もう化石燃料に頼らなくてすむかも。画期的な技術が開発中
2024年6月2日の記事を編集して再掲載しています。
スイスのチューリッヒ工科大学で画期的な技術が開発されつつあります。
科学誌『Device』に掲載された論文によれば、地球に降り注ぐ太陽エネルギー135個分(*)を人工水晶に注ぎこんで、1000℃以上まで熱することに成功したそう。
なぜ画期的って、ガラス・鉄・セメント・セラミックなど、現代文明を支えているさまざまな資材を製造するのには1000℃以上の熱が必要なんです。しかし、これまでの技術では太陽熱を反射鏡などを使って集めたとしてもそこまで温度を上げられなかったため、モノをつくるための材料を得るにはどうしても化石燃料を燃やすしかありませんでした。
しかし、この新技術をもってなら、未来の産業プロセスをグリーンに変えていける可能性があります。はたして脱炭素化への大きな一歩となるでしょうか?
人工水晶を使った実験
今回の概念実証実験では、図のように円筒形の人工水晶が使われました。高温に熱されて輝く水晶の先端には同じ径を持つシリコンの円盤が取り付けられており、この部分が熱を吸収する仕組みとなっています。
いざ水晶の外側から、地球に降り注ぐ太陽エネルギー135個分と同等のエネルギーを放射したところ、水晶の表面は温度が450℃までしか上がらなかったのに対し、一番奥にあるシリコンの円盤は1050℃まで上がりました。
水晶という名のサーマルトラップ
水晶を使うことでなぜここまで熱を上げられたのでしょうか。
Deviceに掲載された論文によると、これには水晶・水などの半透明な物質が持つスペクトルと光学的な特徴が関係しているそうです。
じつは、水晶には可視放射線の減衰効果は低いものの、赤外線放射の吸収効果は高い…ようするに、可視光はほとんどスルーさせるけど熱された物体から放射される赤外線は取りこみやすい性質があるんですね。
今回の研究ではこの「サーマルトラップ効果(thermal trap effect)」を用いることにより、太陽熱を凝縮させてシリコン製の吸収体を1000℃以上にまで熱することに成功したというわけなんです。
太陽熱の効率的な使い方
これまでにも太陽光を使って熱をつくりだす試みは行われてきました。しかし、何千個もの反射鏡を使った太陽熱受熱器(solar receiver)だと、1000℃以上の熱エネルギーを効率的に伝達することは難しかったとプレスリリースは指摘しています。
また、サーマルトラップ効果を使った実験もすでに行なわれていましたが、いずれも170℃にまでしか温度を上げることができなかったとチューリッヒ工科大学のエミリアーノ・カサティ教授は説明しています。
カサティ教授は「我々の研究により、サーマルトラップ効果は低温度だけでなく1000℃以上の高温でも有効なことが実証されました。今後この技術が社会実装していける可能性を示すのにとても重要でした」とも話しています。
グリーンな熱エネルギーなるか?
車のエンジンから高層ビルまで。私たちの世界は鉄とガラスとセメントでできており、これらを溶かすには1000℃以上の熱エネルギーが必要です。
熱エネルギーは我々人類の存続に欠かせないもの。ならば太陽光はいつでもどこでも入手可能ですし、それを活用する技術を我々はすでに手にしています。
今後この技術を産業界に受け入れてもらえるためには、経済的実行可能性と大規模化の可能性とを実証していかなくてはなりません
とカサティ教授。
今後は技術のさらなる改良に向けて、異なる環境下で水晶のサーマルトラップ効果を計測したり、水晶以外の物質を使って実験を重ねていくそうです。
気候変動に立ち向かうためにはエネルギーの脱炭素化が不可欠だからこそ、今後の進展に期待がかかります。

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