「ダイヤモンド世代」女子ゴルフの世界を急速に変える超新星たちの名前

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賞金女王にもっとも近い神谷そら

国内女子ゴルフツアーが3月の「ダイキンオーキッドレディス」を皮切りに幕を開けた。近年の女子ゴルフは世代交代が急速に進み、有望な若手が次々台頭している。佐久間、菅という2つの軸に加え、ツアーを盛り上げる若手は枚挙にいとまがない。

特に注目しておくべきなのは「ダイヤモンド世代」('03年度生まれ)である。そのなかでも、賞金女王にもっとも近いと目されているのが神谷そら(22歳)だ。ルーキーイヤーの'23年に「フジサンケイレディス」で初優勝し、国内メジャー「日本女子プロゴルフ選手権」を制して脚光を浴びた。昨季は2勝を含むトップ10入りが16回で、年間ランキングは2位。今季も「Vポイント×SMBCレディス」を2位でフィニッシュし、佐久間の対抗馬として期待されている。

彼女の最大の武器は、平均261・92ヤード(昨季1位)という圧倒的なドライバーの飛距離だ。パー5で2オンから果敢にイーグルを狙う攻めの姿勢こそ彼女の真骨頂であり、それはパワーヒッターが有利とされる米ツアー進出を見越してのことでもある。すでに「海外メジャーに出場し、結果を残したい」と公言し、米ツアー予選会への参戦も見据える。

一方で「ランキングには興味がない。それよりも自分のプロセスを重視したい」と語る神谷からは、結果を後からついてくるものと捉えるスケールの大きさが感じられる。

姉と比較され続ける吉田鈴の「本音」

同じ「ダイヤモンド世代」だと吉田鈴(22歳)と都玲華(22歳)も要チェックの選手だ。

国内通算4勝で米ツアー参戦中の吉田優利を姉に持つ鈴だが、昨季はランキング51位でシードを逃すと涙を流した。

報道陣に「ダメな選手で終わりたくない」と反省を口にすると、オフには体力強化に加え、体重移動をコンパクトにした新スイング習得に着手。アイアンのタテ距離を2〜3ヤード単位でコントロールする練習を重ねてきた。

今季の第2戦は13位、第3戦は11位と順調な滑り出しを見せている。姉と比較される環境についても「それは宿命。でも、運命は変えられるという言葉を大事にしています」と気丈に前を向く。姉を尊敬しつつも、自らの立ち位置を見失わず一歩ずつ前進する姿は、多くのファンの支持を集めており、初優勝となれば人気はさらに爆発するだろう。

そして、プロ1年目ながら年間ランキング50位に滑り込み、シードを獲ったのが都だ。

精度の高いアイアンショットを武器にパーオン率は70%を超える。今どきの若者らしい容姿からグリーン外でもたびたび話題を集めていて、SNSではインスタグラムのフォロワー数が15万人を超える。

愛称「ミヤコレ」として知られる彼女だが、昨年はスキャンダル報道もあり、師弟関係の解消といった苦境も経験した。

今季は「両親に迷惑をかけた分、結果で示していくしかない」と心機一転。オフでは徹底的な体作りと技術見直しに着手したという。タイで行った合宿では体重を7キロ増やし、ショットの安定感と飛距離アップに成功した。

いまや、そのプレーからは無駄が削ぎ落とされ、特に難易度の高いセッティングでの対応力が格段に向上している。環境に左右されない強さを身につけつつある彼女が、ツアー初優勝を飾る日は近そうだ。

「広場恐怖症」を抱えるアイドルゴルファー

すでにダイヤモンド世代より若い世代も頭角を現しつつある。実は、最近はプロ1年目から即座に結果を出すケースも珍しくない。昨年プロテスト3位通過の藤本愛菜(19歳)も、その一人だ。開幕から4試合連続で予選を通過し、「アクサレディス」では4位フィニッシュ。優勝争いに加わる実力を早々に証明した。

その力の源は、オフに取り組む「過酷な練習」にある。上田桃子らを育てた辻村明志コーチのもと、20キロを超えるタイヤを腰に巻き、引きながら坂道を走るトレーニングを4ヵ月間も継続するのだ。

藤本自身も「最初は立つのもやっとでしたが、今は振ってもブレない感覚がある」と取材陣に胸を張る。いまや珍しいスポ根タイプの練習法で、女子ゴルフ界に新風を吹かせるかもしれない。

最後に紹介するのは、異なる角度からツアーに存在感を示す菅沼菜々(26歳)だ。プロゴルファーの傍ら「アイドル」を自称し、ファンミーティングでのライブ活動やCDリリースなどを行い、その活動はゴルフの枠を超えている。

一方で、高校時代に発症した「広場恐怖症」という大きなハンデも抱える。自分の意思で逃げだせないような公共交通機関(電車や飛行機など)は不安障害のために利用できず、沖縄や北海道での試合には出場できない。

だが、「やりたいことがあれば何でも挑戦すべき」と、同じ病を抱える人々にメッセージを発信し続ける彼女の活躍は、ゴルフ界に新たな価値観をもたらすはずだ。

現在の国内女子ゴルフツアーは、佐久間朱莉という女王を軸に、攻撃的な若手や、困難を力に変える個性豊かな選手たちがひしめき合っている。

まさにグリーンの上は百花繚乱。「推し」を作ってゴルフを楽しむなら今がベストだ。

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取材・文/金明碰(スポーツライター)

キム・ミョンウ/'77年生まれ、在日コリアン3世のライター。サッカーや女子プロゴルフなどスポーツに関する取材・執筆を行っている

「週刊現代」2026年4月27日号より

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