介護でお金がないときの対処法|費用の目安と使える公的支援制度を解説

親の介護が始まると、サービス費用や施設費用など、想像以上にお金がかかることに不安を感じることがあるのではないでしょうか。「このまま費用を払い続けられるか心配」「使える制度があれば知りたい」と思っている方も少なくないかもしれません。

本記事では、介護費用に不安を感じているご家族に向けて、以下の点を中心に解説します。

介護費用の目安と負担する人について

自己負担を軽減できる公的支援制度

費用を抑えるための対処法と今からできる備え

一人で抱え込まず、使える制度や対処法を知ることが、介護費用への不安を和らげる第一歩です。ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
高山 哲朗(かなまち慈優クリニック)

【経歴】
理事長 高山 哲朗
平成14年慶應義塾大学卒業
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、
平成29年 かなまち慈優クリニック院長
【所属協会・資格】
医学博士
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医
日本医師会認定産業医
東海大学医学部客員准教授
予測医学研究所所長

介護費用の目安

介護にはどのくらいお金がかかるのですか?

2025年1月に公益財団法人生命保険文化センターが発表した『2024年度 生命保険に関する全国実態調査』によると、介護費用の総額は平均約542万円とされています。
内訳は以下のとおりです。

・一時費用(介護用品の購入・住宅改修など):平均47万円
・月額介護費用(介護サービス利用料など):平均9万円
・介護期間の平均:約55ヶ月(4年7ヶ月)

また、要介護度が上がるほど月額費用も増加する傾向があり、要介護4~5では月10万円を超えるケースも少なくありません。
介護期間については、10年以上に及ぶケースも約7人に1人の割合で見られます。介護費用は長期にわたる負担になる可能性があるため、早い段階から備えを検討しておくことが大切です。

参照:『2024年度 生命保険に関する全国実態調査』(公益財団法人生命保険文化センター)

在宅介護と施設介護では費用はどれくらい違いますか?

在宅介護と施設介護では、月額費用に大きな差があります。

在宅介護では、介護保険の居宅サービスを活用することで費用を抑えやすい反面、家族が介護を担う負担が生じます。

施設介護は専門スタッフによるサポートを受けられる一方、居住費や食費、日常生活費なども加わるため、月額費用は在宅介護と比べて高くなる傾向があります。
なお、施設の種類や居室のタイプ(個室か多床室か)によっても費用は異なります。

介護費用は主に誰が負担するのですか?

介護費用は、まず本人や配偶者の年金や貯蓄から充当するのが基本です。それでも不足する場合は、親族が援助することになります。

民法では、直系血族および兄弟姉妹の間には互いに扶養義務があると定められており、子どもは親に対して扶養義務を負います。
ただし、この義務は子ども自身の経済的な余裕の範囲内で果たせれば問題なく、余裕がない場合に扶養義務違反となるわけではありません。

また、介護施設への入居時には保証人が必要となるケースがほとんどです。本人が支払い不能となった場合には保証人に費用の請求が来るため、誰が保証人となるかも家族間で話し合っておくことが大切です。

介護費用の負担は、本人の資産状況や家族の経済力などを考慮しながら、家族全体で早めに話し合っておきましょう。

介護でお金がないときに使える公的支援制度

介護費用が払えない場合、最初に相談すべき窓口はどこですか?

介護費用の支払いに不安を感じたら、まずは地域包括支援センターへの相談をおすすめします。

地域包括支援センターは、高齢の方の介護や生活に関する総合的な相談窓口です。保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門スタッフが配置されており、費用に関する悩みのほか、介護サービスの利用方法や制度の活用方法まで幅広く相談できます。

なお、地域によって高齢者あんしん相談センターや高齢者支援センターなど呼称が異なる場合があるため、お住まいの市区町村の窓口や公式Webサイトで確認してみましょう。
センターは担当地域が決まっているため、住んでいる地域を担当するセンターへの相談が必要です。
相談は基本的に無料で利用できるため、一人で抱え込まず気軽に問い合わせてみましょう。

介護保険で自己負担を軽減できる制度には何がありますか?

介護保険には、自己負担を軽減するための制度がいくつかあります。

・負担限度額認定制度(特定入所者介護サービス費)
・高額介護サービス費
・高額医療・高額介護合算療養費制度
・医療費控除

負担限度額認定制度を利用すると、所得や資産が一定基準以下の方は食費、居住費の負担が軽くなります。高額介護サービス費では、月の自己負担額が上限を超えた分が払い戻されます。医療と介護の両方を利用している場合は、高額医療・高額介護合算療養費制度で合算して上限を超えた分が支給されます。
また、確定申告で医療費控除を申請することで、介護サービス費用の一部を所得控除できます。

いずれも申請が必要なため、詳細は地域包括支援センターや市区町村の窓口に確認しましょう。

介護費用を抑えるための方法はありますか?

