うどんに興味がある人、大歓迎! “うどん愛”の人生を歩んできた敏腕ライターがオープンした「うどんスナック」が熱い!!!
うどん愛に溢れた、井上こんさんがついに「うどんスナック 松ト麦」をオープン! うどんはもちろん、使用する小麦の奥深さにまで、フードパブリシストの高橋綾子さんが迫ります。
うどんライターとして「食べログマガジン」をはじめ雑誌、WEB、TVなどでうどんを広め続け、筑後うどん大使に任命されるほど“うどん人生”を歩む井上こんさんが、とうとう自身の店をオープン! 飲んで、つまんで、うどんを食べる、うどん好きなら見逃せない!!
あわせて読みたい

おばんざいからの〆うどんが至高。早春は渋谷の讃岐うどん新店でつるっといこう!

レアな新店続々オープン! ラーメン激戦区、恵比寿の今
うどんライターが作ったうどんの“聖地”

子供の頃からうどん好き! どこに行こうともうどんを探して食べていたという店主の井上こんさん。20代半ばで「いったいうどんの違いは何なのか?」と疑問を持ち、原材料へと興味が移ったそうです。それから独学でうどんを打ち始めました。小麦粉と水と塩だけで自分の思い描くイメージのうどんが作れることにおもしろさを感じると、今度は文献を読み漁って小麦そのものを研究し、あらゆる方向から掘り下げていったそう。

行き着いた先は“品種の違い”。「どういう食感でどういう味にするかは選ぶ品種がポイントなのだと気づいたのです」と、全国から小麦を取り寄せては味や食感の違いを身をもって学んでいきました。

「うどんと言えばコシの有る無しが重要視されますが、コシって非常に曖昧な言葉で人によって“ものさし”が違います。どの品種を使って食感、弾力、風味をデザインするかがその店のうどんを表現しているのです。だから私はコシではなく品種にアプローチしました」と、語ります。うどんライターとして活躍しながら全国の小麦の生産者を訪ねてはうどんを食べ歩き、知識を深め味覚と腕を磨いた井上さん。時には「うどん3種食べ比べ」などのイベントを開催し、うどんの普及に勤しむうち、このハンパない“うどん愛”は、いつしか店を持つことへと育っていったのです。
小麦の品種を知らずしてうどんを語るべからず!

現在、うどんに使用される国産小麦で出回っている品種は20種類ほど。こちらではそのうちの18種類を取り扱っています。それぞれの味を知って欲しいと、ブレンドはせずシングルオリジン(単一品種)にこだわっています。「米の品種は言えるのに、小麦はあまり知られていないのが現実です。全国各地にあり、古いものは戦前から作られています。この店がきっかけで小麦のことを知ってもらえたら」と、店には品種ごとに特徴やおすすめレシピ、製粉会社のインタビューなどをまとめた手作りの小冊子が置いてあります。これを読んで小麦のことを知ると、うどんの味わいまで変わるので不思議!
ハイクオリティな手打ちうどんがなんと500円!!!

通常、店では2種類の小麦を用意しています。定番は岩手県産「ネバリゴシ」。都内はおろか岩手県内でもあまり使われていないレアな小麦で、「にゅる、もち、むにゅ」という食感が大好きなのだそう。もうひとつは「ネバリゴシ」以外の17種から選ぶ週替わり。1人前は160g、最初は2種類も食べられないと躊躇しても、1種類を味わうともう一方がどうしても気になり、結果、ほとんどの人が食べ比べすることになるそうです。

「とにかくそれぞれの品種の良さを伝えたいんです!」と、提供するのは最もシンプルな「冷」と「温」の2種類のみ。茹で時間は品種と気温と粉の状態によって微妙に変えていますが13分が基本。太さは3〜4mm幅で品種によってはより食感を楽しめるよう、平打ちにすることも。

茹で上がったら「タモ」と呼ばれる大きな網でうどんをすくいあげ、冷水でもみ洗いして締めます。うどんを盛り、胡麻を振りかけネギをのせたらだし醤油を回しかけていただきます。手切りにこだわったうどんは太さが不揃いで、アルデンテのような噛みごたえを感じたかと思えばフニャッとやわらかくもある未知なる食感。そして噛んだ先にあるのは小麦の香りと甘み。食べるほどに口の中でうどんの世界観がどんどん広がっていくのです。こんな体験をしたらうどんの虜になるに違いありません。
好みで「生卵(100円)」「おぼろ昆布(100円)」「ちくわ天(300円)」など6種類のトッピングが可能ですが、初めての場合は「冷」で食べ比べをしてみて!
スナックだから一層楽しい「うどん談義」

店内はカウンターのみの8席。店名の通り、うどん店と言うよりスナックという設えです。でもそこにはワケが。「サロン的なニュアンスを込めました。私が語るより、その土地に住んでいた人が食べ方だったり味だったりを語る方がよっぽどリアリティあるはず。お客さま同士でうどん談義から思い出話に繋がるような“場所”を作りたかったんです。全国から集まる東京だからそれができると思いました」と、事実、様々な地方出身のうどん好きたちが話に花を咲かせています。

つまみは上写真の新鮮でプリップリな生モツをうどんだしで煮込んだ“うどん屋のもつ煮”こと、「白もつだし煮込み(500円)」や、「ピリ辛山くらげ(300円)」「ペッパーとり天(300円)」など常時8〜10種類ほど。つまみサイズとはいえ、これだけおいしくてほとんどが300〜500円という価格にびっくりです。

「“ワンオペ”だとお待たせすることがどうしてもあるので、おつまみはお酒を飲みながらゆっくり食べられるものにしています」と井上さん。写真のごぼ天はカリッカリでごぼうの良い香りが揚げているそばから漂い、おつまみと言いながらボリュームもしっかりあります。〆の「温」うどんのために2本残しておく人もいるそう。今後は「うどん屋のおでん」が年中無休で登場するそうなのでこれもまた楽しみ!

ライターとしてうどんの良さや違いを書いてきた井上さん。「このお店にいらっしゃるということはうどん好きなはず。でも『うどんってこんなに違うんだ』と言われるともっともっとうれしくなるんです」と、店で実際に食べてもらってそれらを伝えられることが楽しくて仕方がないそう。

スナックだけに楽しみ方は人それぞれ。サッと1杯(うどんを)食べて帰る人もいれば、お酒とつまみという人も、うどん→つまみ→うどんという強者もいます。ただ共通するのはここにいるともっとうどんのことを知りたい、もっといろいろな品種を食べてみたいと思い、人生の中でのうどんの存在が大きくなることなのです。
※価格はすべて税抜
<店舗情報>
◆うどんスナック 松ト麦
住所 : 東京都世田谷区野沢2-26-5 野沢ビル B1F
TEL : 非設置
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。
※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。
※本記事は取材日(2021年2月2日)時点の情報をもとに作成しています。
取材・文:高橋綾子
撮影:大谷次郎
