コンピューターのセキュリティを高めるためにはさまざまな手法が考え出されていますが、本来は許可されていない人による操作を感知してシャットアウトすることも有効な手段といえます。ジョージア工科大学および複数の中国の大学などによる研究チームが開発した「インテリジェント・キーボード(IKB)」は新しい仕組みで動作するキーボードで、キーボードを操作する行為が電力を生み出し、さらにカメラなどを使わずに誰がキーボードを操作しているのか判別できるというものになっています。

Scientists Make Energy-Generating Keyboard That Knows Who’s Typing On It | TechCrunch

http://techcrunch.com/2015/01/21/touch-sensing-energy-generating-keyboard/

作成されたIKBの外観は、一般的なキーボードとあまり大きく変わらない様子。IKBは機械的な機構を持たないタッチ式キーボードです。



IKBは主構造となるPET樹脂(赤色)を、導電性の素材・ITO(黄色・酸化インジウムスズ)で挟み、その上に帯電層となるFEP(水色・フッ素化エチレンプロピレン)を重ねる構造になっています。



実際に指が触れるFEPの表面にはイオンエッチングにより微細なナノワイヤーが形成されているのもポイント。



IKBが電気を生みだす仕組みはこんな感じ。キーに触れていない状態では、表面のFEPはマイナスに荷電されている状態(下記画像のa)。ここにプラスに荷電されている人の指が近づくと、底側のITOから上部のITOへと自由電子が移動して電流が発生します(b)。指がFEPに触れている間は電流は発生しません(c)。そして、FEPから指が離れていく際には、同じ原理で先ほどとは逆向きの電流が発生します(d)。この電流をもとに発電を行うと、IKBを駆動するのに必要な電力の全てを自家発電することが可能になるそうです。



また、この電流の状態を測定することで、実際にキーが押されたかどうかを判定することが可能になります。



実験では、特定のキーが押された時にアラームを鳴らしたり、実際にコンピューター上で文字を入力することに成功しています。



さらに、電流のトラッキングを精細に行うことで、人ごとの波形の違いを解析することも可能になります。以下の図のように、a、b、cの3名はそれぞれ同じ文字を入力したのですが、ウェーブレット変換を用いて解析された波形は全く異なるものとなっている様子がわかります。



研究チームによると、この技術を使えば、あらかじめ利用者の波形パターンをシステムに登録しておくことで、第三者が不正操作を試みた際に感知するという、新しいセキュリティシステムを構築することができるとのこと。

研究チームによる論文は以下のリンクから参照することが可能です。

Personalized Keystroke Dynamics for Self-Powered Human?Machine Interfacing - ACS Nano (ACS Publications)

http://pubs.acs.org/stoken/presspac/presspac/full/10.1021/nn506832w