「遺族年金は非課税」と信じてたのに…「老齢120万円+遺族65万円」の70歳母が、扶養外で“年10万円以上”の負担増に! 社会保険「180万円の壁」を知らないと損する“意外な落とし穴”

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「遺族年金は非課税だから、年金生活を送る高齢の親が受給しても税金や保険料が増えることはない」と考えている人もいるかもしれません。   たしかに、遺族年金を受給しても所得税や住民税は増えませんが、社会保険(健康保険)の扶養判定における収入にはカウントされ、金額によっては、子の扶養から外れる場合や、子の扶養に入ることができない場合があるのです。   本記事では、社会保険の扶養における「180万円の壁」と、壁を突破して扶養から外れる、または扶養に入れない場合に発生する保険料負担について解説します。

遺族年金は非課税? 税金と社会保険で異なる収入の定義

遺族年金は税金上のルールでは非課税所得の扱いとなりますが、家族の健康保険の扶養に入れるかどうかを判定する場合は収入と判断されます。
社会保険における収入とは、税務上の所得とは異なり、遺族年金や障害年金だけでなく、雇用保険の失業給付や傷病手当金なども含まれます。「遺族年金は税金がかからないから収入じゃない」と思ったまま扶養に入り続けていると、後の調査で「収入が基準額を超えている」と判定され、トラブルに発展するケースもあります。

60歳以上は要注意! 社会保険の扶養ボーダーライン「180万円の壁」とは

会社員や公務員として働く子の扶養に親が入る場合(同居している場合)、一般的には親の収入が「子の収入の2分の1未満かつ年収130万円未満」であることが条件ですが、対象者が60歳以上または障害者である場合は、この基準が「子の収入の2分の1未満かつ年収180万円未満」となります。これが「180万円の壁」と呼ばれるものです。
例えば、親自身の老齢年金が年間120万円の場合、ほかの要件を満たせば会社員の子どもの扶養に入れますが、そこに遺族年金が年間65万円加わった場合、収入の合計は185万円となり、扶養から外れる、または入れないことになります。

年収185万円の母が支払うものは? 金額は?

もし老齢年金と遺族年金の合計収入が185万円となり、扶養から外れることになったら、家計にはどのような影響が出るのでしょうか。
大きく影響するのは「国民健康保険料」と「介護保険料」が自己負担となり、自分自身で保険料を納める必要があることです。
自治体によって差はありますが、年金収入185万円(老齢年金120万円+遺族年金65万円)の70歳(単身者)の場合、国民健康保険料と介護保険料を合わせると、年間で約5万円前後の負担が発生することになります。
しかしながら、会社員の子と同居している(同世帯)場合は保険料が跳ね上がり、同じ年金収入でも年間10万円以上の保険料負担が発生します。
また、年金額の改定や遺族年金の受給開始によって「180万円の壁」を超えたにもかかわらず、そのまま子の扶養に入り続けていたことが後から発覚すると、「過去にさかのぼって扶養を取り消す」と通告されることがあります。
この場合、過去の医療費(7割~8割分)を一括で返還する必要があります。さらに、その期間の国民健康保険料などもさかのぼって請求されるため、多大な出費となるケースもあり、注意が必要です。

まとめ

遺族年金に税金はかかりませんが、社会保険の扶養判定の収入には含まれるため、老齢年金と遺族年金の合計額が180万円を超えている場合は扶養から外れる、または入れなくなります。
そして「180万円の壁」を超えているにもかかわらず、子の扶養に入ったままだと遡及請求により、大きな出費となる可能性もあります。さらに子と同居している場合は扶養から外れると保険料負担が高額になることもあるので、世帯分離などで保険料負担を抑えるといった方法なども検討しても良いかもしれません。
 

出典

日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
執筆者 : 石井ヒロユキ
FP2級、AFP、社会保険労務士、第1種衛生管理者