ボブ・ディラン公演も中止となりイベント中止が相次ぐ(右は京セラドーム大阪)/(C)ゲッティ=共同

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 冒頭から私事で恐縮だが、日本ツアーが中止となった米国のシンガー・ソングライター、ボブ・ディランのコンサートチケットの払い戻しを受けてきたところだ。

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 2016年のノーベル文学賞受賞後、初めてとなる日本ツアーが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となったのだ。

 日本ツアーは東京、大阪で15公演が予定されていた。チケットは2万円平均、約2500人収容の会場(Zepp DiverCityなど)で行われ、チケットやグッズの収入は約8億円が見込まれていた。

 大型のイベントの場合、主催者側は不測の事態が起きたことによりやむを得ずイベントを中止した場合に備え、損失を補填してもらう「興行中止保険」に加入している。ところが感染症の影響による公演中止は、保険金支払いの対象外だという。東京海上日動火災保険の幹部に興行中止保険について聞いた。

■興行中止保険の対象外で…

「台風や地震、交通機関の事故など、不測の事態でイベントが中止または延期した場合は保険金を支払います。しかし、イベントの出演者以外の者が、感染症にかかる恐れがあることでイベントが中止、延期となった場合は保険金の支払いは対象外になります」

 ボブ・ディラン公演の運営会社ウドー音楽事務所は、ボブ・ディラン公演を含め12公演の中止、延期を発表(3月19日13時現在)しているが、エンターテインメント業界は今、未曽有の危機に直面している。

 新型コロナウイルスの感染拡大による政府からのイベント中止・延期・規模縮小等の自粛要請を受け、ライブ・エンターテインメント業界は次々に公演の開催中止・延期措置を講じているのだ。一般社団法人日本音楽制作者連盟(野村達矢理事長)の担当者が訴える。

「政府の自粛要請を受けてエンターテインメント業界は自主判断で1550公演の中止・延期を実施、損害額は450億円と推定されています。すでに販売したチケットの返金対応をしています。出演者への補償は所属事務所がリスクを負う場合が多いのですが、今回は(中止の)本数が多く事務所の経営が絡み、調整が難しい状況です」

 日本クラシック音楽事業協会(入山功一会長)の担当者も厳しい状況をこう述べる。

「3月13日の時点で、全国740公演が中止・延期しました。その後、さらに状況は悪化してきています。ほとんどの演奏者は演奏会の収入で生活を保っています。主催者側は契約上、不可抗力での公演中止は補償しないケースが多いので、ほとんどの方はこの1カ月間、無収入状態です」

 さらに西田敏行・日本俳優連合理事長が俳優を代表して、政府、安倍晋三首相にこう緊急の要請を行っている。

「俳優のほとんどは個人事業主であるため、学校の臨時休校に伴う雇用調整助成制度の拡充補完対策、及び事業者を対象とする資金繰り支援貸し付けの対象になりません。私たちにとっては仕事と収入の双方が失われ、生きる危機に瀕する事態です」

 日本の文化、芸術は危機に直面しており、政府の支援は急を要する。

(経済ジャーナリスト・木野活明)