「彼は2回射精した」「契約書を偽造した」…東大院「風俗おねだり」元教授“部下の裁判”で判明した事

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〈日本の最高学府・東大大学院の元カリスマ教授が共同研究相手に風俗店での接待などを強要していた事件。佐藤伸一元教授の部下で、同じく接待を受けていた元特任教授の裁判が行われた。“本丸”である佐藤被告が「接待はレクチャーに対する対価」と主張し収賄を否定するなか、その腹心の部下は何を語ったのか−−。注目の裁判を傍聴したノンフィクション作家・水谷竹秀氏が深層に切り込む〉

東京大学大学院の教授らが共同研究の相手から高額接待を繰り返し受けたとされる汚職事件で、収賄罪に問われた同大大学院の元特任准教授・吉崎歩被告(46)の初公判が4月23日に東京地裁で開かれた。

公訴事実を認めた吉崎被告は、その背景として「東大医学部の文化」を理由に、絶対的権力者であり、同様の罪に問われている同大元教授・佐藤伸一被告(62)からの指示を断れなかったと主張した。しかし、「甘えてしまった」などと苦しい言い訳をする場面が目立ち、風俗接待を受けた事実についても佐藤被告の指示で「性感染症の研究が目的だった」と大学側に虚偽の説明をしていたことが明らかになった。

起訴状などによると、吉崎被告は’23年3月から’24年8月まで、元教授の佐藤被告と共謀し、一般社団法人日本化粧品協会(JCA)の代表理事・引地功一氏(贈賄罪で起訴)から、講座設置の便宜を図った見返りとして、計30回にわたり、銀座の高級クラブやソープランドでの遊興接待など、総額約196万円相当の賄賂を受け取った罪に問われている。

部下が明かした「後悔」

4月23日午前10時半、東京地裁第706号法廷。

黒いスーツ姿の吉崎被告が控え目な様子で証言台の椅子に座る。「(間違い)ございません」と公訴事実を認めた後、弁護人から「今回の件で深く反省している?」と尋ねられると、「はい」と答えてからこう続けた。

「今回の過ちによって全ての方々にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。総長には謝罪会見を開かせてしまい、東大病院の院長は引責辞任をし、研究者、家族、患者様、国民の皆様にみなし公務員という立場でご迷惑をおかけしました」

吉崎被告は、贖罪として100万円を寄付したことも明らかにし、公務からは訣別する意志も示した。

「私の後進に並ぶ若手の医師には決して見せてはいけない背中を見せてしまいました。もはや公務に関わることはありません。民間の立場で研究を行う時には、公正な立場で社会に役立たせていただければと願っています」

弁護人からの問いかけにはもっぱら反省の弁を述べてはいるが、続く検察官や裁判長からの質問には戸惑いを隠せず、どぎまぎする姿も見られた。吉崎被告は、接待を受けた時の状況をこう説明した。

「私が(接待を)要求したのは事実です。許されるものではありません。なかったことを申し上げるつもりはない。上司からは『引地氏はスポンサーのようなものだから』、『仕事だと思って』、『誘ってくれたのに応じない、断るのはおかしい』と言われ、引地氏の機嫌を損ねてはいけないと思っていました」

上司とは東大の中でも絶対的権力を持つ佐藤被告のことで、その主従関係から断れない状況に追い込まれたと内情を訴えた。

吉崎被告らが初めて接待を受けたのは’23年2月14日。吉崎被告が銀座の高級フランス料理店を指定し、事前のメールで引地氏に対し「◯◯◯(店名)個室を取っておりますので、3人で、美味しいお食事とワインをとりながら、ざっくばらんに心ゆくまでお話できればと思っております」と連絡。引地氏によると、当日、会計の段階になって両被告が請求書を受け取らなかったため、引地氏が手に取ると2人から「ありがとうございます」と言葉を掛けられた。費用は約15万6000円だった。

この時のことについて、裁判長から「自分の分を出させてくださいと言わなかったのですか?」と問われた吉崎被告は法廷でこう釈明した。

「私は支払おうとしました。トイレに行くふりをして、店員に支払うと伝えると、受け取っている、貰わないように言われていると言われ、それに甘えてしまいました」

佐藤被告に逆らえない主従関係の中で、そんな“抜け駆け”が許されるのだろうか。

海外出張で女性を“お持ち帰り”

