3年でSIMフリー市場シェア1位、勢いに乗るオッポに立ちはだかる壁(佐野正弘)
中国オッポの日本法人、オウガ・ジャパンは2021年5月25日に新製品発表会を実施。スマートフォン3機種をSIMフリー市場に投入することを発表しました。

今回発表された新機種の1つは「OPPO Find X3 Pro」。10億色を表示できる6.7インチの有機ELディスプレイと、10億色の彩度を実現する2つの5000万画素カメラ、さらにデジタルズームで最大60倍まで拡大ができる顕微鏡カメラを搭載するなど、特徴的な機能を備えたオッポのフラッグシップモデルです。

2つ目は「OPPO Reno A」シリーズの最新モデル「OPPO Reno5 A」で、SIMフリー市場向けのミドルクラスながら、防水・FeliCaに加え新たに5Gに対応したのが最大のポイント。カメラも6400万画素の広角カメラを含む4眼構成に進化するなど、全体的な性能強化も図られています。

そして3つ目は「OPPO A54 5G」です。こちらは大容量バッテリーと大画面、4眼カメラを搭載したエントリークラスのモデルで、チップセットにミドルクラスより下のエントリー向けとなる「Snapdragon 480 5G」を搭載するなど低コスト化を図ることによって、メーカー希望価格が3万1800円と、かなりの低価格を実現しています。
ただこれらの新機種は、いずれも既に携帯大手各社から販売されることが発表されているものでもあります。実際OPPO Reno5 Aは2021年5月20日に、ソフトバンクがワイモバイルブランドから販売することを発表していますし、OPPO Find X3 Proは2021年3月11日、OPPO A54 5Gは2021年2月15日に、KDDIがauブランドでの販売を打ち出しています。
ですが携帯各社が3機種を販売する時期と、SIMフリー版の発売時期を確認しますと、OPPO Reno5 Aがほぼ同時期、他の2機種も1か月程度の違いしかなく、大きく変わらないタイミングで販売されることが分かります。携帯大手への配慮もあってか、ソニーやシャープが最新機種のSIMフリー版を発売するタイミングが半年近く遅れる傾向にあることを考えると、携帯大手と大きく変わらないタイミングでSIMフリーモデルを販売してしまうオウガ・ジャパンの姿勢には驚かされるのですが、その背景を考えるとオッポの現状と課題が見えてきます。

オッポが現在のオウガ・ジャパンに当たる日本法人のオッポジャパンを設立し、日本市場に本格参入したのは2018年のこと。ファーウェイ・テクノロジーズに対する米国の制裁など外部要因が強く働いたとはいえ、3年のうちにミドルクラスでFeliCa搭載の「Reno」シリーズで日本の顧客に応える姿勢を打ち出しつつ、フラッグシップの「Find」、低価格の「A」シリーズの3つの路線で幅広いニーズを捉えたことにより、国内のSIMフリーAndroidスマートフォン販売台数シェア1位を獲得するなど急速に市場での存在感を高めてきました。

その実績が認められてか、2020年の国内5G商用サービス開始を機としてKDDI、そしてソフトバンクのメインブランドへのスマートフォン供給を実現。携帯電話事業への参入当初から端末を供給している楽天モバイルも加えると、オッポは参入からわずか3年で、携帯4社のうち3社へのスマートフォン供給を実現したこととなります。
しかも3社から販売された端末も高い評価を得ているようです。オウガ・ジャパンの専務取締役である河野謙三氏によると、auブランドから2020年に販売された「OPPO Find X2 Pro」は「瞬間的に売れた。幻のスマホと言われるくらいレアになった」とのこと。同機種はSIMフリーで使いたいというニーズも高かったようで、それが今回OPPO Find X3 ProのSIMフリー版販売にもつながっているとのことです。

そうしたことからオッポの立ち位置は3年間で、チャレンジャーから国内で大きな存在感を示すメーカーの1つへと変わったことは確かでしょう。携帯各社と大きく変わらないタイミングでSIMフリー版を販売するという姿勢も、一連の実績がもたらした自信の表れと見ることができそうです。
ただ一方で、オウガ・ジャパン、ひいてはオッポの現状を見ると、立場が変わったが故に課題を抱えるようになったのも事実です。1つは他の中国メーカーから攻められる立場になったことであり、より具体的に言えばシャオミの台頭です。
シャオミはオッポより1年以上遅れて日本市場へ参入していますが、コストパフォーマンスの高さを武器としてSIMフリー市場での存在感を急速に高めただけでなく、5G対応でFeliCaを搭載しながら税抜きで2万円を切る価格を実現した「RedMi Note 9T」をソフトバンクに供給するなど、携帯大手への端末供給という部分でも存在感を発揮しつつあります。

しかも国内において、両社は比較的近しいターゲットを狙っている部分が強いことから、挑戦者を迎え撃つ立場となったオッポがどこまで競合の攻勢を退けて市場での存在感を維持し続けられるかは、今後を占う上で重要なポイントになってくるでしょう。
そしてもう1つ、より大きな課題となりそうなのが、最後の1社となるNTTドコモへの端末供給実現のハードルが非常に高くなっていることです。NTTドコモは国内では最大手で販売数も多い一方、端末に関する要求条件も多く、かつてファーウェイ・テクノロジーズがNTTドコモにスマートフォンを供給した際にも、他社向け製品では実施しなかったFeliCaの搭載など、国内向けカスタマイズを施したことで驚きをもたらしていました。

国内メーカーがSIMフリー端末の販売を大きく遅らせているのも、比較的端末メーカーに柔軟な姿勢を取るようになったKDDIやソフトバンクより、NTTドコモへの配慮が強いのではないかと考えられます。それでも河野氏は「残り1社の会社にも常に扉を開いている」と、NTTドコモへの端末供給に意欲を見せているのですが、最近になって同社だけではいかんともしがたい問題が浮上しているようにも感じています。
というのもNTTドコモは現在、中国メーカーのスマートフォン採用にとても慎重な姿勢を示しており、実際2021年夏商戦向けのスマートフォン新製品には中国メーカー製品が含まれていません。しかもその背景には米中摩擦の影響があると見られており、米国の同盟国である日本の政府が最大の株主である日本電信電話(NTT)の完全子会社となった現状、NTTドコモは一層中国メーカーに厳しい姿勢を取る可能性が高いと見られています。

政治が絡む要素はメーカー側の実績だけで解決できるものではないだけに、今後オッポが一層日本市場での存在感を高める上で、非常に悩ましい問題になってくるといえそうです。
