(※写真はイメージです/PIXTA)

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かつて日本の都市居住は「ウサギ小屋」と揶揄されました。しかし今、東京都心で増え続ける居室わずか「4畳」の狭小アパートに住み、自らの暮らしに満足している若者がいます。健太郎さん(仮名)は、部屋の広さよりも時間の創出や貯金を優先して、充実感のある毎日を過ごしています。過熱する都心で自分らしく生き抜こうとするZ世代の事例を紹介します。

家賃6万8,000円の「4畳+ロフト」狭小アパートを選ぶ若者

北関東の実家を離れ、都内のIT企業へ就職した田代健太郎さん(仮名・22歳)。

就職を機に上京した健太郎さんが選んだ住まいは、新宿まで電車で10分強の好立地にある、居室わずか4畳の狭小アパートでした。「まずは『新宿まで15分圏内』を絶対条件に探したんです」と健太郎さんは振り返ります。

しかし、現実に提示された相場は想像を絶するものでした。「普通の1Kを探すと、築浅ならどこも家賃9万円を超えていました。手取りが約19万円なので、これだと月の半分近くが家賃。貯金どころか生活が詰むなと」

そんなときに出会ったのが、家賃(管理費込)6万8,000円の狭小物件。内見で初めて部屋のドアを開けた瞬間は、思わず「狭っ!」と声が出たといいます。

半ば「背に腹は代えられない」という思いで契約した健太郎さんでしたが、実際に暮らし始めると、その印象は大きく変わりました。まさに「住めば都」だそうです。

部屋の広さと引き換えに手にした「時間とお金」

「居住スペースは4畳。でも、天井が3メートル以上あるので、数字ほどの圧迫感はないんです。ロフトを寝室にすれば、下の4畳は丸々自由に使えます。それに、掃除は5分で終わるし、モノを増やさないから部屋も散らかりません」

何より大きかったのは、好立地による「時間の余裕」が生まれたことでした。

「もし実家から通っていたら、片道2時間半、往復で毎日5時間が移動に消えます。その苦痛と比べれば、部屋の狭さなんて気になりません。職場まで電車で10分だから、自由な時間がたっぷりある。実際に住んでみると、これ以上の広さは必要ないなというのが正直な感想です」

健太郎さんにとって、この部屋はあくまで「利便性の高い生活拠点」に過ぎません。

「友達と会うなら外の居酒屋に行けばいいし、映画はスマホで見ればいい。この狭さだと、どこに何があるか全部パッと分かるじゃないですか。不慣れな都会で広い部屋に住むより、これくらいギュッとしているほうが、自分には合っている気がします」

家賃を抑えられたことで、毎月2万円以上の貯金も継続中だという健太郎さん。最初は「4畳ちょっとか……」と不安もあったそうですが、いざ住んでみたら、思っていた以上に快適で満足していると笑顔を見せます。

「将来のことを考えて無理して高い家賃を払うより、今の僕にはこれくらいの生活がちょうどいいんです」

東京23区のシングル向け物件の平均賃料

健太郎さんが狭小アパートを選んだ背景には、東京の賃貸価格が若年層の収入に対して高くなりすぎているという現実があります。

LIFULL HOME'Sが2025年に公表した賃料動向データによると、東京23区のシングル向け物件(ワンルーム・1K等)の平均賃料は、約11.8万円にまで膨らんでいます。

新卒社員の手取り額(約19万円)に対し、この平均賃料を支払えば家賃比率は6割を超え、日常生活を維持する余裕はほとんどなくなってしまいます。利便性の高いエリアで暮らそうとすれば、「広さを諦める」か、あるいは「生活レベルを極限まで下げる」かという厳しい選択を迫られるのが現在の都心のリアルです。

健太郎さんのように、居室を狭めることで家賃を抑える選択は、過熱する都市部での生活を無理なく成立させるための「一つの解答」ともいえるでしょう。

実際にSNSやメディアでも、こうした合理的な暮らしを肯定的に捉える発信が目立つようになっています。過度な広さよりも、利便性や貯蓄といった実利を優先する選択は、今やZ世代の間で着実に広がりを見せています。

[参考資料]

LIFULL HOME'S「マーケットレポート【2025年8月 賃貸 首都圏版】」