《放送30年で初》『王様のブランチ』がゴールデン特番 関西&東海エリアでは放送されてない“東京の番組”なのに…なぜ?
週末の人気情報番組『王様のブランチ』(TBS系)が放送開始から30年にして初めてゴールデンタイムで特番が放送される。『ブランチ』は関西や東海エリアでは放送されていない"関東ローカル"の番組でもある。なぜ全国区のゴールデン特番に? その背景についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
【写真】世界のディズニーを満喫する佐藤栞里や上白石萌音、Travis Japan宮近・吉澤など。他、スタジオ生出演した山田裕貴と有村架純のツーショットなども
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『王様のブランチ』(TBS系)の初回が放送されたのは1996年4月6日。ちょうど30年前であり、今春はその節目を祝う意味合いもあってゴールデンタイムに進出します。
13日夜、『王様のブランチゴールデン 祝30周年!テレビ初!世界のディズニー全部見せますSP』(19時〜20時55分)と題してMC・佐藤栞里さんをはじめとするブランチファミリーが海外ディズニーの魅力を紹介。カリフォルニア、フロリダ、ハワイなど世界7か所のディズニースポットをピックアップした番組は初めてであり、30周年記念にふさわしい華やかさが感じられます。
TBSの土日午前に放送されている番組のゴールデン特番は『王様のブランチ』だけではありません。約1か月前の3月15日にも日曜7時30分から放送されている『がっちりマンデー!!』のゴールデン特番『特大がっちりマンデー!!』(19〜21時)が放送されたばかりでした。
なぜ今、土日の午前中にレギュラー放送されている『王様のブランチ』と『がっちりマンデー!!』がゴールデン特番に選ばれたのか。その背景と狙い、メリットとデメリットなどを掘り下げていきます。
「東京の番組」のシンボル的な存在
『王様のブランチ』は関東エリアでは最も有名な休日の情報番組ですが、次に人口の多い関西エリアと東海エリア、さらにいくつかの都道府県では放送されていません。また、関東エリア以外では第1部(9時30分〜11時59分)のみで第2部(11時59分〜14時)は放送なしの都道府県が多いこともあって関東ローカルというイメージも強い番組でした。
ただ、関東在住者にとっては当たり前のように放送されている番組でも、関西エリアや東海エリアの人には興味深い存在であり続けているというニュアンスも感じさせられます。実際、今回のゴールデン特番が発表されたとき、MBSが関西エリアで放送している「『せやねん!』を早く終わらせて『ブランチ』に変えてほしい」というコメントが散見されました。このような声は東海エリアでもしばしば見られますし、彼らにとって「最もよく知る関東の番組」なのでしょう。
個人的に両エリアにはそれぞれ100人を超える知人がいますが、いまだに「週末に東京へ来ると『ブランチ』を見たくなる」という人が多く、進学や就職で上京する人の中にも「東京の番組として楽しみにしている」という人もいるようです。
また、第1部のみ放送されている地域の中には、ファンのタレントが出演することなどから「第2部も見たい」という声も多く、むしろ関東以外に住む人々のほうが『ブランチ』の評価は高いようなニュアンスが感じられます。
つまり『ブランチ』はその認知度や印象では全国ネットのゴールデン特番として放送できそうなレベルにあったものの、関西エリアや東海エリアへの影響を考えてのことなのか、午後や深夜の特番のみに留めてきたようなニュアンスがありました。
しかし、『ブランチ』は地道に放送を重ねることで着実な力を蓄えていたのです。
30年間で培ったパイプとノウハウ
あらためて番組そのものを紹介すると、『ブランチ』は、グルメ、旅、買い物、映画、本、トレンド、芸能などの幅広い情報を網羅し、情報番組、トーク番組、ロケ番組などの要素を持ち合わせています。
今回のディズニーで言えばこれまでの30年間で343回もの特集が組まれてきました。もちろん現場のスタッフは入れ替わっていますが、受け継がれてきた取材先とのパイプ、取材方法のノウハウ、リポートのテクニック、演出のバリエーションなどは業界トップクラスと言っていいでしょう。
「『ブランチ』のスタッフだから全面的に協力する」「『ブランチ』だから最速・最大の情報を提供する」という取材先も多く、何度かTBSの関係者と話しているとき、「これをゴールデンの番組に生かせていないのはもったいない」という声を聞いたことがありました。
それは経済界に太いパイプを持ち、長年の取材実績がある『がっちりマンデー!!』も同様。「『がっちりマンデー!!』だから取材許可を出す」「貴重な情報や視聴者プレゼントを提供する」という企業は多く、「番組のブランド力を損ねることなくゴールデン・プライム帯でも活用できないか」という声があがっていました。長年にわたって放送され、多くの人気タレントを輩出した登竜門であることも含め、「そのブランド価値はゴールデンのレギュラー番組と同等以上のものがある」と言っていいでしょう。
実際、先月放送された『特大がっちりマンデー!!』は、『ブランチ』の「世界のディズニー全部見せます」に負けない「テレビ史上初のJR全7社が集結」という豪華な企画。本編の放送とはまったく異なる内容でありながら、「構成・演出などのスタンスは変えずにゴールデン仕様にスケールアップさせる」という印象を与えていました。
3年前の『ZIP!』(日本テレビ系)に続いて今春に『めざましテレビ』(フジテレビ系)の放送時間が拡大されたように、このところ民放各局が情報番組のブランド整理と有効活用を進めています。
現在はテレビ業界全体が「看板番組は拡大し、そうではない番組は終了させて経費削減する」「看板番組はゴールデン特番を増やす」という"選択と集中"のタームに突入。なかでもTBSはこれまで土日の午前に視聴者を楽しませてきた『ブランチ』『がっちりマンデー!!』という他局にはない強みを持つ看板番組を持っていたため、相次ぐゴールデン特番につながったのでしょう。
「オリジナル特番」の高いハードル
そしてゴールデン特番をめぐる状況で、もう1つふれておかなければいけないのは、オリジナルの特番を手がけるハードルがますます上がってしまったこと。
もともと特番とは文字通り「特別な番組」であり、春秋の改編期や年末年始などで不定期放送されていました。しかし、新たな特番を放送しても失敗が続き、放送収入低下に伴う制作費削減を迫られるなど、ゴールデン特番をめぐる状況は苦しくなる一方。そのため「オリジナルの特番はあきらめて、レギュラー番組の2〜3時間特番を放送する」ケースが大半を占めるようになりました。
レギュラー番組の特番なら出演者やセットなどをそのまま活用して制作費を抑えられる上に、一定の固定ファンがついているため「大失敗」を回避することが可能。ローリスク・ローリターンの現実的な戦略ではあるものの、それなりの結果を出すことで何とか踏ん張ってきました。
しかし、そのレギュラー番組の特番は改編期や年末年始以外の通常時にも放送されているため、「もはやこれ以上、増やせない」という飽和状態。民放各局が「土日の朝や昼の番組、平日の帯番組、深夜番組からゴールデン特番にできそうなものはないか」と検討するものの、通用しそうなものはなかなかないのが現実でした。
その点、『ブランチ』『がっちりマンデー!!』はゴールデン特番を実現させられるレアなケースであり、TBSの貴重な財産。番組のブランド力があり、固定ファン層もいるため、「土日午前とゴールデンの視聴者層は違うのではないか」などのマーケティングにとらわれすぎないことも強みと言っていいでしょう。
局にとって再評価されてしかるべき番組であり、現場で奮闘するスタッフと出演者のモチベーションアップが期待できるだけに、しばらくはゴールデン特番を続けていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。
