2014年、日本でもデング熱の感染が広がりを見せた。東京都内の外濠公園にも注意を促す張り紙が取り付けられた=2014年9月6日、東京都千代田区、朝日新聞社

デング熱は蚊が媒介する感染症で、世界では毎年数億人が感染しています。これまで主に熱帯地域の病気と考えられてきましたが、気候変動や人の移動の増加によって流行地域は広がっています。日本でも過去に国内感染が起きた例があり、決して他人事ではありません。デング熱とはどんな病気なのか、なぜ感染が増えているのか、そして私たちはどう備えればいいのか。感染症研究の専門家、長崎大学感染症研究出島特区の森田公一特区長(同大名誉教授)に聞きました。

この記事は、with Planetで、2024年11月26日に配信されたインタビュー記事を再構成してお届けします。本編はこちらから

ざっくり要点

1.  デング熱は蚊が媒介し、世界で年4億人が感染する
2.  多くは軽症だが、再感染で重症化する危険がある
3.  気候変動と都市化で感染地域が拡大している
4.  日本でも流行の可能性があり、対策が重要

もっと知りたい

1, デング熱とはどういう病気なのか

デング熱はデングウイルスによる感染症で、主にネッタイシマカやヒトスジシマカといった蚊を通じて人にうつります。症状は高熱、頭痛、筋肉痛、発疹などで、インフルエンザに似ています。多くの人は無症状か軽症で回復しますが、重症化すると命に関わることもあります。世界では毎年約4億人が感染し、約1億人が発症しているとされ、公衆衛生上の大きな課題です。

2, なぜ再感染すると重症化しやすいのか

デングウイルスには4つの型があり、一度感染しても別の型に対する免疫ができません。2回目以降の感染では、以前できた抗体がウイルスを抑えきれず、かえって感染を助けてしまう現象が起きることがあります。その結果、血管から血液成分が漏れ出たり、出血が止まらなくなったりする重い症状につながる場合があります。

3, 感染が世界で広がる理由

感染拡大の背景には、地球温暖化と都市化があります。気温上昇により蚊の生息域が広がり、これまで流行がなかった地域でも感染が確認されています。人の移動が活発になることで、異なる型のウイルスが持ち込まれるリスクも高まっています。新型コロナの行動制限後に感染が再拡大した地域もあります。

4, 日本への影響と対策

日本では主にヒトスジシマカが生息しており、2014年には東京都内で国内感染が起きました。現時点では大流行には至っていませんが、平均気温がさらに上がれば、より感染力の強いネッタイシマカが定着する可能性も指摘されています。蚊を増やさない環境づくりや、流行地域から帰国後の体調管理が重要です。治療は主に対症療法で、重症例では点滴などで命を守ります。ワクチンはすでに一部で使われていますが、型による効果の違いや安全性の課題があり、慎重な運用が続いています。

ちょっと深掘り

デング熱は「自然に治る病気」と見られがちですが、感染者が非常に多いため、致死率が低くても死者数は少なくありません。気候変動が進む中、これまで熱帯の問題だった感染症が身近になる可能性があります。蚊対策は個人の行動でもできる、最も現実的な予防策の一つです。

より詳しく知りたい人はこちら with Planet

世界で感染が広がるデング熱。なぜ増えているのか、日本で暮らす私たちも感染するのかを長崎大学感染症研究出島特区の森田公一特区長に聞きました。

「デング熱」とは? 気温上がれば日本でも感染拡大? 専門家に聞く

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