ワールドカップにも賭けることができるWINNERS(公式サイトより)

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 サッカーのワールドカップ(W杯)2026北中米大会が開幕した。優勝はどこか、日本代表はどこまで勝ち進むのか。7月20日(月)早朝4時キックオフの決勝戦まで、胸躍る6週間になることを願っている。

 今大会は、最高で500万円以上とも言われる入場料の超高額化、決勝戦で初めて採用されるハーフタイムショーの話題に加え、戦闘状態にあるイランが敵国アメリカに乗り込むなど、日本のメディアでも勝負以外の話題に関心が向けられている。しかし相変わらず、世界的にも主要な話題になっているトトカルチョ(サッカーくじ)やスポーツベッティングに関するニュースはあまり目につかない。

 私はこの状態を常々「情報鎖国」と表現しているが、日本のメディアは世界のスポーツに大きな影響を与える「賭け」については黙殺し続け、まるで「無いもの」のような態度を取り続けている。【小林信也(作家・スポーツライター)】

【写真】ワールドカップの試合が行われるバンクーバー・BSプレイススタジアム

還元率が低い「toto」

 日本ではスポーツベッティングが非合法で反社会的な行為であるかのようなイメージが根強く、メディアもその先入観を放置し続けている。もちろん、マフィアなどが絡む巨大な非合法賭博の噂は聞かれる。だが、海外のメディアが公然と話題にするのは合法的なトトカルチョであり、スポーツベッティングだ。

ワールドカップにも賭けることができるWINNERS(公式サイトより)

 今大会は参加国が48に増え、試合数も計104試合に増えた。その分、賭けのチャンスが増えたことから、世界で約500億ドル(約8兆235億円)の売り上げが見込まれているとの報道もある。競技として純粋にサッカーを楽しみ、勝負の興奮に酔うだけでなく、ゲーム展開や勝負を予測し、自らも予想するプレーヤーとして試合に参加するのはプロ・サッカーを観戦する楽しみ方として深く定着している。競技と賭けは、海外では分かち難いものになっていると聞かされる。

 だからこそ、Jリーグを創設する時、totoも同時に導入された。しかし、ギャンブル性を軽減することが前提とされたため、「予想くじ」と言いながら全試合の勝敗を当てるというかなり無理な設えで、宝くじ的要素が強く、人気が高いとは言えない。2013年からの10年間の年間売上高は約1000億円前後で推移し、近年増加傾向にあるものの、2024年で1336億円にとどまっている。

 それでも、増加傾向に転じた背景にはWINNERという新しいスポーツくじの導入が影響しているかもしれない。それまでのtotoは最低でも5試合以上の的中が必要だったが、WINNERは自分が関心を寄せるチーム(1試合)の勝ち負けとスコアを予想する。ようやく予想くじらしい仕組みが導入されたといっていいだろう。

 しかし課題まだはある。totoの還元率は50パーセント。掛け金の半分が運営費用や国庫に持っていかれる。的中者は残り半分を分け合う形だ。海外の場合、主に民間業者が運営し、還元率は90パーセント以上と言われる。当然、当たった場合の配当が大きくなる。50パーセントという低い割合が容認・放置されているのも、メディアが現状を積極的に報じないためだろう。

 国や関連団体の支配体質を改め、もっと購入者やスポーツ界への還元率を高くするための監視と提言を、メディアは積極的に行うべきであろう。

日本人のトラウマとなった「二つの悲劇」

 そもそも、スポーツ関連の賭け事に対して多くの日本人が後ろ向きなのは、時折報じられる“悲劇”のインパクトが大きすぎるからかもしれない。2年前、日本中を驚かせたのは大谷翔平選手の元通訳の事件だった。非合法サイトで負けた6億8000万円もの額を、元通訳は大谷選手の銀行口座から勝手に支払っていた――。その金額の大きさは日本人の常識を遥かに超えていた。

