スマートグラスを買うのはまだ待ったほうがいい? RayNeo X3 Proを試して感じた物足りなさ
TIME誌の「2025年ベスト発明品」のウェアラブル部門特別賞の1つに選出されたスマートグラスRayNeo X3 Pro。2025年は多くのスマートグラスが発表されましたが、RayNeo X3 Proは軽量かつAndroidアプリ対応なところが評価されたようです(ちなみにMetaのRay-Ban Displayはウェアラブル部門受賞)。
が、実際に使ってみた米Gizmodoの感想は、TIMES誌のリアクションほど良くはなくて…。Androidアプリが使える仕様でも、実際の使い勝手が悪けりゃダメじゃん…と、今回はかなりの辛口、激辛レビューになっています。
RayNeo X3 Proは、販売代理店シルバーアイを通して日本でも販売中。価格は21万9780円(税込)。
ARスマートグラスが欲しいんだよねぇ…という人にアドバイスするとしたら、「もうちょっと待った方がいいよ」ですね。
今回RayNeo X3 Proをレビューしてつくづく感じたのは、ARスマートグラスは技術的には実現可能なものの、使いものになるかどうかは別の話だということ。RayNeo X3 ProもAndroidアプリ対応なのはいいのですが、これが逆に頭痛の種になるとは…。
ディスプレイは素晴らしい
RayNeo X3 Proをかけると、まず「おぉぉ!」と声がでます。同僚にもかけてもらいましたが、みんな「おぉぉ!」でした。
これは単純にディスプレイが綺麗だからです。シャープで明るい。640 x 480のデュアルレンズ、カラーmicro LEDディスプレイで、明るさ6000nits。2025年トップとも言えるMeta Ray-Ban Displayの明るさが5000nitsなので、それを凌駕しています。
Metaのグラスもかけたことがあるのですが、両者を比較するとRayneo X3 Proの方が明らかにクリアで、発色もビビッドでした。
比較はしたものの、実はRayNeoとMeta Ray-Ban Displayとではプロダクトの方向性が少々異なります。
まず、Meta Ray-Ban Displayのディスプレイは右レンズのみで、日常生活でのサポート的な要素が強いです。一方のRayNeoは視覚要素にフォーカスしたARグラス。ナビや翻訳はもちろん、グラスをかけて映画を見たりゲームをしたりと、エンタメツールといった側面もあります。
RayNeoの目指す目標地点はかなり高く、まだ正解のないスマートグラス業界の正しい姿のひとつだとも思います。が、それはあくまで目指すところであり、現状、それはうまく機能していないのかも…。
プリインストールのアプリを使ってみる
「ディスプレイが綺麗!」を超えた先にあるのは、結構なイライラタイム。
まず、基本のイライラ。グラスのメインメニューとして、メールやメッセージをチェックできる通知ハブ、充電レベルやWiFiなどの接続をチェックできる情報、そしてアプリが羅列するアプリメニューが’あります。これらのメニューはすべて、グラスの右ツルの部分にあるタッチパッドでスワイプ操作します。左ツルをタッチすれば音量調整が可能。
このタッチ感度が良すぎるんです。スワイプすると行きすぎるし、タップするがつもりないときに、タップ認識されてしまう。感覚としては、触る直前にすでにタッチ認識されてしまっているレベル。
感度のいいタッチパネルは素晴らしいものの、使い勝手が逆に悪くなっちゃうのは問題。この感度に慣れてさえしまえば多少マシになるとは思いますけど。ちなみに、スマートグラスの良さは半減するものの、ツルでタッチ操作せず、スマホの専用アプリから操作することも可能です。
プリインストールされているアプリはけっこうあり、スマホとも連携可能。ただ、iPhone 17と連携させようとするも、アプリ通知やメッセ、お知らせもうまくは行きませんでした。
さて、プリインストールされているもののなかに翻訳があったので、さっそく使ってみました。
スペイン語ができるパートナーにスペイン語で話しかけてもらい、それを英語へ。これは問題なし。期待以下でも以上でもない、昨今のAI翻訳。
翻訳自体は正しくできていたものの、(他の翻訳アプリでもそうですが)自然な言い回しがちょっとビミョーなところも。また、相手が話し終わるのを待ってから翻訳するので、自然な会話としては理想的ではないテンポかもしれません。
ナビアプリも試してみました。目的地は音声で伝えるか、RayNeoアプリで入力するかの二択。RayNeoアプリは、なかなかUIがクリーンでいいですね(マップ中はスクショが撮れない謎仕様だけど)。
目的地を設定したら、操作の音声 or タップ、ルートの選択、歩き or チャリなどの項目選択を進みます。すべて選択すると、画面の右上にミニ地図が表示され、左には方向と距離、次のステップが表示されます。画面下には到着予定時間を表示。シンプルですが必要なものは全部ありますね。
1つ気になったのは、視界におけるナビの主張が強いこと。これ、徒歩ならまだいいのですが、自転車の場合はちょっと危ないかもしれません。
今年レビューした他のスマートグラスにはなくて、RayNeoにはあるもの。それは、モバイル決済のAliPayです。AliPayのアプリを起動して、QRコードを読み取り、音声で許可したら支払い完了。メガネで買い物できる時代が来ていました。
それ以外にプリインストールされているのはアルバム。グラスで撮った写真・動画を保存してチェックできます。
