懸命の消火活動が続いた

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 ネット上の騒動ではなく、こちらは文字通りの“大炎上”である。栃木県足利市の両崖山(りょうがいさん)周辺は、1週間にわたって白煙に包まれ、火の手は燃え広がり続けた。ハイカーによる火の不始末が原因と囁かれるが、果たして、どれほどの賠償を負わされるのか。

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【写真】隊員による懸命な消火活動

 2月21日の午後に確認された山火事は、赤城おろしに煽られながら住宅地の間近にまで迫った。麓で暮らす女性によれば、

「山頂付近に炎が見えた時は京都の大文字焼きみたいでね。でも、すぐに山一面に燃え広がって、煙がモウモウと立ちのぼった。燃えさしの枯れ葉が降ってくるから不安で寝られず、夜中も屋根や植え込みに水を撒き続けましたよ……」

懸命の消火活動が続いた

 ようやく火の勢いが弱まった27日の時点で焼失面積は約106ヘクタール。東京ドーム20個分以上に相当する森林が灰燼に帰したことになる。

 両崖山は、富士山や男体山を望む人気のハイキングコース。山頂付近の休憩所のベンチが黒焦げになっていることが確認されており、和泉聡足利市長も会見で、

「ハイカーの休憩場所が火元と推測している。食べるために火を使ったとか、タバコとか。火の気の全くないところだから」

 と述べるなど、やはり人為的な原因で山火事が発生した可能性が濃厚だ。

 県警は鎮火を待って現場検証を進める予定だが、そこで不届き者のハイカーが特定できた場合、どんな責任に問われるのか。

5千万円超えも

 弁護士法人アドバンスの代表弁護士・五十部紀英氏はこう解説する。

「山火事の原因がタバコのポイ捨てやバーベキューの炭を放置したことにあるなら、一般的に焼損させた人物が民法上の損害賠償責任を負います。ただ、失火については失火責任法という特別な法律があり、重大な過失がある場合にのみ責任が問われるのです。ここで言う重過失とは、“わずかな注意さえあれば容易に違法有害な結果を予見できたにもかかわらず、漫然と見過ごしたような状態”を指します。たとえば、落ち葉が降り積もった場所で焚火をして、火を消さないまま立ち去った場合などです」

 実は、日本の国土の約7割を“森林”が占める。林野庁によれば、2015年から19年までの5年間だけでも、毎年平均で1200件ほどの山火事が起き、焼損面積は約700ヘクタール、損害額はおよそ3億6千万円にのぼる。

 つまり、106ヘクタールまで延焼した今回の山火事は、単純計算で日本における年間焼損面積の“7分の1”に匹敵するのだ。その損害額も5千万円はくだらないことになる。

「重過失の場合、失火加害者だけが責任を負いますが、これほどの大火災なので5千万円という損害額も有り得ると思います。仮に、近隣の工場や企業が稼働停止になったり、私立学校が休校に追い込まれていれば、さらに損害額が膨らむ恐れもあるのではないか」(同)

 また、森林法違反や重過失失火罪などで刑事責任を問われる可能性も残る。

「大ニュースになったので警察も威信をかけて捜査するはずです。いずれにせよ、重要なのは加害者の特定に他なりません。ただ、現場が山中なので、防犯カメラを端緒にするにしてもどこまで追えるか……」(同)

 煙に巻かれて、犯人を取り逃がさなければよいが。

「週刊新潮」2021年3月11日号 掲載