井上尚弥VS中谷潤人は「英国では絶対あり得ない」 来日記者に聞いた“5.5万”の驚きと歯痒さ「もっと盛り上がっても…」
5月2日にビッグマッチ
ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)と、元世界3階級制覇王者の中谷潤人(M.T)が30日、都内のホテルで会見を行った。両者は5月2日に東京ドームで対戦する。戦績は33歳の井上が32勝(27KO)、28歳の中谷が32勝(24KO)。日本ボクシングの歴史に残るビッグマッチは海外からも大きな注目を集める。現地取材のために来日した海外記者に話を聞いた。
東京ドーム5万5000席分のチケットが1か月以上前に完売。歴史的な一戦を前に、会見場にはこのために海を渡ってきた記者が複数いた。約14時間かけてイングランドからやってきたのは、米専門メディア「ボクシング・シーン」のトム・アイバーズ記者だ。
「これまで私が取材してきた中で、最大の試合になります。ボクシング史上でもトップ10に入ると思います。ともに全盛期にある2人の男が戦う。そう頻繁に起こることではありません」
ボクシング取材歴2年。オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)がダニエル・デュボア(英国)に2度目の勝利を挙げ、世界ヘビー級4団体統一王者になった2025年7月のウェンブリー・スタジアムでの一戦を上回るビッグマッチだと見る。
日本人同士の対戦。しかも英国では比較的人気の劣る軽量級の一戦だが、「イングランドでもボクシングファンの間ではとてつもなく大きな試合だと認識されています。ボクシング界の全員にとって本当に重要な試合です」。軽量級の試合で5万5000人もの観衆が集まることには「クレイジー。素晴らしいことです。英国では絶対にあり得ませんから」と驚きを隠せなかった。
2人の試合を現地で取材するのは初めて。「2人のエリートな職人の駆け引きが楽しみですね。流血戦でなくとも、本当にハイクラスなボクシングが見たいです。どちらが勝っても『最高の状態の相手を打ち負かした』と言えるような最高のパフォーマンスを期待しています」。ボクシングを愛する者として、歴史に残る一戦を心待ちにしていた。
リング誌編集局長はKO決着を予想
世界で最も権威ある米専門誌「ザ・リング」で編集局長を務める英国人のトム・グレイ記者も「日本ボクシング史上最大の試合ですし、日本だけでなく世界中でもいま一番の試合だと思います」と力説する。同誌のパウンド・フォー・パウンド(PFP=階級を超えた格付け)では井上が2位、中谷は6位。「それが物語っています。世界で実現し得る最も質の高いマッチアップです」と断言した。
ボクシング取材歴15年以上のベテラン。「これまで取材した『最大の試合』はタイソン・フューリーとオレクサンドル・ウシクの第1戦で、『最高の試合』はナオヤ・イノウエとノニト・ドネアの第1戦です」。井上の試合は今回で5回目、中谷は2回目の現地取材になるという。
「スーパーバンタム級で戦うなら、私はいつだってイノウエの勝利を予想します。階級を上げるにつれて、彼のパワーが落ちたという人もいますが、私はそうは思いません。まだこの階級でKOするだけのパワーを持っています。彼が後半にKOで勝つと思います。ボディショット。これがキーになるでしょう」
大胆予想したグレイ記者だが、「彼が本当の危機に直面するのも、かなり久々なことです。ナカタニは素晴らしい、物凄いボクサーですから」と簡単な試合にはならないと見る。「どちらかが動き、どちらかがミスを犯す。残念ながら、今回はジュントのほうがミスを犯す側で、モンスターが勝つと予想します」と続けた。
ボクシング大国である米国や英国でも「大きな話題になっている」というグレイ記者だが、「もっと盛り上がってもいいはず」と歯痒さも抱いている。「欧米でももっと事前のプロモーションや両者のドキュメンタリーがあってもよかった。2人のKOハイライト映像を見せれば、誰もが見たがるはずです」。軽量級が軽視されがちな現状も残念がった。
「私は軽量級が大好きです。魅力的な試合になる確率が高いですから。重量級では、互いに寄りかかって動きが少ないこともあります。私は軽量級こそがこのスポーツの醍醐味だと思います」
井上は会見で「今回初めて試合を見に来るファンの層がかなり多いと思う。ボクシングの面白さ、素晴らしさ。トップ選手同士が戦えばおのずとこれほど盛り上がるんだというものを見せたい」と力を込めた。米国では早朝、英国では正午頃にゴングが鳴る。日本のみならず、世界中にボクシングの魅力を発信する一戦になるに違いない。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
