“日本一発信力のある野球選手”山康晃の発信論「SNSは人を笑顔にするためにある」
SNSを通じて、自身の活躍の場を広げている人たち…。彼らは、どんなポリシーを持って自分の考えを発信しているのか?
今回登場していただくのは、プロ野球選手。インタビューしたのは、ツイッターフォロワー数69万人を誇り、「日本一の発信力のある野球選手」といっても過言ではない、横浜DeNAベイスターズ・山粼康晃選手。
試合前のベンチという、本来ならピリピリしている環境での取材にもかかわらず、山粼選手が語ってくれたのは「ひたすらにシンプルな“優しさ”」についてだった。

【山粼康晃(やまさき・やすあき)】東京都出身。1992年生まれ。投手。帝京高、亜細亜大を経て、2014年のドラフト会議で横浜DeNAベイスターズに1巡目指名され入団。クローザーに抜擢されると37セーブを記録し、新人王に輝く。以降チームのクローザーとして、また日本代表としても活躍。通算238試合、10勝15敗129セーブ32ホールド(2018年9月25日現在)
「ポジティブな意味で常に誰かをびっくりさせたい」
――そもそも、なぜツイッターを始めたんですか? 今や球界でSNSといえば山粼選手、というほどの第一人者ですが…
山粼選手:
そうですか?(笑)
今でこそそう言ってもらえることもあるんですけど、もともとは、大学時代(亜細亜大学野球部)はSNSが禁止されてたんですよ。だから初めてやったのはプロに入ってからなんです。
新人選手みんなでDeNAの本社見学に行くときに、周りの選手に「えっ?やってるの?」みたいな(笑)。
――野球にメリットがあるわけじゃないと思うんですが、なぜそこまでSNSに向き合っているんでしょう?

「メリットですか…」
山粼選手:
ベタな言い方ですけど、自分が「夢をもらった」経験があったので、ファンの人ととにかく交流したかったんですよね。
僕がプロになれたのは、実家の近くで幼なじみとして育った森本稀哲さん(=もりもと・ひちょり。帝京高を経て日本ハムファイターズ入団。外野手として活躍)のおかげなんです。
稀哲さんが、サインを書いてくれたり、球場に招待してくれたりしてたんですよ。それで「プロ野球を目指そう」と強く思ったから今があると思ってますから。
――ファンに“夢を与えたい”という気持ちを強く持っていると。
山粼選手:
そうそう。僕は、もともと「人を喜ばせたい」とか「サプライズ好き」なところがあるんですよ。
常に、ポジティブな意味で誰かをびっくりさせたいというか。

“サプライズ”といえばファンの間で有名なのが、帝京高時代、野球から逃げ出そうとした山粼選手を叱ってくれた母に「一輪の花をプレゼントした」エピソード。
"僕は「辞める!」の一点張り。すると、母の目から涙がこぼれた。離婚しても、朝から夜遅くまで働いていても、決して涙も泣き言もこぼさなかった母が、僕の言葉で泣いている。瞬間、どうしようもない気持ちでいっぱいになった。翌朝――。
出典 著書『約束の力』飛鳥新社(P37、38)
「学校に行きなさい! 前田監督には、私から連絡をしておくから!」
そう言って、母は僕を無理やりタクシーに乗せた。(中略)翌日、学校の帰り。マンションの隣にある花屋さんで一輪の花を買った。
「お母さん、僕を学校まで送り出してくれてありがとう」"
新人王を受賞したプロ入り初年度のオフには、そんな母に送った「感謝の手紙」の画像をツイートしている。
契約更改も無事終了し、いよいよロスへ出発ですよん✈︎昔書いた手紙に信じられない事書いてる…お母さんにお家買わなきゃ…笑
— 山 康晃 (@19Yasuaki)
そして本日は新人王受賞記念グッズ販売おかげ様で様子を観に行った時には完売でしたよ
有難うございました✨ pic.twitter.com/rDqjIH0PoT
人柄がにじみ出る、こんなエピソードを垣間見ることができるのも、山粼選手の発信の魅力なのかも。
「いい環境の連鎖」が作れれば、ファンサービスは自然と生まれる

――球団の人から、「ファンサービスをするように」と指導されたりするんでしょうか?
山粼選手:
いえ、球団から具体的に何か言われてるわけじゃないんですよ。
こういうのって、誰かに「やれ」って言われても意味ないじゃないですか。言われたところで、やらない選手も多そうだし(笑)。
それでもチームのみんながやってるのは「環境」が大きいです。入団したときの監督・中畑清さんも、今のラミレス監督も、“ファンのために行動すべきだ”というのを明確に示している。
――三浦大輔選手(長年チームを支えたエース投手。2016年に引退)もそうでしたね。
山粼選手:
まさにそうです。
だから僕は、後輩の選手が、僕らが何も言わないのにファンにサインをしてたり、SNSで交流してたりするのを見るのが一番うれしいんですよね。
そういう「いい環境の連鎖」を自然に作れているんだって。
人を笑顔にしたいから、SNSをネガティブに使わないと決めている
――非常にききづらいんですが、SNSをやっていてデメリットを感じたことはありますか? ピッチャー、とくに山粼投手のようなクローザー(試合を決めるために、勝ちゲームの最後に投げる重要な役割)って、打たれて逆転負けしたりしたら、バッシングもすごそうですが…

「その質問ですか」
山粼選手:
大げさな言い方ですけど、僕は、ある種の「覚悟」を持ってやっているんです。
SNSはいろいろなことを言う人がいて当然。でも、発信側としても受け手としても「このツールはネガティブな使い方をしない」と決めているんですよ。
――なるほど。プロ野球界では、まだまだ選手個人がSNSで発信することに積極的ではない風潮も一部にありますが、そんな“球界の常識”を変えていきたい、というような意識もあるのでしょうか?
山粼選手:
そういうふうに言われるかもしれませんけど…。そこまでは考えていません。SNSでプロ野球選手のいろんな部分を伝えていければと思っています。
いま「デメリット」って言われましたけど、ポジティブに使えばすばらしいものじゃないですか。だったら誰かを批判したり、足を引っ張ったりするためじゃなく、人を笑顔にするために使いたい。
僕、基本的に人が悲しんでるところを見たくないんですよね。
――「人を笑顔にする」ために、山粼選手はどんな発信をしてるんでしょうか?
山粼選手:
すごく単純ですけど、自分やほかの選手の「笑顔の写真」を投稿するようにしてるんですよ(笑)。
これなら笑顔になれませんか?(笑)
猛暑☀️
— 山 康晃 (@19Yasuaki)
暑さ乗り越えて頑張る
おやすみなさい#アイスバス中 pic.twitter.com/E6JTc30LN9
ほんとだ…!

「写真大丈夫ですか? 眉間にシワが寄ってるってよく言われるんです」、と言いながら、ひたすらにこやかな笑顔で取材に応じてくれた山粼選手。
彼の発信が支持される理由は、単に実力のある投手だから…というだけではなく、そのポリシーに忠実な、「人を笑顔にする」力にあふれているからに間違いないだろう。
興味が出てきた方は、ぜひ横浜スタジアムで恒例の登場シーン「ヤスアキジャンプ」を体感してほしい。山粼選手自ら「ファンを盛り上げるため」に考案したテーマソングにノッて笑顔になる大観衆の姿に、必ず目を奪われるはずだから。
【360BAYSTARS】#19 ヤスアキジャンプを体感!
https://www.youtube.com/watch?v=Fdo9wJ9Nj1o
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=二條七海(@ryuseicamera)〉
