急須やティーポットの注ぎ口から水が垂れてしまう「ティーポット効果」がついに流体力学的に説明される

「急須やティーポットから飲み物を注ぐ時、どうしても注ぎ口から側面を伝って液体が垂れてテーブルがぬれてしまう」という経験がある人は多いはず。「ティーポット効果」と呼ばれるこの現象について、ウィーン工科大学の研究チームが科学的な説明に成功したとのことです。
Developed liquid film passing a smoothed and wedge-shaped trailing edge: small-scale analysis and the ‘teapot effect’ at large Reynolds numbers | Journal of Fluid Mechanics | Cambridge Core
Why teapots always drip: Scientists answer an age-old question -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2021/11/211109120309.htm
急須やティーポットなどの注ぎ口から液体が垂れてしまう「ティーポット効果」は、1956年に初めて科学的に言及されたとのこと。それ以来、多くの研究者がティーポット効果の背後にある原理の解明を目指して研究を行い、1999年には「しずくの落ちないティーポットの注ぎ口を作る方法の計算」を行った研究者たちが、ユニークな研究に授与されるイグ・ノーベル賞を受賞しました。
ウィーン工科大学で流体力学を研究するBernhard Scheichl博士らの研究チームも、ロンドン大学数学科のチームと協力してティーポット効果の研究を行ってきました。Scheichl氏は、「これは非常に身近で単純に見える効果ですが、流体力学の枠組みで正確に説明することは非常に困難です」と述べています。
ティーポット効果がどのような現象かをわかりやすく示したムービーがこれ。
Teapot-Effect - YouTube
注ぎ口から液体が流れ出るスピードが速い場合……

液体は注ぎ口の下側に垂れることなく流れていきます。しかし、よく見ると注ぎ口の下側にほんの少しだけ液体が伝うことがあるのも確認できます。

スピードが中程度になっても……

まだ垂れることはありません。

しかし、一定以上まで液体を注ぐスピードが低下すると、液体は注ぎ口の下側を伝って垂れてしまいます。急須やティーポットでは、液体の注ぎ終わり間際にスピードが落ちてしまうため、かなりの確率で液体が垂れてしまうのです。

Scheichl氏は、「この液滴が形成される理由と、常に注ぎ口の下側がぬれたままになってしまう理由について、完全な理論的説明を提供することに初めて成功しました」と述べています。
ティーポット効果の背後には慣性・粘性・毛細管力の複雑な相互作用があるとのこと。まず、慣性によって液体は注ぎ口からカップに向かう方向に流れようとしますが、一方で毛細管力によって注ぎ口の付近で液体の速度が低下します。これらの力の相互作用が、ティーポット効果の基礎となっているそうです。
また、毛細管力の影響でティーポット効果が始まるのは、ポットの壁面と液体の表面が接触する非常に狭い部分に限定されます。そのため、注ぎ口の角度が小さかったりポットの材質の親水性が高かったりするほど、ティーポットから液体が分離する速度が低下し、ティーポット効果が生じやすいと研究チームは説明しています。
興味深い点として、ティーポット効果において重力はそれほど大きな役割を果たしていないことが挙げられます。重力は液体を注ぐ方向の決定に関与していますが、重力の強さはティーポット効果にとって決定的な要因ではないとのこと。そのため、重力が全くない宇宙ステーションではティーポット効果が発生しないものの、地球より重力が低い月面基地ではティーポット効果が生じるとのことです。