メガネの中心、鼻のあたりにある12MPカメラで撮った写真は4Kのはずですが、画質はぼんやり感あり。動画も1440pで、Meta Ray-Ban第2世代の3K動画の圧勝です。手ブレ補正もあるものの、これもMetaのほうがいい。
つまり、カメラ目当てならばMetaがいいということ。
リマインダーをセットできるTo Doアプリもあるのですが、動作はかなり不安定。音声アシスタント(中身はGemini)搭載で「Hey RayNeo」と声をかけると発動しますが、なぜかTo Doリストの存在をガン無視。リマインダーも無視です。さすがにこれはなんとかできなかったのか?と不思議になるレベル。
グラス搭載のマイクを使ったボイスメモアプリも使ってみましたが、録音した音声にエラーがでてアクセスできず。再起動してもダメ。
サードパーティアプリも使ってみる
プリインストールのアプリでもエラーが発生することで少々イライラさせられましたが、サードパーティーアプリを使おうと思うとさらにイライラ倍増です。なにしろ、まずGoogle Playストアのアプリを入れるところから始まるんですから…。
消費者向け製品ではサードパーティーアプリの直インストールには非対応で、RayNeoアプリを経由してインストールするアプリを選択する仕様なのだと担当者から説明を受けてはいたものの、ここでまたしても問題発生。RayNeoアプリでインストールできるサードパーティーアプリの一覧に何もでてこないんです。機能していないんです。
こうなると、サイドローディング(公式手法を介さないインストール)するしかないわけで…。
サイドローディングには、まずAndroid Debug Bridgeというツールが必要。これをダウンロード、インストールして、コマンド入力して、スマートグラスとノートPCを接続して、開発者向けアプリSidequestを使ってAPKとかインストールしなくてはなりません。
今スマートグラスを使おうとする人はガジェットアーリーアダプターかと思いますが、サイドローディングをしたことない人にとってはこの手順は地獄でしょう。
WIndowsのノートPCにRayNeo X3 Proを認識させ、Sidequestを入れるだけでも数時間かかりました。その後もAPKのインストールに苦戦し、なんとかAndroidアプリのレポジトリF-Droid を入手しましたが、まぁ時間かかりましたよ。
しかも、この流れ、RayNeoから提示された方法です。ドSかよ! サイドローディングしなくていいようにしてくれよ!
開発者の皆さんはこれをみて苦笑いしているかと思いますが、一般ユーザーとしては箱から出してさっと使いたい、それだけなんです。ノートPCからコマンドいれることになるなんて、誰も想定していないんです。
この手の作業、課題が好きな人は乗り越えるのも楽しいかと思いますが、そうではない人は手を出すべきではない。つまり、冒頭で述べた「もうちょっと待った方がいいよ」につながるわけです。
ちなみに、RayNeoアプリのインストールアプリリストに何もないのは、セキュリティや対応条件の問題だそう。でも…1個もないってどうなのさ。
バッテリーや端末クオリティなど
そしてRayNeo X3 Pro、iOSとの相性が非常に悪いです。Android端末だと、Blueetooth接続でネットワークを共有できますが、iOSではパーソナルエリアネットワーク(PAN)を使う必要あり。これ、キャリアによっては使えないので使用制限ありということになります。
公式いわく、RayNeo X3 Proのバッテリーもちは最大5時間。バッテリーはどう使うかによって大きく左右されますが、この5時間はかなりミニマム(音楽を聴く、ちょいディスプレイを見る、くらい)な使用での話で、それも実際のレビューでは3.5時間から4時間ほどでアウトでした。となると、よりディスプレイを多用する場合は、もっと短いでしょう。
テック系YouTuber、Imnformal Techのレビューでは、動画再生で36分しかもたなかったそう。これはキツイですね。
重さ76グラムの軽量さをアピールしており、これは確かに軽い方なのですが、Meta Ray-Ban Displayも軽量で69グラムなんですよね…。
デザインはスマートグラス感が強い。これは好みの問題ですが、ぱっと見で普通のメガネ、には見えません。
ディスプレイ以外で褒められるところは、オーディオ。音が非常にいいんです。Metaよりいいかもしれません。
レビューした他のスマートグラスよりも、音に広がりがあり空間的だと感じました。低音もそこそこ。オープン型のイヤホンと比べると劣りますが、悪くないです。
もし、他の機能がここまでグズグズじゃなかったら、オーディオにフォーカスした端末だったら、この音ならアリだったのにと思わずにはいられません。
総評
テックレビューとはいえ、アレを買うべき、コレは買ってはダメなんて言うつもりはないのですが、1つ言えるとしたら…RayNeo X3 Proはやめとこう!
いいところはあるんです。ディスプレイは綺麗だし、音もいいし、軽いし、UIもクリーンで悪くない。ただ、実用できるアプリがあまりに少なすぎます…。
Meta Ray-Ban Displayでも物足りないと感じるなら、RayNeoは砂漠状態。今後、対応アプリはもっと増えるでしょうが、現時点では砂漠です。
同じ1000ドルだすならば、僕ならメモリを買っておきますね。その方がよっぽど未来を見据えた投資だと思います。
と、今回はかなり辛口になってしまいました。
いいところ:美しいディスプレイ、音がいい、軽い
残念なところ:アプリが使えない、バッテリーもち短すぎ、Geminiが仕事しない、価格が使える機能に見合わない