介護費用を抑えるためには、利用できる税制上の控除を活用しましょう。
主な方法は以下のとおりです。

・医療費控除(介護サービス費用の一部を所得控除できる)
・扶養控除(親を扶養に入れることで控除を受けられる)
・障害者控除(障害者手帳がなくても対象になるケースがある)
・社会保険料控除(介護保険料を控除として申告できる)

なかでも見落とされやすいのが障害者控除です。要介護認定を受けている場合、障害者手帳がなくても障害者控除対象者認定書の交付を受けることで控除を申請できる場合があります。

また、これらの控除は5年以内であればさかのぼって申告できるため、過去に申告していなかった方も確認してみる価値があります。
詳細な条件は自治体によって異なるため、市区町村の窓口や税務署に相談してみましょう。

介護でお金がないときに検討したい対処法

費用を抑えやすい介護施設にはどのような種類がありますか?

費用を抑えやすい介護施設として、まず挙げられるのが公的な介護施設です。自治体や社会福祉法人が運営しており、民間施設と比べて月額費用が低めに設定されています。
主な種類は以下のとおりです。

・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設
・介護医療院
・軽費老人ホーム(ケアハウス)
・養護老人ホーム

また、民間施設でもサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は費用を抑えやすい選択肢のひとつです。
施設を選ぶ際は、種類だけでなく居室のタイプ(個室か多床室か)や入居一時金の有無によっても費用が変わります。多床室を選んだり、入居一時金が不要な施設を探したりすることで、初期費用や月額費用を抑えられる場合があります。
空き状況や詳細は、地域包括支援センターで確認できます。

介護と仕事を両立するために利用できる給付金や支援はありますか?

介護と仕事を両立するために利用できる主な制度は、以下のとおりです。

・介護休業(家族1人につき通算93日、3回まで分割取得可能)
・介護休暇(年5日、2人以上の場合は年10日まで取得可能)
・介護休業給付金(休業中に賃金の約67%が支給される)
・所定労働時間の短縮(短時間勤務、フレックスタイムなど)
・残業、深夜業の制限

なかでも経済的な支えとして重要なのが介護休業給付金です。雇用保険に加入している方が介護休業を取得した場合、休業前の賃金の約67%が支給されます。申請は勤務先を通じてハローワークに行います。

これらの制度は、介護保険の要介護・要支援認定を受けていない場合でも利用できるものがあります。詳細は勤務先の担当部署や最寄りのハローワークに確認してみましょう。

参照:『そのときのために、知っておこう。介護休業制』(厚生労働省)

これからの介護費用に備えて今できることは何ですか?

介護費用への備えとして、今からできることをいくつか紹介します。

・親の希望や経済状況を家族で話し合っておく
・介護保険制度や地域の介護サービスについて情報を集めておく
・民間の介護保険への加入を検討する

なかでも最初に取り組みたいのが、家族での話し合いです。自宅での介護を希望しているか、施設入所も選択肢として考えているかといった親の意向と、親の貯蓄や年金などの経済状況を早めに把握しておくことで、いざというときの判断がスムーズになります。

また、費用面だけでなく時間や体力といった目に見えないコストも考慮することが大切です。費用の安さだけで在宅介護を選ぶと、介護者の身体的、精神的な負担が増すケースもあります。家族全員が無理なく関われる体制を、早い段階から考えておきましょう。

編集部まとめ

ここまで介護費用の目安と使える支援制度についてお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。

介護費用の総額は平均約542万円とされており、月額費用、介護期間ともに個人差が大きいため、早めに家族で費用の見通しを話し合っておくことが大切

負担限度額認定制度や高額介護サービス費など、自己負担を軽減できる公的制度が複数あり、いずれも申請が必要なため、地域包括支援センターや市区町村の窓口に早めの相談がおすすめ

費用を抑えるためには公的施設の活用や税制上の控除の利用が有効で、介護と仕事を両立する場合は介護休業給付金などの支援制度も活用できる

介護費用の不安を感じたら、一人で悩まずまずは地域包括支援センターに相談してみましょう。利用できる制度や施設について、専門のスタッフが一緒に考えてくれます。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

参考文献

2024(令和6)年度生命保険に関する全国実態調査|公益財団法人 生命保険文化センター

サービスにかかる利用料|厚生労働省

施設等の給付範囲(費用負担)の比較|厚生労働省

負担限度額認定証|世田谷区公式ホームページ

高額介護合算療養費制度 概要|内閣府

No.1130 社会保険料控除|国税庁

介護休業制度|厚生労働省