6代目 ホンダ・シビック・タイプR(2) 運転体験の濃密な魅力 記憶に残る最後へ
魅力の濃い運転体験 充足感が段違いのMT
ホンダ・シビック・タイプRの2.0L 4気筒ターボエンジンは、雄叫びを上げることなく、低い響きでアイドリングを始める。自然吸気だった頃のような、華美な演出はない。
【画像】欧州では2026年が最後 6代目 ホンダ・シビック・タイプR 魅力的なホットハッチたち 全119枚
好ましい感触のシフトレバーを倒し、丁度良い重み付けのクラッチペダルを放せば、魅力度の濃い運転体験の始まり。これまで英国編集部が試乗してきた、どんなホットハッチより速さを追求できるよう、FL5型は仕上げられている。
現存するMTの中でも、この6速がもたらす充足感は段違い。アクセルペダルを踏み込んだまま、シフトアップする「パワーシフト」も可能。気が遠くなるほどではないものの、胸のすくような加速へ浸れる。
他方、1速でクラッチを繋ぐ瞬間は、発生トルクが自動的に制限される。回転数とクラッチ操作をシンクロさせ、理想的な発進加速を引き出すことは少し難しい。AUTOCARの計測では、0-100km/h加速は5.9秒だった。
回すほど劇場感が増すK20C型エンジン
とはいえ、K20C型エンジンは回すほど劇場感が増していく。シリンダーは僅かにオーバースクエアな比率で、低域ではやや鈍さがあるものの、吹け上がりも鋭い。5000rpm以上での積極性は壮観といえ、7000rpmまで吸い込まれるように上昇する。
サウンドも聴き応えたっぷり。唸るように響く燃焼音や排気音に、ターボの高音が重なり、ジェットエンジンのような例えがたい音響へ包まれる。2速で100km/hに届き、5速で引っ張れば7100rpmのリミッターで240km/hへ到達する、ギア比も望ましい。
ブレーキペダルの重さは中程度。制動力の発生は漸進的で、耐フェード性も高いようだ。
並外れた安定性 クラスの枠を越えた動的能力
操縦性の精度も申し分なし。180km/hという超高速域でのコーナリングも、至って安定。ブースト上昇を楽しめるパワーデリバリーだけでなく、ダンパーの減衰特性やシャシーの落ち着きは、並外れたものといっていい。
それでいて、ドライブモードによる変化度も広い。インディビジュアル・モードでは、ダンパーをソフトにし、それ以外をスポーティに調整可能。スプリングは硬めだが、つぎはぎの多い区間でも、乗り心地重視のモードへ切り替える必要性を抑えられる。
リミテッドスリップ・デフが備わる、フロントアクスルのトラクションは高次元。情報豊かなステアリングと、確かなグリップ力も同様だ。ドライバーの気持ちを汲み取るように、高ぶらせるように、応えてくれる。
ただし大きめのサイズが影響し、鋭敏さは限定的。ひたひたと、カーブを抜けることを好むシャシーといえる。ドライ路面では、相当に攻め込まなければ限界には迫れない。クラスの枠を越えた、動的能力を秘めるともいえるが。
技術と熱意の結晶 記憶に残る仕上がり
英国価格は、5万1905ポンド(約1028万円)。性能は間違いないものの、タイプRだとしても、シビックとしてはかなりの高額であることは否定できないだろう。
歴代のシビック・タイプRで、先代のFK8型は大きな称賛を集めた。ホンダはその再現を狙ったに違いなく、FL5型は見事に達成できている。技術と熱意の結晶といえ、意図されたシリアスな走りで報いてくれる。
同時に、前輪駆動モデルの最速ラップタイムを目指した特性でもある。ホットハッチとして、一般道の速度域で旨味を味わうのに、潜在能力は少し高すぎるかもしれない。
とはいえ、英国でのグランドフィナーレを2026年に控え、記憶に残る仕上がりなことは間違いない。性能はケタ違い。アルティメット・エディションの希少性にも、疑う余地はない。来年の今頃、われわれはタイプRロスに見舞われているのだろう。
◯:類を見ない操縦性 従来より優れる乗り心地 パワフルなエンジン 素晴らしいフィーリングのMT
△:お高めの価格 もう少し低い速度域で思い切り楽しみたい
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)のスペック
英国価格:5万1905ポンド(約1028万円)
全長:4595mm
全幅:1890mm
全高:1405mm
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:5.4秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:186g/km
車両重量:1429kg
パワートレイン:直列4気筒1996cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:329ps/6500rpm
最大トルク:42.7kg-m/2200-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル/前輪駆動




