三菱重工Westの水上由伸【写真:喜岡桜】

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元西武・水上由伸は2026年から社会人野球の強豪・三菱重工Westでプレー

 縦縞のユニホームに、赤い3つのひし形マーク。社会人野球の強豪・三菱重工Westのユニホームをまとい、元西武の水上由伸投手はベンチから試合を見つめていた。2022年にパ・リーグ新人王を獲得してからわずか3年。2025年オフに戦力外を通告され、活躍の場を社会人野球へ移した27歳右腕は、「NPBからは声がかからなかったんでね」と目を伏せたが、すぐに「野球人としてまだ知らない世界を経験したかったんです」と前を向いた。

 2020年にドラフトで香川・四国学院大から育成ドラフト5位で西武へ入団。1年目の5月に支配下登録を果たすと、プロ2年目の2022年に1軍初勝利をあげるなどキャリアハイの60試合に登板し、35ホールドポイント、防御率1.77をマーク。最優秀中継ぎ投手と、新人王の2冠に輝いた。育成出身選手が新人王のタイトルを手にするのはリーグ史上初めての快挙だった。しかし、翌2023シーズンは右肩の不調で出遅れ、年々登板数を減らしていた。

「新人王なんかは過去の栄光ですよ。毎年、毎年、進化を求めてやってきたつもりだったけど、(プロ生活が)5年で終わっちゃいました。そんな中、三菱重工さんに拾ってもらったわけなので。勝利に貢献できるようにしないとなと思っています」

 プロは、高校卒業時にも志望届を提出したほど叶えたい夢だった。だが、水上にとっては社会人野球も憧れた世界だったという。「いとこの影響で昔から都市対抗野球大会(社会人野球最高峰の大会)がすごい好きで。ずっと出てみたいという気持ちがありました」。西武在籍中には、NTT西日本OBの増田達至、Honda鈴鹿OBの平井克典、セガサミーOBの森脇亮介らから経験談を直接聞くことができたことで、関心はさらに高まっていた。

「とくに都市対抗は違うよと話していました」と水上は目を輝かせる。トーナメント制特有の緊張感、会社のためにという使命感など、プロとは趣の異なるやりがいがある。かつての輝きを取り戻し、増田、平井、森脇も立った全国大会の舞台で躍動することが、大きなモチベーションだ。

プロへの復帰を視野に入れる理由「誰もやってきてないことをやるのが好き」

「これまでは体のメカニックな話を全く気にしない野球人生だったんです。本当に感覚だけでやってきました。周りがそういうことを勉強して、多分そういう時代でもあるのに、僕だけ感覚主義を通し続けて……。勉強不足ですよね。(不調の解決方法が)分からなくなってしまった。まだ体が元気だし、痛いところもないので、これからはそういったことを勉強していくことで、球速も含めて、また良かったころに戻します」

 プロ野球の世界にやり残したことは「ない」。だが、「もちろんプロに戻りたいですね。これまで社会人野球からプロに戻った人は多分いないので。初めてのこと、誰もやってきてないことをやるのが好きなんです」と話し、返り咲きも視野に入れている。

「今年28歳なんですけど(三菱重工Westの)ピッチャーで最年長なんです。(チームの成熟度として)若いなぁってところもあるけど、お互いにレベルアップしていけると思っています。(このチームにきてから)なんか僕も『まだ24歳だったかな?』って勘違いしていますもん(笑)。体を動かすには気持ちも大事。最高な環境なんですよ」

 水上が24歳だった2022年。あの頃のような頼もしく、力強いボールを投げるために、「まずはチームに貢献してからじゃないと。(貢献する力がなければ)戻れる力もないということですから」と、冷静に現時点での実力を見極めながら、日々練習に励んでいる。野球に対する持ち前のポジティブさは、まだみずみずしいままだ。(喜岡桜 / Sakura Kioka)