学生の窓口編集部

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どのオフィスにも1つは見かける「ホッチキス」。工作/会議の資料作りに欠かせない文房具だが、「ホッチキスという名の文房具は存在しない」のはご存じだろうか?

日本ではこの名前で親しまれているものの、製造していた「ホッチキス社」がデカデカと会社名を刻印していたことから始まった誤解に過ぎない。ホッチキス社は機関銃から戦車までを手がける軍需メーカーだったが、この文房具を発明したのは会社とは縁のない人物。

知らないひとはいないほど有名な文房具なのに、「ホッチキス」の名で呼ぶ理由はまったくないのだ。

■会社名の「ロゴ」が製品名に?

ホッチキスの正式名称はステープラーで、アメリカ人のクラウス・ボーディンが1877年に特許をとったのが始まりとされている。当時としては画期的な道具だったのだが、針がバラバラに分かれていたため1回ずつセットしなければならない。

「会議の資料を100人分用意して!」なんて言われたら、嫌がらせかっ!と思いたくなるような仕様だった。

その2年後にはイギリスのC・H・グルードが、「マギル・シングル・ストローク・ステープル・プレス」と恐ろしく長い名前のステープラーで特許をとった。現在のものは「はさむ」構造だが、このステープラーには垂直に押し下げて針を押し込むピストン式だった。

「シングル・ストローク」は「針を刺す+先端が折れ曲がる」が1回の操作でできる、の意味で、針を内側に曲げるための金床(かなとこ)が装備されている。この仕組みが人気を博し、現在も金床方式が引き継がれているのだ。

日本に上陸したのは明治36年、今から100年以上もむかしのことで、デカいボディにデカデカと「HOTCHKISS No・1」と刻印されていたのが誤解の始まりとなる。これを製品名だと思い「ホッチキス」の名で呼ばれるようになったのだ。

じつはこの刻印、「E・H・HOTCHKISS社が製造しました」の意味で、いま風にいえば「ロゴ」のようなものでしかないのだが、そこまで知るよしもなく、

・正)【製品名】ステープラー

・誤)【会社名】ホッチキス

が混ざってしまったのだ。
■武器メーカーが製造していた文房具

E・H・HOTCHKISS社は「何屋さん」だったのか? 文房具メーカーと考えるのが自然だが、なんと機関銃から戦車まで作る武器会社なのだ。

主力製品は、

・機関銃

・大砲

・戦車

と、およそ「兵器」と名のつくものは何でもござれ、で、アメリカやフランスに販売していた。なんとも物騒なはなしだが、世界中に戦火の絶えなかった1900年代・初期のことなので、世間の目にも「普通の会社」としか写らなかっただろう。

ステープラーを発明したのはE・H・HOTCHKISS社、と言われるのも、機関銃と構造が似ているためで、連結された針を装着し、1つ使うと自動的に次を繰り上げるメカニズムは確かに同じともいえる。妙な共通点から、発明者でもなければ製品名でもない「会社名」が、世に広まることになったのかもしれない。

いずれにせよ文房具のホッチキスは、製品でも製造元でもない「縁のない名前」で、由来にするほどの理由もない。「ステープラー取ってくれる?」が正解だが、かえって混乱が起きそうなのでヤメにしておこう。

■まとめ

・ホッチキスの正式名称は「ステープラー」

・世界初のステープラーは単発式で、1回ずつ針をセットしなければならなかった

・日本で販売されるようになったのは、100年以上前の明治36年

・「ホッチキス」の社名が刻印されていたため、それが「製品名」として広まった

(関口 寿/ガリレオワークス)