国税最強部隊“コメ”が今、密かに狙う「儲かるビジネス」。『おコメの女』監修の元国税が暴露
――ドラマでもザッコクが調査に踏み込むと、調査対象者は焦ったり、余裕しゃくしゃくだったり、さまざまな姿が描かれています。実際、コメが踏み込んだら、対象者はどのような反応をすることが多いですか?
佐藤:ほとんどの人は怒りますね。コメが調査に入るのは売上が数十億円以上、従業員も何十人何百人もいるような、それなりの規模の会社です。そこに突然、「国税局です」と来られたら、社員の手前、自分が脱税犯のように見られるわけですから。怒るのも当然だと思います。
佐藤:私は、常にポーカーフェイスを心がけていました。相手が怒っても、笑っても、泣いても、こちらは感情を表に出さない。淡々と対応します。ここで下手に謝ったり、感情的になったりすると揚げ足を取られてしまうので、乱暴な言葉は絶対に使わず、非常に丁寧に対応していましたね。
◆流行りの儲かるビジネスは調査対象に?
――ドラマではインフルエンサーや動画配信者、セミナー屋、美容クリニックなどが脱税の首謀者として描かれています。調査対象はどのように選定されるのでしょうか?
佐藤:国税庁が発表している「所得税申告漏れ高額ランキング」に載っている業界・業種は重点的に見られる可能性が高いのですが、そもそも「調査重点業種目」っていうのは毎年決められます。
――コメの調査対象として脱税のトレンドなどはあるのでしょうか?
佐藤:現金商売や好況な業界が多いですね。コロナ禍でペットを飼う人が増え、ブリーダーは近年特に不正が増えている業種ですが、ペット産業もずっと重点業種です。ペット自体も高価ですし、ブリーダーやペットフード、トリミング、動物病院なども含めると、市場規模は非常に大きいですから。
昔、北京オリンピックの頃、鉄と非鉄の価格が高騰したときには、鉄くずや鉄板などを扱う会社を狙って調査したことがありました。
ほかにも、日本産のナマコは“黒いダイヤ”と呼ばれて、中華料理で高級食材として珍重されるんです。中国などに高値で輸出して大きく売上・利益を伸ばした漁師がいたり、時節柄の特需というのはありますね。
今は金の価格が非常に高騰しているので、「金(ゴールド)」に関する業界は、調査が増えるかもしれませんね。特に香港は消費税がないので、そこで金を買って日本に密輸し、日本の消費税10%を上乗せして売ればそれだけで利益が出る。1億円分持ち込めば1000万円の儲けです。
脱税資金で買った金を売却したのかもしれないし、売却した申告をしてないケースも多いはず。
金の売却価格が200万円を超えると、買取業者は税務署へ「支払調書」の提出が義務付けられ、税務署に把握されます。それがバレないように、200万円以下になるように加工する加工業者まで出てきているので、“ぬかの臭い”がするかもしれません。
――以前は「2〜3年泳がせて、脱税額が大きくなった頃合を狙う」なんて話もありました。
佐藤:たしかに、かつては仮想通貨のような新しいビジネスが出てきたら、2〜3年泳がせてから調査するということもありました。しかし、今は事業のサイクルが速く、3年も待っていたら会社ごとなくなってしまう可能性があります。
特に外国人などが関わっていると、足が速い。3年後にくるとわかっている人は、1年で大きく稼いで会社を変え、また別の場所で同じようなことを始めます。ですから、今では2年、場合によっては1年で着手することもあると思います。
【プロフィール】佐藤弘幸
元東京国税局・税理士。1967年生まれ。東京国税局課税第一部課税総括課、資料調査課などに勤務。主として大口、悪質、困難、海外、宗教、電子商取引事案の企画・立案及び税務調査を担当。2011年、東京国税局主査で退官。現在、税理士。著書に『仮想通貨脱税』(扶桑社)、『税金亡命』(ダイヤモンド社)、『富裕層のバレない脱税』(NHK出版)などがある。最新刊『国税最強の精鋭部隊「コメ」』(扶桑社)が発売中で、テレビ朝日系ドラマ『おコメの女−国税局資料調査課・雑国室−』で国税監修を務める。
