メルセデス-AMG CLS 53 新型に試乗 卓越した直列6気筒エンジン搭載 ISGと4WDは標準
もくじ
どんなクルマ?
ー 3代目に進化した4ドアクーペ
ー AMGに追加された43と63の中間モデル
どんな感じ?
ー ツインスクロールターボ+電動コンプレッサー
ー ISGと4輪駆動システムは標準装備
ー 卓越した直列6気筒エンジン
ー 仕上げや機能面で非の打ち所がない車内
「買い」か?
ー 一言でまとめるなら、スムーズさと流麗さ
スペック
ー メルセデス-AMG CLS 53のスペック
どんなクルマ?
3代目に進化した4ドアクーペ
AMGに続くナンバーは「53」。63や43ではない。もちろん、65というわけでもない。
スリークなスタイリングの4ドアクーペ、メルセデス・ベンツCLSは、ついに3代目へと突入する。にわかには信じられない。そして俊足なAMG 53からのリリースは、クルマ自体が新しくなったことと同じくらい、いやそれ以上の意味があることなのだろう。
まずはCLS自体から簡単に。
新しいCLSは、フレームレスウインドウの流麗なボディを持つ、Eクラス・サイズのメルセデスであることは、初代が登場した15年前と変わりない。定員は5名で、大型のメルセデス・プラットフォームを使用している。
ボディサイズはEクラスより若干長く、全長は4.98m。複雑なターボチャージャーと電動アシストシステムが組み合わされるディーゼルとガソリンエンジンのほかに、4気筒のガソリンエンジンも今年の秋に登場予定となる。
AMGに追加された43と63の中間モデル
そして、この「53」という数字に関しては、新しいAMGの命名ルールから決められたもの。通常の場合、数字が大きくなるほどパワーユニットの出力が大きくなる。もともとはエンジン自体の出力の大きさによって決められていた。
例えば、3ℓ直列6気筒エンジンを搭載したモデルはAMG43となり、4ℓのツインターボV8は、ご存知63となる。この関係性において、AMGは中間モデルに余地があると考え、53の投入を決めたようだ。
どのモデルが43と53、63の3種が設定されるかどうかはAMG次第だが、AMG独自のモデル展開が加わる場合は53とAMGが、そうでない場合は43と63が設定されるのではないかと、推測する。
Eクラスのクーペには53と、その上位にAMG GTクーペが存在し、CLSの場合は53のみ。Eクラスの場合には、43と63がラインナップされている。とは言え、過去にわたしは間違ったこともあるから、いずれ3種がラインナップされるかもしれないけれど。
初めに、パワーユニットから詳しく見ていこう。
どんな感じ?
ツインスクロールターボ+電動コンプレッサー
まず、CLS 53に搭載されるエンジンは、3ℓとなる。少々ややこしいが。
直列6気筒のガソリンエンジンは縦置きとされ、エグゾーストポート直近の高い位置に、大径の1基のツインスクロールターボが装着されている。さらに、ターボラグを可能な限り少なくするため、エンジンを挟んでターボの反対側、インタークーラーの直前部分に電動のコンプレッサーも装備されている。ターボがブースト圧を高める前に、空気を圧縮して吸気を補助する機能を持つ。
クルマに取り入れられた空気は、初めに大径のターボで加圧された後、さらに電動コンプレッサーを通過するわけだが、エンジンを取り囲む吸気ダクトには可変バルブが付いており、電動コンプレッサーへの空気の流量は、常に自在に調整することができる。
電動コンプレッサーへの気流は直径の細い配管で分岐され、ターボでの加圧が不十分な場合など、適切に加圧されたうえで、スロットルバタフライへと導かれるメインの吸気ダクトに戻される。
複雑な流れだが、とにかくこのような機構を持つエンジン単体で、435psと53.6kg-mという充分なパワーとトルクを発生する。
ISGと4輪駆動システムは標準装備
そして、この過給システムに加えて、エンジンと9速ATの間にはインテグレーテッド・スターター・ジェネレーター(ISG:メルセデスはEQブーストと呼ぶ)も装備されている。オルタネーター兼スターターモーターにフライホイールが組み合わされたもので、21psと25.3kg-mという小さくないアシストが加わる。
もちろんこのシステムは、吸気圧を高めるわけではないから、ターボラグを直接減らす機能はない。しかし、このISGは、吸気圧を高める電動コンプレッサー用に発電するだけでなく、低回転域での補助はかなり有用なはずで、結果的にターボラグの体感を減らすことに結びつく。
