「たまきはる 命の雫」の翼和希(左)と千咲えみ

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 OSK日本歌劇団「レビュー 春のおどり」が5日まで東京・新橋演舞場で昼夜、上演中だ。2023年下期のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」で全国区になったトップスター、翼和希を1日に直撃し、今年で100周年を迎えた驚異の演目「レビュー 春のおどり」の見どころや他にはないOSKならではの魅力を聞いた。(藤澤浩之)

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 2日目を終えたばかりの翼は「お客さまが集中している、緊張感がある、一緒に楽しんでくださってるのがはっきり分かるので、生の舞台をやっているんだなというのをより実感しています」と手応えを口にした。

 「春のおどり」は第1部が「ロミオとジュリエット」を古代ヤマトに移した和物ミュージカル「たまきはる 命の雫」、第2部が洋物レビュー「Silenphony−サイレンフォニー−」。

 名作を大胆にアレンジした「たまきはる」は、「最初はどうなるんだろう」といぶかしんだ翼が「和の世界観とシェイクスピアの世界観がめちゃくちゃマッチする」と推す作品。「1時間で完結してしまうので『ロミオとジュリエット』を見たことがない人にはオススメ。身構えなくてもパッと見ていただけますし、歌と踊りもありますし、怒濤(どとう)のように進んで行くので」と言うように、短いながらも圧倒される。オリビア・ハッセー主演の映画版が2時間18分と知れば「たまきはる」の濃密さが想像できるだろう。

 「サイレンフォニー」はタップダンスやラインダンス、スパニッシュのような王道から、三浦大知ばりの冒頭の無音ダンスや和モノにヴォーグを採り入れた「月と墨」などの挑戦的なナンバーまで盛りだくさん。翼が「ダンスのOSKと言っていただくために、皆で必死になって稽古してきた、緩急の激しい演目。努力の結果を見ていただきたい。サイレンスのところから少しずつ大きくなっていくエネルギーをお届けしたい」と言うように、OSKの高い力量が堪能できる作品だ。

 翼自身は第1部では作・演出の北林佐和子氏に「1回歌劇を置いといて、芝居としてお届けしたい」と言われ、「歌劇の常識や男役はこうじゃなきゃいけないというのは一回置いて、身一つで先生の元に飛び込んでいこう」と挑戦。「歌劇のフィルターで漉(こ)してじゃなくて、そのままやることで見えてきた世界がいっぱいあって、自分の中で生まれて来なかった感情が一気に出るようになった。舞台人として表現者になりたいってすごく思えた」という意識改革があったという。

 第2部でも「場面毎に全然キャラクターも曲の雰囲気もお届けするものが違うから、表現の変え方、演じ方、キャラの作り方をよりこだわるようになって、挑戦しようと思えるようになった」といい、オープニングから「生ならではのエネルギーを圧として伝えたいという気持ち」を込めて臨んでいる。

 OSKはストライキや劇場焼失、解散などの危機を乗り越え2022年に100周年を迎えた。翼は「強い志、曲げちゃいけない信念、なくしちゃいけない大事に思ってるものが強く残っていたから、何回もなくなりかけていた劇団もつなぐことができたのかな」とその理由を推察する。

 翼はOSKが舞台になった「ブギウギ」でトップスターの橘アオイ役を演じて劇団史を追体験したことが「すごく大きなきっかけになって、100周年をより考えることが増えた」という。

 「悔しい思いをされた先輩方もたくさんいらした。ファンの皆さまや会社の方々のお力もあった。そういった一人一人の思いもつながって100周年を迎えたのかな。演目も大事に100年間守ってきたからこそ今こうして100周年ですって言えるし、先輩方がつなげてほしい、続けてほしいと思ってくださって続けてきたと思うので、受け取る責任は本当に大きいし、劇団員全員が理解しておくべきもの」

 翼はOSKの魅力を「エネルギー、生命力にある」と言う。

 「何度もなくなりかけてきた時に自分たちの力で乗り越えてきた歴史が舞台に出ているのかな。自分たちで着実に一歩ずつ、少しでも逃げるという選択肢を取らずに戦い続けてきたからこそ出るエネルギーが届いていると思います。それは他のどこにもないものだと思ってます。華やかさだけじゃないところがOSKの魅力なんだよなと思います。泥くさいとか雑草魂がとっても似合う劇団かなと思います」

 そして「生の舞台の良さは生でしか感じ取ることができないし、劇場で空間を共有できること、その回でしか生まれない空気は客席で共有することでしか感じ取ることができないので、お客さまに来ていただきたい」と訴えた。

 翼はエンディングのあいさつで「200年、300年続けていく」という言葉を口にした。

 「続けるってめっちゃ難しいんやなって思います。現状維持じゃなくて進化し続けないと、世の中のはやりを敏感に感じ取っておかないと。同じものをやり続けても新しいお客さまが興味を持つには厳しい。大事なものは根底に必要ですけど、時代に応じた変化も必要だと思います」

 変わらないものを守りつつ時代の変化も捉えて、OSKはさらなる歴史を積み重ねていく。