 サッカーのW杯でいえば、「エスコバルの悲劇」がやはり衝撃的だった。

 1994年のW杯アメリカ大会の1次ラウンド、コロンビアはルーマニアに敗れた後のアメリカ戦でセンターバックのアンドレス・エスコバルがオウンゴールを記録し、先制点を献上した。結局1対2で敗れたコロンビアは、優勝候補とまで目されていたこの大会を1次ラウンドで去ることになった。

 そして悲劇は選手たちの帰国後に起こった。深夜、バーで友人と歓談して店を出たところで、エスコバルは「オウンゴールをありがとう」の言葉とともに銃撃され死亡した。犯人は不法賭博シンジケートの用心棒だったことから、背後にある組織の関与が疑われたが、いまだに謎に包まれている。犯人は服役し、2006年に釈放されたが、今年2月にメキシコで射殺されたとのニュースが伝わっている。

 日本での合法的な賭けへの理解が進まないのは、やはりこうした事件の負の印象が強烈すぎるからだと思われる。だが、ここに挙げた2例はいずれも非合法的な賭けに絡むものである。

オッズが低い「日本の優勝」

 と、ここまで非合法スポーツ賭博の悲劇についてご紹介してきたが、前大会に続いて、今大会も日本で合法的にW杯に賭けることが可能なのである。

 先ほど紹介したWINNERで、「優勝国」「日本の成績」「各試合の勝敗とスコア」などを予想し、的中すれば配当を受け取ることができる。

「優勝予想(開幕期)」の投票は6月18日(木)23時まで。11日現在の主な倍率は、1番人気のフランスが3.1倍、スペイン3.3倍、ポルトガル5.0倍、イングランド5.1倍、アルゼンチン5.5倍、ブラジル6.1倍、ドイツ9.3倍と続き、日本は8番人気10.7倍の支持を受けている。1口200円だから、日本が優勝すれば1口で2140円になる。

 日本の対戦相手オランダは11.2倍、スウェーデン133.4倍、チュニジア564.7倍。ちなみにアメリカは49.5倍。イランは407.7倍。人気最下位はカーボベルデ963.6倍だ。

「日本代表の成績」は6月14日(日)23時まで投票できる。11日現在の数字はかなり興味深い。

 投票数の1位は「ベスト32」で2.5倍。2位は「ベスト8」2.8倍。両極端だ。そして3位「ベスト16」3.4倍、4位が「4位」で7.1倍、5位が「3位」の8.7倍。6位「グループリーグ(勝ち点3)」9.1倍と続く。しかも驚くべきことに、「優勝」は8番人気で10.2倍、「準優勝」が10番人気で12.1倍。優勝しても200円が2040円にしかならない。それだけ実力が認められていると理解すべきだろうか。いや、やはり還元率が低すぎて物足りない。

 念のため、海外の伝統あるスポーツブックメーカー『ウィリアムヒル』のオッズを確認すると、スペインとフランスが4.5倍で同率首位。3位イングランド6倍、4位ポルトガス7倍。日本はモロッコ、メキシコ、スイスと並ぶ12番目で50倍。1万円の投資が50万円になる。そりゃこっちに賭けたくなるよなあ。非合法だけど。

 各試合の予想は開始時間の数時間前まで投票が可能。15日(月)朝5時に始まる日本の初戦オランダ戦は14日(日)23時30分まで販売される。現在のところ、1対0で「日本の勝利」は4.9倍、「オランダ勝利」は7.5倍。狙い目は「3対2で日本の勝利」10.4倍あたりだろうか。賭けに徹して「3対2でオランダ勝利」の19.6倍を選ぶ道もある。

 こんな風に毎日1試合を選んで200円ずつ買って楽しんだら、ただ観戦するより遥かにテンションは上がるだろう。試合があるのは35日間だから合計投資額7000円、これがいくらに化けるか減るか、悪くない楽しみ方ではないだろうか。本当はもう少し配当が高いともっとうれしいけどね。

スポーツライター・小林信也

デイリー新潮編集部