エンジンへの吸気量を高めることが、エンジンの回転速度を高める以上に重要ということなのだろう。恐らく。
このパワーユニットで発生した出力は、ほとんどの場面で後輪へと伝達される。4輪駆動システムが標準装備となり、リアホイールのスリップを検知すると、フロントへも配分される仕組み。E63 AMGとは異なり、ドリフトを楽しむために、後輪駆動のみに固定することは不可能だ。
ちなみに、今回のCLS 53の試乗はスペインで開催となったが、10年ぶりに降雪が記録されたそうだから、4輪駆動システムは丁度よかったかもしれない。また、スノータイヤを履いており、グリップ力やステアリングレスポンスはかなり穏やかになっていると、AMGのエンジニアは話していた。
卓越した直列6気筒エンジン
様々な努力がつぎ込まれているCLS 53のパワーユニットだが、メルセデス-AMGのトビアス・ムアースCEOを満足させるため、標準のCLSと比較してさらに明確な差別化が必要だった。AMGのクルマとして、ノイズは大きく荒々しく、明確な性格付けが求められる。そのためか、昔ながらのホットロッドとは異なるが、いまだにV8エンジンがAMGでは支配的。
新しい直6の場合、ターボでエグゾーストノートの音量は小さくなるから、濃密な63と並んでしまうと、少々迫力には欠けてしまう。しかし、エンジンは力強い。スロットルレスポンスとパワーのリニア感は素晴らしく、レブリミットは7000rpmで、BMW Mのような性格と音質を持ち合わせている。まさに卓越したエンジンだ。
ダイムラーが所有するアストン マーティン・ヴァンテージにも、このエンジンが搭載される日は来るのだろうか。
そして、多くのユーザーが選択するであろう、標準の20インチか21インチのホイールとタイヤの組合せの場合、ウインタータイヤだとしてもステアリングレスポンスは充分シャープで、大きなボディの割にはキビキビとした運動性能を実現している。
エアサスペンションは路面を上手にいなし、ボディコントロールもコイルスプリングより優れた水準にも関わらず、ステアリングの反応はBMW M5より鋭い印象。また、エアサスペンション特有の弾むような音も聞こえなかった。このエアサスペンションはオプションだが、今回試乗した他の2台にも搭載されていた。
3ℓ直列6気筒ディーゼルを搭載する400dは、思いがけずに速いが、追って登場する4気筒ガソリンは、それほどでもないはず。ただし、鼻先が軽い分、ハンドリングは一層小気味よく感じられるだろう。どちらのクルマもISGを装備するから、レスポンスは悪くないし、ATをキックダウンさせれば、加速に不満も感じないと思う。
仕上げや機能面で非の打ち所がない車内
パワーユニットを何にするかは関係なく、インテリアでは、全体的な質感の上質さという点では物足りなさがある。しかし、キャビンのレイアウトや操作性に関しては素晴らしい。ドライビングポジションは調整幅の大きいスタリングホイールと、視認性の良いデジタルメーター、大型のモニターが備わり、非の打ち所がない。
ステアリングポストから伸びる左側のレバーは、ワイパーと機器の表示変更の操作用で、右側のレバーでは、9速ATとセンターコンソールのインフォテインメントシステムが操作できる。
エアベントのデザインも格好いい。タービンのようなフィンが並び、エアベント自体にもLEDが仕込まれていて、回りの光を反射しつつ、柔らかく発光する。表面の仕上げも上質で、いい雰囲気だと思う。
リアシートのヘッドルームは、一般的なサルーンと比較すれば狭いものの、不満を抱くほどではない。ラゲッジスペースも充分妥当な容量を確保してある。もしこの広さで満足できないなら、Eクラスを選択するべきだと言えるだろう。
「買い」か?
一言でまとめるなら、スムーズさと流麗さ
AMG 53を選択するとしても、通常モデルを選択しても、新しいCLSから受ける印象を一言でまとめるなら、スムーズさと流麗さ。力強い53を選んだとしても、攻め立てた走りを促されることもないし、牙を剥かれるようなこともない。
恐らく標準モデルと比べると、かなりの調整が加えられた結果だと思うが、ムアースCEOは53の完成度には満足しているはず。
もし路面状況が良く、ノーマルタイヤだったなら、53はもっと本当のAMGのような乗り味を披露してくれたに違いない。でも仮にそれが間違いだったとしても、落胆しないだろう。それほど優れた仕上がりを得ている。
わたしは、ムアースCEOほど口やかましくないと思うけれど、クルマの方向性に間違いはなさそうだ。
