なぜリーズ田中碧の序列は低下しているのか。指揮官の合理的な判断に抱えるジレンマ。先発に定着しない現状を一言で表わすなら...【現地発】
たとえば、クラブ専門サイトの『MOTリーズ・ニュース』は、「今の田中の状況を踏まえると、オファーがあれば放出を検討するだろう」と報道。英メディア『チームトーク』も「田中は出場時間の少なさに不満を抱え、冬の市場で去就が問題になる可能性がある」と伝えた。
ただ、どの報道を見ても噂の域を出ないものばかりで、現時点で具体性や裏付けに乏しい。また、イングランド2部から苦労を重ねてプレミアリーグに這い上がってきた田中が、この冬の移籍市場で自ら退団を選ぶとは考えにくい。
今季の戦歴を紐解くと、田中はプレミアリーグ22節まで19試合に出場、2ゴールを挙げている。だが先発数は、わずか7試合。昨季チャンピオンシップ(2部)でベストイレブンに選ばれた姿からすると、物足りなさは否めない。
それでも、強烈な印象を残した試合はあった。昨年12月3日のチェルシー戦、そして同6日のリバプール戦である。
チェルシー戦では、力強いミドルシュートでプレミア初ゴールを記録し、3−1の勝利に大きく貢献。しかし次戦のリバプール戦ではベンチスタートとなった。それでも途中出場から奮起し、後半アディショナルタイム6分に値千金の同点ゴールを決め、3−3のドローに持ち込んだ。
ところが、この2試合で見せた“特大のインパクト”にもかかわらず、起用法は安定しなかった。リバプール戦の翌節ブレントフォード戦では先発したものの、その後の先発は6試合でわずか1回。むしろ序列が下がっている印象だ。地元メディアも「活躍と起用法が噛み合っていない」と首を傾げる。
なぜ田中の序列は低下しているのか。そのヒントは、リバプール戦後のダニエル・ファルケ監督のコメントにある。3−3の劇的なドローに終わった試合後、指揮官はこう話した。
「もちろん試合結果は嬉しい。選手たちが称賛されるべきだ。2点差で追いかける展開になり、アプローチを変えた。機動力のあるウインガーを使い、違う形でプレッシャーをかけたかった。選手たちは見事にそれを遂行した...しかし(リバプールの3点目の場面で)アオ(田中)がブロックを空けたことに少し苛立った。彼は時々もっと注意深くしなければいけない。だがアオは同点弾を決めた。1ポイントをもぎ取ったことで、十分に取り返してくれた」
ファルケ監督が問題視したのは、リバプールの3点目の場面だった。日本代表MFが中盤の持ち場を離れ、前方にプレスを仕掛けたことで、背後のスペースをリバプールに使われた。この結果、リーズは失点。リバプールに再びリードを許すことになった。
ファルケ監督は「少し苛立った」と表現しつつも、同時に「ゴールで取り返した」と一定の評価を与えた。しかし監督が、田中のプレーと判断に不満を抱いたのは明らかだった。
重要なのは、ファルケ監督がこの問題を能力不足としてではなく、意識のズレとして捉えている点だ。たとえば、フィジカル不足を指摘する意見は完全なミスリードだろう。
チャンピオンシップ時代、田中はアンカーとして出場する機会が多く、「パスコースを消すため高い位置で捕まえに行く」積極的な守備でリズムを変えてきた。格下相手が多く、ボールを保持できる環境では、このプレーが攻撃の勢いと厚みを生んだ。
