成果を出す部署と出せない部署の違いは、どんなところに表れるのか。経営コンサルタントの横山信弘さんは「自分たちでルールを定め、それを形骸化させずに継続できるチームは強い。会議ひとつとっても、生産性を増すためにルールは必要だ」という――。

※本稿は、横山信弘 『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■「忙しいから欠席」を決して許さない

組織の目標達成を阻む最大の敵は、「形骸化」です。作ったルールが守られず、いつの間にか忘れ去られる……そんな事態を防ぐための、組織運営の鉄則を紹介しましょう。

(1)会議のルール(準備と参加)

組織における進捗管理の要は「会議」です。しかし、多くの会議は「報告」だけで終わってしまい、改善につながりません。

生産的な会議にするために、次の2つを徹底してください。

・準備のルール

「会議中に資料を読み上げる」のは時間の無駄です。

現状データとギャップの確認は、会議前に終わらせておくこと。会議は「改善策を決める場」と割り切りましょう。そうでないと、本来の目的を見失ってしまいます。

・参加のルール

「忙しいから欠席します」を許してはいけません。

進捗会議は、チームの目標を達成する上で重要な取り組み。ここをおろそかにするメンバーがいると、組織全体の士気が下がります(もちろん、会議において正しく進捗管理できていることが前提です)。

ただし、会議時間を短くする工夫は必要です。「30分で終わる」「決めることだけ決める」という運営側のルールもセットで作りましょう。

■「自分でやったほうが早い」をなくす方法

(2)役割分担のルール

組織運営を効率化するには、適切な役割分担が欠かせません。しかし、現場ではよくこんな判断がなされがちです。

「慣れている自分でやったほうが早い」
「あの人はまだスキル不足だから任せられない」

あるいは逆に、本来自分がやるべきタスク処理を安易に誰かに振ってしまう。

こうした属人的な判断で動いていると、組織全体のパフォーマンスはいつまでたっても改善されません。特にマネジャーは、リソース(人・時間)の最も効率的な配分を考え、戦略的に役割を分けるルールを決めるべきです。

マラソンにおけるランナーと給水係のように、役割を明確にしましょう。

・プレイヤー:行動目標の達成(新規開拓など)に集中する
・サポーター:顧客対応や事務処理を補佐する

たとえば、新規開拓の目標を達成しなければならない営業担当者が、既存客からの問い合わせや在庫確認の電話対応に追われているとします。

アシスタントがいるにもかかわらず、「自分で対応したほうが早い」「お客様も私に頼みやすいから」と言って、仕事を抱え込んでしまう。

これでは、いつまで経ってもアシスタントは顧客対応に慣れません。何より営業担当者が「新規開拓のための行動」を実行できなくなります。

ここでマネジャーは、ルールとして役割分担を徹底させるのです。

「在庫確認と既存客の一次対応は、必ずアシスタントに任せる」

このように強制力を持って業務を切り分けます。

重要なのは、「誰が何をやるか」をその場の雰囲気や個人の裁量で決めず、ルールとして明文化しておくことです。

『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)より

■ペナルティとの連携が必須な理由

(3)評価とペナルティのルール

ルールには、必ず「評価(罰則)」との連携が必要です。厳しいようですが、守らなくても痛くも痒くもないルールは、形骸化しやすいのです。ルールとマナーは違うのです。

・データの入力期限を守らない場合は、評価をマイナスする
・目標達成プロセス(行動)を守っている場合は、加点評価する

このように、ルールを守ることが自分の評価に直結する仕組みを作りましょう。ある企業では、「自己評価シートの提出期限を守らない社員は、その期の評価対象から外す」という“例外を認めない”ルールを設けたところ、提出率が100%になりました。

「ルール違反=評価ダウン」という緊張感があって、はじめて組織の規律は保たれるのです。

『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)より

■トップが守らないルールは必ず崩れる

どれだけ優れたルールでも、リーダー自身が守らなければ定着しません。

・会議は30分と決めたのに、トップが延長する
・データ提出期限を破っても、幹部は注意されない
・役割分担を決めたのに、上司が横取りする

この状態では、現場は一瞬で見抜きます。「守らなくてもいいルールだ」と。

組織ルールの本質は、「平等な適用」にあります。例外が常態化した瞬間、規律は崩れます。

まず守るのは、部下ではありません。リーダー自身です。リーダーが徹底して守る、だから組織が動くのです。

さらに重要なのは、ルールを「作って終わり」にしないことです。実際に運用しながら、「本当に機能しているか」「現場に無理がないか」を定期的に確認し、必要に応じて修正していくことが欠かせません。

ルールとは組織を縛るためのものではなく、目標達成を加速させるための道具です。シンプルで守りやすく、継続できるルールこそが、チームを強くするのです。

■小さく始めて定期的に見直す

ルール作りで最も大切なこと。それは、「守れるルール」を作ることです。

どんなに理想的で立派なルールであっても、現場で運用できなければ意味がありません。現実的に、無理なく続けられるルールこそが、本当に「機能するルール」です。

ルール運用の鉄則は、「小さく始める」ことです。

最初から完璧を目指すのではなく、必要最小限のルールからスタートし、実際に運用しながら少しずつ精度を高めていくのです。「壁」がゼロではいけませんが、多すぎると窮屈な気分になっていきます。

そして、一度決めたルールは「絶対」ではありません。定期的に検証し、メンテナンスしていきましょう。

たとえば3か月ごとに、次のような問いを立ててみましょう。

「このルールは機能しているか?」
「改善すべき点はないか?」

こうして定期的に見直し、必要に応じて修正していくことが、「息の長いルール運用」につながります。

『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)より

■「守られないルール」は害悪でしかない

一方で、「ルールはあるが、ほとんど守られていない」という状態を放置するのはよくありません。鍵が壊れた「扉」がアチコチにあったら、無法状態です。

次のような悪循環が起こり、組織や個人の士気を下げてしまいます。

・仕組みはあるが、ほとんど機能していない
・会議はあるが、ほとんど目的を果たしていない
・ルールを守っている人が、報われない

このように、「形だけのルール」が存在することは、百害あって一利なし。守れないルールなら、廃止するか、守れるレベルまで下げるべきです。

横山信弘 『正しく立てて成果につなげる 目標達成の全スキル』(日本実業出版社)

ルールは、組織や自分を縛るためのものではありません。あくまで目標達成のための“道しるべ”です。その本来の目的を忘れずに、シンプルで実効性のあるルールを作っていきましょう。

さらに忘れてはならないのは、ルールは「育てるもの」だということです。

最初から完成形を作ろうとする必要はありません。運用してみて、はじめて見える課題もあります。

小さく試し、現場の声を聞きながら調整する。このサイクルを回すことで、ルールは現実に合った“生きた仕組み”へと成長していきます。

----------
横山 信弘(よこやま・のぶひろ)
経営コラムニスト
1969年、名古屋市生まれ。アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長。企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。15年間で3000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラム、昨今はYouTubeチャンネル「予材管理大学」を通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。メルマガ「草創花伝」は3.8万人超の企業経営者、管理者が購読する。著書に『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズのほか、『「空気」で人を動かす』などがあり、その多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。
----------

(経営コラムニスト 横山 信弘)