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アイドルグループ「乃木坂46」の川桜さんの初写真集『エチュード』をめぐり、掲載写真がSNSに投稿され、拡散されるケースが相次いでいます。

こうした事態を受け、出版元の新潮社は4月21日、公式サイトなどで、無断転載や共有に加え、生成AIによる加工についても「固くお断りします」と注意喚起しました。

さらに新潮社は、中面だけでなく「カバーを外した本体表紙」も対象と明記。発信者情報開示請求を含む法的措置の可能性にも言及しています。

「自分で購入した本でも、撮影して投稿するのはNGなのか」 「引用なら問題ないのではないか」

SNS上で疑問の声も広がる中、写真集の投稿と著作権の関係について、河西邦剛弁護士に聞きました。

●「買ったもの=自由に使える」ではない

──写真集を購入した人が、推し活の一環として、中の写真や表紙を撮影し、SNSに投稿する行為は、法的にどのように評価されますか。

結論から言うと、表紙であってもSNS投稿は著作権侵害となる可能性があります。

「自分で買ったものだから自由に使えるのでは?」と思うかもしれませんが、ここに大きな誤解があります。購入しているのは、写真集という“モノの所有権”であって、“著作権”ではありません。

所有権というのは、その本を売ったり、人にあげたりできる権利です。一方、著作権はコピー(複製)したり、ネットに載せたりする権利です。

この著作権は出版社側にあります。つまり、購入者であっても、許可なく撮影してSNSに投稿することは原則できません。

表紙やカバーも含めて写真集の「著作物」です。たとえ一部でも、SNSに投稿すれば、著作権侵害と判断される可能性があるということです。

●「布教だからOK」は通用しない

──作品によってはSNS投稿が認められているように見えるケースもあります。どう判断すべきでしょうか。

「ファンを増やすための“布教”だからOKでは」という考えは、残念ながら通用しません。

たしかに、SNSでの拡散がヒットにつながることはあります。ただし、どこまで公開するか、どう売るかといったマーケティング戦略の判断は、あくまで権利者(出版社や事務所)にあります。

たとえば雑誌はコンビニでの立ち読みが容認されていますが、アイドルの写真集はビニールで包装され、中身が見えない状態で販売されます。これは「中身は見せない」という明確な販売戦略です(なお、勝手にビニールを外せば器物損壊罪になり得ます)。

今回の新潮社は、カバーのSNS投稿は一定程度認めつつ、中身の投稿はNGとしています。

新潮社はこの作品に期待しており、ベストなマーケティングを実現するために、著作権の行使を最適化し、今回の戦略に至ったとも考えられます。

つまり、販売促進と販売数の確保、そのバランスをとった判断といえるでしょう。

だからこそ、SNSに投稿する前に、公式サイトや公式アカウントでルールを確認することが重要です。明確にOKとされていない場合は、投稿しないのが無難です。

●「引用ならOK」はかなりハードルが高い

──「引用であれば問題ない」という意見もありますが、実際はどうでしょうか。

著作権法には、例外として「引用」があります。要件を満たせば、出版社の許可なしでSNSに投稿することもできます。

ただし、アイドルの写真集の場合、この「引用」が成立するケースはほぼありません。

著作権法上の「引用」が認められるのは、「報道」「批評」「研究」といった目的で「正当な範囲」に限られる場合です。

ここでよくある誤解が「感想=批評」ではないという点です。「かわいい」「最高」といったコメントは、あくまで感想で、批評とは、内容を分析し、意味づけをおこなうようなものです。

さらに引用には「主従関係」が求められます。つまり、自分の文章が主で、引用部分はあくまで従である必要があります。

たとえば、写真家が撮影技術を分析するようなケースなら「批評」として成立する可能性はありますが、一般的なSNS投稿でこの条件を満たすのはかなり難しいでしょう。

そのほかにも、引用には細かい要件があり、現実的には、アイドル写真集の画像をSNS投稿して引用と認められるケースはほとんどないと考えられます。

【取材協力弁護士】
河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士
「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:https://rei-law.com/