10都府県で緊急事態宣言が1カ月延長されたことにともない、さらにストレスをため込んでいる人も多いのではないでしょうか。

 そこで、精神科医として、皆さんに注意していただきたいことがあります。それは、「お酒」の問題です。

 現在の緊急事態宣言下では、19時で酒類の提供を中止し、20時で閉店する飲食店がほとんど。そのため、家でお酒を飲む人が増えているはずです。私もその一人です(笑)。

 新型コロナウイルスへの感染を避けて、家でお酒を飲むのはよいことです。しかも、家で飲むと外で飲むよりはるかに安いし、電車に乗って帰る必要もない。

 ただそれだけに、ついつい飲酒量が増えがちに。飲みすぎてしまう危険性も高いのです。

 最近、酒浸りになっている人も、少なくないかもしれません。「お酒はストレス発散になる」と、ほとんどの人が思っていると想像しますが、じつはお酒はストレス発散にならないのです!

 多くの人が「間違ったお酒の常識」に基づいて、間違った飲酒をしている。結果として、ストレスをさらに増やし、メンタルを悪化させているのです。

 今回は、世間での「お酒の常識」がじつは間違いであること、そして、コロナ禍でのお酒との正しいつき合い方についてお伝えします。

●「少量の飲酒は健康にいい」はウソ!

「少量の飲酒は健康にいい」という話を聞いたことがありませんか? ネットでは、「お酒をまったく飲まない人よりも、少量の飲酒をする人のほうが病気のリスクが低い」「長生きできる」と解説しているサイトもあります。

 心筋梗塞や脳梗塞など、いくつかの疾患に関しては、「少量飲酒者の発症リスクが低い」という傾向があり、それを飲酒量と発症率の関係を表わすグラフの形から「Jカーブ」と呼んでいます。

 しかし、高血圧やガンなど多くの病気では、飲酒量が増えるほど病気の発症率は上がっていきます。つまり、すべての病気で合計した数字で見ると、お酒を飲めば飲むほど病気の発症率や死亡率は高くなっていくのです。

「少量の飲酒は健康にいい」というのは、ひと昔前の誤った常識。現在では、「お酒を飲まないのが最も健康にいい。お酒を飲めば飲むほど健康に悪い」と考えられています。

●お酒は睡眠の大敵

「お酒を飲むとよく眠れる」という人は多いと思います。あるいは、「寝る前に一杯飲んでから」という人もいますが、これまた大きな間違いです。

 たしかに、お酒を飲むと寝つくまでの時間は若干短縮されますが、アルコールの薬理作用によって睡眠の後半部分とレム睡眠が抑制されるのです。つまり、途中覚醒、早朝覚醒が起きやすく、トータルの睡眠時間は短くなるのです。

 アルコールは睡眠によいどころか、睡眠障害の最大の原因と言ってもいいでしょう。

●「お酒はストレス発散になる」はウソ!

 先ほども述べましたが、「お酒はストレス発散になる」は、間違いです。

 お酒を飲むとストレスホルモンであるコルチゾールの分泌量が増えます。また、長期で飲むとストレス耐性が下がり、「抑うつ」のリスクも高まります。「うつ気味」の人が毎日お酒を飲むと、「うつ病」のリスクが大きく高まるのです。

 ストレスを発散する最高の方法は、ぐっすり眠ることです。前述したように、お酒は睡眠の質を悪化させます。ですから、ストレス発散にならないどころか、メンタルに悪影響を与えて、メンタル疾患のリスクを高めます。

「最近、気分が落ち込むから、お酒でパーッと明るくなろう!」というのも間違った常識。ストレスがたまって気分が落ち込む「うつ的な人」ほど、お酒でストレスを発散すべきではないのです! さっさと寝るのが一番です。

 お酒は飲まないほうがいいのですが、お酒好きな人に「一滴も飲まないのが健康」と言っても、やめるのは難しいでしょう。そこで、コロナ禍のストレスと上手につき合うための、「お酒に飲まれない5つの方法」をお伝えします。

(1)適量飲酒を意識する

 お酒は飲めば飲むほど健康によくありません。ですが、少量の飲酒であれば健康への問題はさほど心配しなくていい、というのが「適量飲酒」です。

 生活習慣病のリスクを大きく高めない飲酒量は、純アルコール量で、1日20g、週100gといわれています。ビールだと1日に500ml缶を1缶です。

「そんな少ない量で満足できるか!」と思うでしょうが、それは毎日飲んだ場合であり、飲酒量は「週単位」で調整すべきです。

 つまり、1日おきに飲むならば、ビール500ml缶を2缶までが適量飲酒となりますから、けっして少ない量ではないはずです。

(2)毎日飲まない

 お酒と健康を考える場合、「量」に注目しがちですが、私は量以上に「毎日飲酒する」のが健康によくないと考えます。毎日飲酒すると肝臓に休む暇がなくなって、ものすごく負担をかけます。

 さらに、つねにアルコールが体内にある状態が続くと、脳がそれに慣れてしまう。つまり、毎日飲酒することで、アルコール依存症のリスクが飛躍的に高まるのです。「もっと飲みたい」という飲酒欲求も強まり、飲酒量も増えていきます。

 週に2日の休肝日(お酒をまったく飲まない日)を作る。これがとても大切です。

(3)「寝酒」にしない

 寝る前にお酒を飲むと、睡眠の質を悪化させます。ですから、「寝酒(寝るためにお酒を飲む)」は最悪です。

 ただし、お酒を飲んでから、2時間以上経過すると、アルコールはかなり代謝されます。つまり、「寝る前」ではなく、食事と一緒に、早い時間に飲むことで睡眠への悪影響を減らせます。

 また、水分をたっぷりとると、アルコールの代謝が進み、二日酔いにもなりづらくなります。

(4)コミュニケーションを楽しみながら飲む

 前述したように、お酒でストレスは発散できません。ですから、ストレス発散のためにお酒を飲むべきではありません。ただ、お酒はコミュニケーションの潤滑剤なので、会話などを楽しみながら飲むのはいいでしょう。

 食事中に家族と話をしながら飲む、オンライン飲み会というのも、いいかもしれません。一人で飲むと、飲酒量はどんどん増えます。

(5)ストロング系チューハイはNG

 最近、アルコール度数が9%以上もある「ストロング系チューハイ」が流行っています。安くて酔える、コスパがいいということで、サラリーマンや学生にも人気です。

 しかし、「ストロング系チューハイ」は、非常に危険なのでまったくおすすめできません。

 アルコール度数9%のストロング系チューハイ1缶(500ml)の純アルコール量をウイスキー(40%)に換算すると、なんとシングルで3.75杯分にも相当します。私はウイスキー好きですが、シングル約4杯は、バーで2時間以上かけて飲む量です。

 しかし、ストロング系チューハイはジュースみたいに飲みやすいので、30分もかからず1缶を空けてしまう人もいるでしょう。それは、ウイスキー1杯を8分で飲み干すのと同じ。あり得ないほどのハイペースです。

 なかには1日で3缶飲む人もいるでしょう。3缶の純アルコール量は、ウイスキーの量でいうと337.5ml。なんと、ボトル半分に相当するのです。仮にこれを毎日飲み続けたとすると、アルコール依存症になってもまったく不思議ではありません。

 ストレスが多いコロナ禍において、毎日「宅飲み」する可能性も考えると、ストロング系チューハイは避けるべきです。

かばさわしおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動

イラスト・浜本ひろし

(週刊FLASH 2021年2月23日号)