公判終了後に行われた記者会見で、引地氏は記者からその真偽を問われると「そんなことはない。吉崎先生とか佐藤先生から、私が払うからなんて言葉は聞いたことない」と真っ向から否定した。

このフランス料理店での会食の後日、吉崎被告は「個室のバーなどありませんかね?」と引地氏に持ちかけ、これがきっかけとなって会食に銀座のクラブがプラスアルファされるようになる。クラブ通いが1年ほど続いた後、JCAの研究パートナーのアテンドにより、バンコクへ大麻草畑の視察へ行った。その際、吉崎、佐藤両被告が夜の繁華街でタイ人女性を“お持ち帰り”したのが決定打となった。帰国後、佐藤被告の化けの皮が剥がれ「クラブはあれだけ高いお金を払っても、手も握れないしキスもできない」と不満を漏らし、二次会の場所が吉原にある120分8万円の高級ソープランドへ変更された。

このソープ接待について「ソープは個人の判断なのか? そこまで佐藤被告の言うことを聞かないといけないのか?」と検察官から問われると、吉崎被告はきまり悪そうに弁明した。

「あのお……。医学部の文化というのがございまして、医学部の文化において教授の言うことはかなり強い。私は長崎大学の出身で、当時、佐藤先生は同大学皮膚科の教授でした。そこからずっと先生にくっついて東京大学まで来ました。佐藤先生の言うことは絶対的な響きを持つのです。言われたらなんでもやるのかと言ったら全部とは言いませんが、そういう背景があるというのは述べさせていただきたい」

ここで検察から鋭い突っ込みが入る。

「(共同研究に携わる別の)先生はソープ接待を断ったが?」

証言台に座る吉崎被告は手で椅子をずらし、体が縮こまった。明らかに動揺している。そしてこう声を絞り出した。

「この辺りはご理解をいただくのは難しいのですが……。私が佐藤先生に何かを言って嫌われたら、私の居場所は東大皮膚科にはなくなってしまいます。長崎の医局も半ば縁を切って東大に来ているので、ここで見捨てられたら、どういうふうに身を立てたらいいのか」

こうして吉崎被告も吉原にどっぷりハマり、「私は2回射精するとか喜んで話していました」(同日の公判における引地氏の供述)という。

「業務内」と見せるために書類を偽造

事件が明るみになる端緒は’24年8月下旬の接待で、佐藤被告が「1300万円を持ってこい、殺すぞ!」と引地氏に暴言を吐いたことだ。堪忍袋の尾が切れた引地氏は警察に被害を届け出て、後にマスコミに報じられてソープ接待が白日の元にさらされた。

通報を受けた東大は内部調査を実施し、ソープへ行った理由について佐藤被告に問い詰めたところ、佐藤被告は「性風俗店に行ったのは性感染症の研究目的である」として、業務委託契約書を提示したという。この書類について検察官から突っ込まれた吉崎被告は、契約書を偽造したことを認めた上でこう答えた。

「外聞が悪いので、(佐藤被告から)研究しに行ったとするのがよかろうと言われました。その契約書を作るという話があって、私が窓口になってやりました」

検察は論告で「計画的、常習的犯行。佐藤被告が欠席した時には、単独で気を使わないではしゃいでいたと自認し、本件接待を楽しんでいた。動機は悪質で、享楽的で性的な欲望を満たすもの」と断じ、懲役1年2ヵ月、追徴金約196万円を求刑した。これに対し弁護側は、「人事権も握られている絶対的上下関係の中で、佐藤被告の指示に従い、賄賂であると察知しながらもその魅力に溺れた。師と仰いできた佐藤被告の意向に意を唱えるのは難しい。報道などで社会的制裁を受けている」などとして情状酌量を求めた。

裁判長から「最後に何か?」と言われた吉崎被告は証言台に立ち、「特にございませんが」と前置きした上で、こう語った。

「本当にご迷惑をおかけしました。信頼を裏切ってしまった皆様に深くお詫びしたいと思います」

吉崎被告は軽く一礼した。判決は5月22日に言い渡される。「接待は対価」だと主張する本丸の佐藤被告は今後、法廷で何を語るのか。