カレーハウスCoCo壱番屋(画像はイメージ/写真:西村尚己/アフロ)

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JR北浦和駅の西口から3分ほど歩いた先にある「カレーハウスCoCo壱番屋」店舗の取り組みにツイッター上で大きな注目が集まっている。

テーブル上には、ビールの食品サンプルが並ぶ。8つほど用意された食品サンプルにはそれぞれ異なるコメントが書かれており、疲れたサラリーマンにエールを送っていた。

実際のビールの売り上げは増えたのか

注目を集めたきっかけは、B級フード研究家でありライターの野島慎一郎さんが2022年6月27日にツイッター上で紹介したことだった。取材に対し野島さんは、27日昼過ぎにJR北浦和駅前店を訪れたとして、当時の様子を次のように説明する。

入り口のカウンターから奥の席へ足を進めると、昼から卓上にジョッキ2杯を並べるサラリーマンの姿があった。「すごいな」とあたりを見渡すと、人がいない席にもジョッキがあった。「そうかこれサンプルなのか」と驚いた野島さんは、次のようにツイートした。

「カウンターの各席に生ビールジョッキの食品サンプルを置くマーケティング強すぎるだろ」

27日のさいたま市の最高気温は36.7度。野島さんは店にたどり着くまで「地獄のような暑さ」だったと振り返り、ビールを飲みたい気持ちに駆られたという。実際にスーツを着たサラリーマンが飲んでいる様子を目にし、食品サンプルによるマーケティング効果は絶大と感じたそうだ。

さらに野島さんの撮影したビールの食品サンプルには、テープライターで「そんな事いいじゃんビールあるよ!」というコメントが張り付けられており、好感を持ったという。

ビールの食品サンプルが並ぶCoCo壱番屋を紹介するツイートには、「誘惑に勝てる気がしない」「これは飲みたくなる」「こんなん反則技じゃねぇのか!販促だけに!」といった声が寄せられた。ツイートは7月1日時点までに約8000件のリツイート、2万1000件の「いいね」が寄せられる大きな反響を呼んだ。

それでは実際に売り上げに変化は起きたのか。取材に対し、JR北浦和駅前店オーナーの池田英幸(ひでゆき)さんは、食品サンプルによってビールの売り上げが変化した実感はないと打ち明けた。

ビールの食品サンプル」導入の本当の理由

池田さんによれば、ビールの食品サンプルを導入したのは4年ほど前。新型コロナウイルス感染症拡大に伴う酒類の提供停止を受けて、一時は撤去していたものの、22年3月にまん延防止等重点措置が解除されたことを受けて再導入した。

「駅前にある当店には、働いている方が多く訪れますので、応援の気持ちで置かせいただきました。居酒屋でしたら大人数で1,2杯飲まれると思うのですが、当店は一人で来店されるお客様が多いです。食事をメインとしながらもその後に1杯、ゆっくりしていって欲しい気持ちがありました」

疲れたサラリーマンに癒しを届けたいと始めた取り組み。池田さんによれば、ビールの売り上げに変化はなかったが、サンプルに張り付けられたメッセージをじっくり読んでいく客が見られるようになった。ほおを緩ませる客を見かけると、嬉しくなるという。サンプルは店内に8つほど置いてあり、それぞれ異なるコメントを記している。

「『そんなこといいじゃんビールあるよ!』については従業員から『上から目線ではないか』という指摘も受けましたが、同僚が会話の中で自然と発した声をイメージしていただけますと幸いです」

池田さんの取り組みは、CoCo壱番屋のオーナー間でも話題になったそうで「話題になっているね」と声をかけられることもあったという。SNSでも好意的なコメントが多く「お褒めの言葉を多くいただけたのはありがたいです」と感謝した。

「お客さんに喜んでもらいたいという思いから様々なことに取り組んでいます。満足感だけではなく、何か『来てよかった』と思える体験を残せるようにしたいです。遊園地に訪れた時のような非日常の感動をお届けできるよう、従業員と力を合わせて取り組んでいます」