ディビジョン1の開幕戦で、チェンマイFCはソンクラー・ユナイテッドを相手に1-0で勝利。アウェーで貴重な勝点3を手にした。

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 監督の喜びは一瞬だ。
 
 たとえ試合に勝ったとしても、スタジアムを出ればまた次の試合のことが頭に浮かんでくる。リーグ戦なら、結果は「勝ち、分け、負け」のいずれかになる。そして、どんな結果になろうとも、また次の試合がやって来る。
 
 以前、ブラジルのあるクラブのサポーターと話していたら、その彼がこんなことを言った。
「勝ったら次の試合まで美味しい酒を飲みながらチームの話ができる」
 
 タイでは、そんな闘いの日々が幕を開けた。
 
 タイ・ディビジョン1の今季開幕戦。我がチェンマイFCは、昨年までTPL(タイ・プレミアリーグ)に所属していたソンクラー・ユナイテッドとのアウェー戦に勝ち、幸先良く勝点3をモノにした。
 
 試合前のウォーミングアップで、スタメンのひとりが負傷するアクシデントが発生。急遽、スタメンを入れ替えてのスタートとなったが、なんとかうまく対応することができた。
 
 前半は0-0で終了。後半開始からメンバーをふたり入れ替えて臨むと、良い流れを掴み58分に先制点を奪った。
 
 試合は1-0のまま進み、最後はソンクラー・ユナイテッドの反撃を抑え切っての無失点勝利。決して簡単な試合ではなかったけど、まずは、難しいアウェーでの開幕戦でしっかり勝点3を獲れた。これも支えていただいている皆さんのお陰。この場を借りて、感謝の気持ちを伝えたい。
 
 しかし初戦に勝ったとはいえ、監督たるもの、冒頭のブラジルサポーターのように次の試合まで勝利に浸っている暇などあるはずもない。まして、勝利の余韻に浸れる時間は、サポーターはもちろん、選手よりも明らかに短い。ピッチ内外で選手に良い準備をさせるのも、当然、監督以下スタッフの仕事だからだ。
 
 じゃあせめて、このコラムでは良い気持ちでチームのことを語ろうか、というと……正直そんな気分にもなれそうにない。なぜなら、やはり次の試合があるから。いや、シーズンは続くからだ。
 
 タイでは相手チームの情報がほとんどないなかでの試合が圧倒的に多い。そのため、こちらの情報を少し漏らしただけで、相手に大きなアドバンテージを与えることになってしまう。チームを率いる者としては、神経をすり減らすところだ。
 
 試合の詳細を楽しみにしてくださっている方は、残念に思うかもしれないが、どうかご理解いただきたい。ただし、僕とチームの近況については耳寄りな情報があるので、次のページをぜひお見逃しなく。
 勝利を掴むために、僕が試合で何を考えたのか。あるいはチームがアウェーの地に入ってどんな準備をしたのか。もしかしたら誰も気にしていないかもしれないし、それを知られても次の試合の勝敗に、大きな影響は及ぼさないかもしれない。
 
 しかし、勝負の世界ではどんな些細なことでも疎かにはできない。大一番になればなるほど、そうした努力の積み重ねがモノをいう時がある。だからこそ、監督という職業は、「喜びは一瞬」しか味わえないのだと思う。
 
 そこで一言。
「しっかりとした努力と準備をした人間には、その数だけ運が訪れる」
 
 弟のカズがよくこう言われる。
「カズさん、持ってますね」
 
 この「持っている」という言葉は、決して「運があるね!」という意味ではない。
「持っている」=「努力、準備」だ。
 
 カズを見ていて思う。彼は本当にその一瞬のために努力と準備を欠かさない。2月26日で48歳になろうとしている今でも、現役選手としての努力と準備をしている。
 
 それはピッチの上だけのモノではない。日常生活はもちろん、プライベートでどこへ行っても誰に会っても自分のすべき努力と準備を意識している。
 
 だから大きな試合に強い。皆が注目している試合で結果を出す。タイでカズが阪神・淡路大震災のチャリティーマッチで、2得点したと聞いた。カズの努力と準備の賜物だろう。今年のカズには期待したい。
 
 そして今回、開幕戦に向けてNHK BS-1『サッカープラネット』の密着取材が2月9日から14日の試合後まであり、僕を追い掛けてくれた。2月22日(日)の21時から45分間放送されるそうだ。
 
 結果は1-0で「持ってるね!」と言われてもおかしくない。いや、もちろん、これもしっかりとした準備と努力の結果だと信じている……。
 
 次節はホーム開幕。また大きな試合がやってくる。
 
2015年2月15日
三浦泰年