近ごろレーシングドライバーが続々ドリフトに参戦! SUPER GTのスバルワークスドライバー井口卓人のFDJ参戦を直撃した

この記事をまとめると
■「フォーミュラドリフトジャパン(FDJ)」の開幕戦が富士スピードウェイで開催
■SUPER GTのGT300クラスでステアリングを握る井口卓人選手が参戦した
■ドリフト競技の難しさを感じつつ今後も積極的にかかわっていきたいと抱負を語った
ベテランGTドライバーがFDJに挑戦!
4月25・26日、ドリフト競技「フォーミュラドリフトジャパン(以下:FDJ)」の開幕戦が富士スピードウェイで開催された。数々の注目選手が今年もエントリーしているが、そのなかでも話題を呼んだのが、SUPER GTドライバーの井口卓人選手の参戦だ。参戦に至った経緯や、FDJというドリフト競技に対して思ったことを聞いてみた。

クルマ好きになった原体験は「ドリフト」
レーシングカートからモータースポーツキャリアをスタートさせ、フォーミュラやツーリングカーレースとステップアップしていった井口選手。レーシングドライバーの王道ともいえるルートを歩んできており、「ドリフト」とはあまり縁がなさそうに思えるが、クルマに興味をもった原体験はドリフトにあったそうだ。

井口選手は、「もともとはドリフトや日本のチューニングカー文化からクルマを好きになってレースを始めたんです。そこからはずっとグリップ走行での競技人生を歩んできました。でも、ドリフトへの興味はずっとありましたね。プライベートでもたまにドリフトをメインとした走行をしていて、ずっと競技としてドリフトをやってみたいとも思っていました。そして、いろんな歯車が噛み合って、FDJという国内のドリフト競技における最高峰のカテゴリーに参戦することになったのが、2026シーズンというタイミングだったわけです」と語る。

また、大嶋和也選手や大湯都史樹選手など、SUPER GTで活躍しているドライバーがFDJに参戦したことも、このカテゴリーを目指す原動力となったようだ。
「とくに大湯選手の活躍には火をつけられましたね。ラウンドを追うごとにドリフトが上達していって、彼は表彰台にも上りました。そんな彼のドリフト成長ストーリーは、ボク自身がドリフトへ挑戦する気もちを奮い立たせてくれました」

まだマシンのポテンシャルを半分しか引き出せていない
関係者の紹介などの縁があり、広島のチームVEICOLO(ヴィーコロ)からFDJにエントリーすることとなった井口選手。マシンはSUPER GTでも相棒であるBRZだが、最高出力1000馬力オーバーの2JZエンジンに換装され、シーケンシャルミッションを搭載するなどドリフト競技車両として高い戦闘力を誇る仕様へと大幅なモディファイを受けている。また、A’pexiやProject μ、ブリヂストンなど、86/BRZ Cupで彼を支えるパーツメーカーのアフターパーツも使用されている。

「自身のレースキャリアのなかでも、いままでにないパワー感で驚いています。切れ角がアップしていて、すごくステアリングも切れるし、いままでに乗ったことがないマシンですね」と、井口選手はマシンに対するフィーリングを語った。
一方で、マシンの戦闘力には満足しているようだが、その実力をまだ半分くらいしか引き出せていないとのこと。そこにはグリップで育ってきたからこその、ドリフトというグリップと真逆の挙動に対する抵抗に近い、反射神経のようなものが影響しているそうだ。
「セッティング的に、一気に想定の角度までもっていけばビシッと安定したドリフトができるんです。でも、まだグリップで走ってきたからこそ、一気にスライドで角度をつけることへの躊躇があって……そこが課題ですね」

ドリフト競技とグリップ競技の架け橋になりたい
ドリフト競技の難しさ、FDJへ参戦してわかった魅力的なポイント
そして、ドリフト競技のフォーマットへの戸惑いなどもあるようだ。
「まず、スライドしながら狙ったゾーンへクルマをもっていくのがめちゃくちゃ難しいと感じてます。上位のドライバーを見ているといろんな小ワザをもっていますが、自身にはまだそれがない。あと、予選が2本しかないのも難しいですね。通常のレースだとタイヤを温めてアタックを決めるのですが、満足に温めきれず一発勝負が2回だけなので、なかなかアジャストし切れていないです」
このように、井口選手はドリフトを「難しい」と語っていたが、井口選手は予選を見事に突破。日曜日のTOP32では初戦敗退となってしまったが、初参戦での予選突破は、ドリフトドライバーとして素晴らしいスタートだったといえる。

また、FDJというカテゴリーそのものに対しても、参戦前以上に好感触をもったそうだ。
「10代、しかも免許をまだ取得できないような年齢の若いドライバーが想像よりも多くいて驚きました。若いころからモータースポーツ競技にトライできる環境なのは、とてもいいことだと思います。また、ここで活躍してTGR WRCチャレンジプログラムへと参戦した箕輪大也選手のように、FDJをキッカケにほかのカテゴリーへトライする間口になっているのもいいですね。まだ僕はこれから先、具体的に何かしらの計画があるわけではないですが、FDJの若いドライバーがグリップ競技に興味をもったときに、チャンスへと繋ぐ架け橋となれる存在になりたいとも、現場を見ていて思いました」

取材を通じてコミュニケーションをとるなかで、井口選手はFDJを「モータースポーツの1カテゴリー」として捉えているのが見えてきた。これはFDJ代表の岩田氏にも伝わっているようで「彼も含めて、近年SUPER GTのドライバーが参戦してくださっていますが、国内トップカテゴリーのドライバーがドリフトをモータースポーツの競技として認めてくれているのが、このカテゴリーを運営してきてよかったなと思える点のひとつですね」と語っていた。
スケジュールの都合で、2026シーズンは残りエビスサーキットとスポーツランドSUGOでの参戦となるが、「やるからには本気でやりたいし、始めると負けたくない気もちが強まる」とFDJへの闘志を燃やしていた。

井口卓人選手が、グリップ走行とは真逆のドリフト競技でどのように飛躍していくのか注目だ。




