水資源、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、ESGなど、その時々の流行りに乗って設定されたファンドは、手数料が高く、割高な株で組成されがちです。運用成績が上がらずに、高い手数料を抜かれ続け、気がつけば元本を大きく割り込んでいる『死んだ投資商品』も多い。こうした投信を持ったままだと、子供も相続で困るので生前に処分しておくべきです」
【後編を読む】イラン攻撃で株価大荒れの中、必要なのは「株を手放す勇気」だ…「株主優待の罠」に専門家が警鐘
「週刊現代」2026年5月11日号より
