診察・手術を受けるなら、大学病院がいいのか、かかりつけ医がいいのか。医師の和田秀樹さんは「執刀医なら腕のいい医者や高性能な機器を導入している病院を選ぶべき。通常の診察は柔軟に対応できるかかりつけ医がいいだろう」という――。

※本稿は、和田秀樹『健康診断の数値におびえず楽しく生きる50の心得』(オレンジページ)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/MarsBars
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MarsBars

■かかりつけ医に必要な要素

医者を探す際、持病を診てもらうかかりつけ医と手術の執刀医とでは、チェックするべきポイントが違います。

かかりつけ医は、長いつき合いになり治療方針が生活にもかかわってくるのですから、しっかりコミュニケーションをとって、患者と一緒に治療法や薬を決めていく姿勢を持った医者が理想的です。

たとえ命が多少短くなったとしても、やりたくないこと、受けたくない施術というものが人それぞれあるでしょう。「お酒はやめたくない」「薬はなるべく飲みたくない」「歩けなくなるのは嫌だ」などと患者が希望を口にしたとき、それを否定せず、ではほかにどんな治療法があるのか選択肢を示し、よりベターな方法を一緒に模索してくれるのが「いい医者」です。

また、年齢を重ねると体の代謝機能や血管の状態などが老化し、薬の効きが悪く感じられるようになったり、これまでなかった副作用が表れたり、基準値まで下げるとかえって体調が悪くなるケースが多々あります。

杓子定規に標準治療や基準値に固執するのではなく、年齢的な変化や個人差などに柔軟に対応できる、豊富な経験知のある医者がいいでしょう。

かつてはこういった開業医がたくさんいましたが、1980年頃から臓器別診療が主流となり、患者の心や生活背景なども含めた全人的な診療ができる医者がずいぶん減ってしまいました。口コミで評判を見たり、診察で希望を口にしたときの反応をうかがったりして、あなたが信頼できると思える医者を探すしかありません。

■手術をゆだねる執刀医の条件

一方で、心臓病やがんなどで手術をする場合の執刀医は、やはり腕がいいか、高性能な機器を導入しているかがポイントです。

僕はある大きな有名病院で、週に一回だけ特別診療でやってくる大学教授に眼内レンズの手術をお願いしたことがありますが、残念ながら失敗でした。その結果生じた白内障の手術はレーシックで有名な大手クリニックにお願いしましたが、潤沢な資金で最新鋭の機器を導入しており、手術はみごと成功しました。

では小さなクリニックではダメかというと、一概にそうとはいえません。僕の心臓のステント治療は、医者が2〜3人しかいない心臓専門のクリニックで行いました。ステントはカテーテルで入れるもので比較的簡単な手技だと思われている面があり、大学病院に行くと若手医師が担当する。いわば、新人の練習台です。そういう点では、一定以上のキャリアを持った医者が開業しているクリニックのほうが、よほど安心でしょう。

大学病院というと、日本では「優秀な医者たちが、最新の治療法で難しい病気を治してくれるところ」と思われがちですが、大学病院とは医者の卵が研鑽を積む教育施設でもあります。また、大学病院が赤字だとか、もう10年も機械を変えていないという話も聞きます。「大学病院なら手術を任せて安心」という幻想は、捨てたほうが身のためです。

■大学病院はあくまで研究・教育機関

一般論としては、疾患がひとつだけの場合や重篤度が高い場合は、大学病院や総合病院、専門病院へ。臓器別診療で専門性が高く、先端機器や入院設備が整っているところが多いです。先端医療を提供し急性期医療を担っていることもあり、原則として初診のときにほかの病院からの紹介状が必要です。紹介状がないと追加料金を請求されます。

世の中には大学病院に非常な信頼を寄せ、「大学病院なら最高の医療を受けられる」「大学医学部の偉い教授に任せておけば安心」というイメージを持っている人が多いようですが、それは誤解です。

大学病院には臨床のほかに、研究と教育という側面があり、海外で大学病院というと、患者は研修医の練習台になったり、研究の対象になるというリスクを覚悟のうえで受診します。だから、一般の病院より医療費が安く設定してあることがほとんどです。

ところが日本では、なぜか大学医学部の教授に絶大な信頼が寄せられていて、東大医学部の教授なんていったら天才かのごとく尊敬されています。

しかし、偏差値の高い大学ほど、腕のいい医者が教授になれるとは限らないのです。なぜなら、そういった大学で教授になるには多くの研究論文を書かなければならず、臨床の腕を磨いているヒマなんてないからです。

一方で、それほど偏差値が高くない私立医科大学の附属病院には、腕のいい医者が多い傾向があります。病院に患者が集まらないと経営が成り立たないため、臨床技術の高い医者をどんどんスカウトしているからです。

とはいえ、どこの大学病院も教育施設には違いないので、ベテランのサポートはありつつも若手の医者が執刀する場合もあるということは、認識しておいたほうがいいでしょう。

■複数の不調や持病があるならクリニックで

臓器別診療の大学病院や総合病院では、「病気が治る」とはその臓器の状態が良くなることであり、治療が終わるころにはほかの臓器に支障を来していることもあります。たとえば、抗がん剤と外科手術でがんが寛解したとしても、体力を消耗して体全体に不調が表れることもあり得ます。

また、疾患が複数ある場合は、大学病院や総合病院はあまり向いていません。ひとつの病院の中でいくつもの診療科を渡り歩くことになり、それぞれに薬や検査があるので、多剤併用やエックス線検査、CT等の重複による医療被曝も心配です。

和田秀樹『健康診断の数値におびえず楽しく生きる50の心得』(オレンジページ)

こういった場合は、地域のクリニックがいいでしょう。日常のちょっとした不調や持病を、長期にわたって見守ってくれる「かかりつけ医」です。

ちゃんと選べば、高額な最先端機器などはないかもしれませんが、その分、ひとりひとりの患者に向き合い、個人差を考慮しながらその人にちょうどいい医療を提供してくれます。総合診療医であれば、さまざまな不調をワンストップで診てくれるので、薬や検査の重複を避けられて安心です。

ただし日本ではまだ数が少ないのが問題ですが。かかりつけ医では手に負えないような疾患が疑われる場合は、その分野に詳しい専門病院や大学病院、総合病院などを紹介してもらえます。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。幸齢党党首。立命館大学生命科学部特任教授、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、40年にわたり高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)