腕章を巻き、左サイドで攻守に奮戦した杉岡。写真:鈴木颯太朗

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[J1第28節]湘南 0−2 川崎/9月24日/国立競技場

 クラブ史上最多、5万4243人の大観衆。レモンガススタジアム平塚でのホームゲームの5倍以上ものサポーターが集った、国立開催のJ1第28節・川崎フロンターレ戦で、湘南ベルマーレは魅力的なサッカーを見せられなかった。

 湘南が苦戦を強いられた要因は、川崎が想定外のサッカーを選んできたからだろう。

 小気味良いパスで自陣から相手を崩していくポゼッションスタイルのイメージが強い川崎だが、国立での一戦では早めに前線のレアンドロ・ダミアンにロングボールを当てて、相手のハイプレスを無力化。システムも湘南のカウンター対策で、前回対戦時の4−3−3から3−5−2に変更した。

 川崎の鬼木達監督が試合後に語った戦術的な狙いはこうだ。

「これまで湘南戦では入りで苦しむことが多かったので、前線で起点を作ることで相手にリズムを作らせないことは意識しました。それがすべてだとは思っていませんが、選手全員が実行したことで先制点が生まれましたし、相手に流れを渡さないという意味でも良かったのかなと」
 
 今季の湘南は、ロングボールに弱い。第4節の京都サンガF.C.戦(0−2)や、第5節のアビスパ福岡戦(1−2)、第11節の柏レイソル戦(1−2)をはじめ、前線からの守備に対し、シンプルに前に蹴ることで回避してくるクラブにはいずれも手を焼いてきた。

 片や、第1節のサガン鳥栖戦(5−1)や第16節のアルビレックス新潟戦(2−2)など、ポゼッション志向の強いチームとの対戦では、相手のつなぎをハイプレスの圧で上回りたいという湘南の狙いが存分に発揮された。それは以前までの川崎戦も同様だった。

 ただ、まさか川崎がロングボール主体のサッカーを演じてくるとは。腕章を巻いた杉岡大暉も、想定外だった部分があったと明かしている。

「(川崎が)4−3−3だと思って1週間、準備していて、思い通りにいかなかった部分もあります。相手の戦い方も、僕たちの嫌なことを徹底的にやってきたので、後手に回ってしまったかなと」

 3バックの右ストッパーで先発出場した舘幸希も、次のように語った。

「過去の川崎戦よりもやりにくさを感じましたし、いつもと違う戦い方をしてきました。自分たちのスタイルを消すようなサッカーをしてきました。形の部分も想定外でした」

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 選手たちはシステム面での戸惑いを口にしたが、山口智監督は違った見方をしているようだった。

「川崎が3バックで来る想定はしていませんでしたが、3バックにやりづらさを感じたというよりも、問題はもっと根本的なところだと思います。準備やプレー選択の早さ、ボールへのチャレンジが足りなかったかなと。ゲームを見ていても、形の変化で苦労した印象は無いです。

 普段から3バックへの準備はしていますし、相手の形が変わっても、自分たちが準備の仕方を変えればいいだけだという話は日頃からしている。ただ、そこから誰がどこに出ていくのかを明確にできていなかったのであれば僕の責任ですし、もう一度すり合わせたいです」

 川崎が3バックで来たことで、選手たちに迷いが生まれた面も多少はあるだろう。実際に筆者も、試合からそういった印象を受けた。ただ、今のチームに足りていないのは、もっと根本の部分だと指揮官は語っている。

 この考え方は、選手たちにどのくらい浸透しているのか。杉岡、舘に訊くと、次のような回答が返ってきた。
 
「やはりピッチで戦っているのは自分たちですし、そもそもセカンドボールや球際で相手に負けている部分もあった。システムの噛み合いが悪くても、そこのベースの部分はもっとやらなければいけませんし、準備していないからと言って面食らっていてはダメです」(杉岡)

「監督は相手を見てやらなければいけない、というのは常日頃、言っているので、対応できなかった自分たちの力不足です」(舘)

 いずれも指揮官同様、システム面以外の個々の部分で足りていない部分があると語った。山口監督が日頃から求めていることは、選手たちに伝わっているようだ。あとは、どのように試合で実行に移すか。ここは選手たちの成長が待たれる部分だ。

 一方、3バックで来ることを想定できなかったのも、やはり問題だろう。監督、コーチ陣には、選手たちが戸惑いなくプレーできるような環境づくりが求められる。川崎戦は、選手・スタッフ両方の課題が浮き彫りとなったゲームだったと言えそうだ。

取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)