鈴木亮平

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一香は夏海で確定?

 TBS「日曜劇場 リブート」(日曜午後9時)の次回は第7回。大詰めを迎える。平均視聴率は冬ドラマの中で断トツのままだ。「日曜劇場」は昨年放送した4作品も年間視聴率の上位を独占した。どうして強いのか。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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「リブート」が終盤に入った。1日放送の第6回で幸後一香(戸田恵梨香)は主人公のパティシエ・早瀬陸(鈴木亮平)に対し、一連の事件の黒幕は自分だと告白した。

 一香は闇組織・ゴーシックスコーポレーション社の公認会計士。3年前、前任者だった早瀬の妻・夏海(山口紗弥加)を殺し、ゴー社の10億円を奪ったという。さらにゴー社が管理する100億円の貴金属も横領したと打ち明けた。

鈴木亮平

 もっとも、一香の告白は鵜呑みには出来ない。理由がある。この話をする直前、早瀬がリブート(再起動)のために姿を借りている警視庁刑事・儀堂歩(鈴木亮平、2役)が死んだ。ゴー社の代表・合六亘(北村有起哉)たちに100億円の貴金属を横領したのは自分だと主張したあと、射殺された。

 まず儀堂が死ぬ前、殺害現場に早瀬も呼び出されたときのこと。一香は秘かに早瀬のスマホにメッセージを送った。「家族のもとに戻りたいなら絶対に来ないで」。周囲には合六たちがいた。気付かれたら一香もタダでは済まない。

 メッセージの理由について一香は告白の際、「合六の組織を乗っ取る、そのために利用しやすいあなたを残した」と説明した。しかし、それなら早瀬が助言どおりに逃走したら、困ったはず。矛盾する。

 まだある。合六が儀堂ではなく、早瀬を殺そうとしたとき、一香はかすかに動揺した。そして合六に「待ってください」と頼み、儀堂と話し合う時間をもらった。100億円の貴金属のある場所を聞き出すと訴えた。結果的に早瀬の命を救った。

 一香は合六を潰すパートナーとして早瀬の存在が欲しかったと言うが、彼は洋菓子づくり一筋のパティシエ。闇組織と戦うのなら、ほかにも適任者はいるだろう。誰かを雇うための金もある。危険を冒してまで早瀬を生かした理由が分からない。

 疑問は尽きない。殺される前の儀堂は一香との話し合いのため、コンテナに入った。それまで儀堂は「犯人は一香だ!」と必死に訴えた。コンテナ内でも一香の首を絞め、怒りをぶつけた。ところが、1分後に出てきたときには覚悟を決めたような表情に変わり、「オレがやった」と言い始めた。直後に撃たれた。

 おそらく一香は、儀堂の愛してやまない妻・麻友(黒木メイサ)のことは必ず守ると約束した。だが、儀堂は一香に何度も騙されている。すぐには信用しないはず。だから一香は自分の正体を明かしたのではないか。夏海からリブートしたと。既にそう思われている人が多いとおりである。

 第3回、一香はやはり矛盾する言葉を早瀬に投げ掛けている。早瀬が儀堂の妻・麻友をしきりに気に掛けると、「夏海さんがかわいそう」と嫌味を口にした。自分が夏海を殺していたら、こんなことは言えないはずだ。

 第4回、一香は自宅マンションの屋根裏を開け、「行ってきます」と挨拶した。写真立てらしきものが見えた。それは早瀬らとの家族写真と読む。

 同回、麻友は早瀬に向かって一香について、「彼女は何か大きなウソを吐いています、私の勘です」と告げた。この言葉が伏線だったのではないか。大きなウソとは、夏海から一香へのリブートだ。

 一香の最終目標は合六の組織を乗っ取ることではなく、壊滅させることと見る。自分を含め、皆を苦しめる合六への制裁である。そうすれば早瀬も自由の身になる。

 一香が夏海であると見られる状況証拠をもう1つ。夏海を演じる山口は番組ホームページの出演者紹介で、トメ集団(最後のグループ)の筆頭だ。黒木、早瀬の母親・良子役の原田美枝子(67)より番手が上である。亡くなった人物役で回想シーンのみの登場なら、この番手はちょっと考えにくい。

