福本伸行

 1980年「よろしく純情大将」でデビューを果たし、1998年には「賭博黙示録カイジ」で第22回講談社漫画賞受賞をする等、次々とヒット作を生み出す漫画家・福本伸行。独特の画法と勝負に挑む男達の熱い闘いを描いたストーリーが幅広く支持され、「賭博黙示録カイジ」は2009年10月藤原竜也主演により映画化。ロングランヒットを続けている。現在好評発売中の「人生を逆転する名言集  覚醒と不屈の言葉たち」には珠玉の言葉が数多く収録されており、不況の今人々を勇気付けている。今回は福本に、作品にかける想い、映画「カイジ」完成までの秘話などを聞いた。

――「人生を逆転する名言集」興味深く拝読させていただきました。今回、このタイミングで「名言集」を出されたきっかけは何だったのですか?

福本伸行(以下、福本):竹書房の担当の方が、3年くらい前から企画をしていてくれて。過去にも名言集を出したことはあったのですが、それから8年ほど経過していて、その間に「黒沢」があったり「零」があったりで。言葉は増えていたんですよね。「アカギ」のお墓が出来て(※1)、「カイジ」の映画が公開されたこのタイミングがベストかな、という判断だったんでしょう。

――「カイジ」が今秋に実写映画化されて、アニメも放送中ということで、今の時代に支持されている理由はどこにあると思いますか?

福本:うーん…。読者の支持は今に始まったわけじゃないんだけど、やっぱり“カイジ的”に苦しんでいる若者たちが昔に比べると増えてきたっていうのもあるのかもしれない。それとね、「カイジ」も「アカギ」も10年を越える連載で、もう読者からすると、昔からいる友達みたいになっているわけですよ。どんな強力な連載でも1年や2年だったらそんな所までいかないけど、やっぱり十何年もやってきたことが良かったのかな。

――友達を見守る感覚で漫画を読む、と。

福本:「カイジ」が一度休載して再開する時とか、「待ってました!」という声をいただいたりね。みんなの中でカイジやアカギが本当の友達になったんだと思いますね。

――ネットカフェ難民やニートなど、不況の時代ならではのニュースが連日のように報道されていますが、実際の問題を漫画のヒントにすることはありますか?

福本:例えば、「黒沢」を描いた時に、何もかもうまくいかない40代の男子をモチーフにしていて。普通に結婚して、子供産んで、テキトーに出世したりっていうルートに乗れなかった人達を参考にしていますよね。若い時からそうだったんだけど、ホームレスの方とかを見てると、僕と直結するんですよ。僕も今はさすがにそういうことはないんですけど、若い時は、「俺も何日間か働けなかったらああなる」って思うわけですよ。アパート代がいつか払えなくなったら、追い出されたら…って考えてた。

――いつかは自分もそうなっているかもしれないと。

福本:割と他人事じゃないって感覚をずっと持ってて。

――気持ちが想像できる?

福本:想像できますよね、ある程度。例えば他の貧しい国の人の気持ちって、状況が違い過ぎて想像できない感じがするんだけど、日本の、40代独身で、給料安くて、これからどうなっちゃうんだろうって感覚は共有できると思います。

――カイジのセリフ「勝たなきゃ誰かの養分……」など、福本先生の作品には非常に追い詰められた人物が出てきますが、どのような時にストーリーを思いつくのでしょうか。

福本:このギャンブルがどういう風に成立して、どういう風な穴があり、どういう風にやっつけるのか、そういうネタをまず決めるんですね。その後窮地のカイジにどんな仲間が加わったらいいかとかそんなことを色々。基本的には、ギャンブルのアイディア、ネタをきちっとやる。その上で、より効果的にするためにはこういう人間を巻き込もうって話になります。