別格の制作費

 第6回までの個人視聴率の平均値は7.1%(世帯11.1%)。冬ドラマの中でトップである。2位のテレビ朝日「おコメの女−国税局資料調査課・雑国室−」(放送終了)の第7回までが同4.9%(同7.6%)だから、断トツだ。

 どうして強いのかというと、まず制作費が違う。通常、プライム帯(午後7〜同11時)の1時間ドラマの制作費は1本約3000万円。そこから出演者のギャラ、脚本料、技術費、美術費などを捻出する。

 CMが簡単には取れない今、低視聴率にあえぐ局は2500万円以下でドラマをつくることもある。会社規模とネット局数が違うテレビ東京も同等程度の制作費でつくる。

 一方、「日曜劇場」の制作費は1本推定4000万円もある。だから他局より出演陣を豪華にして、脚本や映像を凝ることも可能。ただし、これは同枠に実績があるから。高視聴率ドラマを生み続けているため、ほかのドラマより高いスポンサー料を得られている。

 スポンサーは花王、サントリー、SUBARU、日本生命の4社。この体制は2018年から変わっていない。どこかが抜けたらスポンサーになりたいとTBSに伝えている企業もあるという。スポンサーを得るのに苦労しているドラマが少なくないことを考えると、驚異的だ。

「リブート」は通常の制作費4000万円を大幅に超え、6000万円以上使っていると、他局や芸能プロダクションは見ている。確かに豪華出演陣や映像の仕上げ方を考えると、ほかのドラマの平均的な制作費の2倍使っていても不思議ではない。

 スポンサーからの収入で足りない2000万円は系列の配信動画・U-NEXTなどから得ているのだろう。人気作品だから、動画の再生数も高い。持ち出した分はすぐに回収できる。

 制作費があるから主演級が8人以上出演している。鈴木、戸田、リブート前の早瀬役の松山ケンイチ(41)。北村、警視庁観察官の伊藤英明(50)たちも主演経験者だ。

 ほかのドラマとの映像の違いはカット数を見ていると、すぐに分かる。カットとは同じ構図の映像のこと。早瀬のアップが一果のアップに変わったら、2カットである。通常のドラマは350〜400カット。「リブート」はめまぐるしく構図を変えており、500カット前後ある。

 カット数が増えるほど映像の臨場感や緊迫感が増す。ホームビデオで撮影した映像に臨場感がないのはカット数が極端に少ないからである。ただし、カット数を増やそうとすると、撮影や編集の手間がかかる。費用が嵩む。

 低制作費ドラマはロケ地の数やセットの質で分かる。ロケ地が増えると、機材の運搬費や場所の借用代が嵩むので、なるべく限られた場所で撮る。セットも安普請にせざるを得ない。無論、カット数も少なくなる。

制作陣も充実

「日曜劇場」は制作陣のスキルも高い。「ドラマのTBS」のエースが集まっている上、2023年からTBSスパークルも制作陣に加わった。ドラマ界の名門・木下恵介プロダクションの流れを汲む会社だ。

 同社は「海に眠るダイヤモンド」(2024年)や「ザ・ロイヤルファミリー」(2025年)などを制作し、実力を見せつけた。現在の同社社長は石丸彰彦氏(51)。「JIN−仁−」(2009年)などのヒットドラマの数々をプロデュースした人である。

「日曜劇場」は昨年の冬ドラマ「御上先生」、同春ドラマ「キャスター」、同夏ドラマ「19番目のカルテ」、同秋ドラマ「ザ・ロイヤルファミリー」が全て季節ごとのトップだった。「リブート」のトップも確実だ。

 4月から始まる「日曜劇場」の春ドラマ「GIFT」も強そう。題材は車椅子ラグビー。堤真一(61)が主演し、山田裕貴(35)、有村架純(33)、安田顕(52)らが助演する。NHK連続テレビ小説「ばけばけ」のサワ役で人気を得た円井わん(28)も出る。

 目下のところ、「日曜劇場」に死角は見当たらない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部