雇用企業に直接連絡しないよう障害者に求める資料の記載=冨田大介撮影

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 障害者雇用ビジネスの業者を介して大手企業などに雇用された在宅勤務の障害者が実質的な仕事を与えられていなかった問題で、雇用を仲介した「サンクスラボ」(那覇市)が、欠勤などの場合に、雇用主の企業に直接連絡を取らないよう障害者に求めていたケースがあったことがわかった。

 一部の障害者は就労の「ルール」と捉え、自らの状況を雇用企業に伝えられなかったとみられる。

 サンクスラボは、自社が運営する就労支援の福祉事業所に在籍する障害者を企業に仲介するビジネスを展開している。読売新聞は、企業に雇われた在宅勤務の障害者にサンクスラボが示した「ラボ型就労されている方の在宅ルール」と称される資料を入手した。

 資料ではまず、勤務開始から退勤までの1日の流れを説明。オンラインの朝礼への参加を求め、無断欠勤があった場合は同社が雇用企業に報告することや、緊急連絡先への連絡の手順などを記している。

 続いて、欠勤や遅刻、早退などの報告について、同社の担当職員と障害者らの「共有グループ」にチャットで連絡するよう求め、下線を引いた赤字で、「企業様に直接連絡はしないでください。必ず職員から企業様に連絡をします」と記載していた。

 また、就労する障害者を「タレント」と呼び、「チャットツール、SNS等でのタレントさん同士の繋(つな)がりはNG」とし、同僚などにあたる他の障害者と連絡を取ることを禁じていた。この理由については「トラブルのもと」としていた。

 九州在住で精神障害のある50歳代男性は、2024年11月に仏高級ブランドの日本法人「ルイ・ヴィトンジャパン」(東京)に就職した際、サンクスラボの担当者から資料を受け取った。採用時にヴィトン社のオンライン面接を受けたものの、その後は資料通りヴィトン社には連絡せず、ユーチューブ動画を見てパソコン操作の「自己学習」を繰り返したという。

 男性は取材に「『ルール』がおかしいと指摘して目を付けられるのが嫌で、強く言えなかった。同僚に相談もできず孤独だった」と話した。契約途中の昨年8月にヴィトン社を退職し、「話を聞いてくれた訪問看護の人がいなければ、自分はどうなっていたか分からない」とも語った。

 サンクスラボは取材に「会社の方針として雇用企業様への直接連絡を一律に禁止した事実はございません」とした上で、「該当すると思われる文書は一部の個別対応の際に使用されたもので、現在は使用されていない」としている。

直接やり取りなし「不適切」…業界団体

 障害者雇用ビジネスの事業者でつくる業界団体「日本障害者雇用促進事業者協会」(東京)は、雇用企業と障害者の間で直接のやり取りがない事業形態は不適切だとして、会員向けに勉強会を開いたり、雇用主としての責任を果たすよう企業に求める啓発を実施したりしているという。

 サンクスラボも加盟しており、協会は取材に「仮に雇用企業との関係性が希薄なまま就労が続けられていたとすれば望ましい雇用とは言えず、重く受け止めている。結果として、真摯(しんし)に取り組んできた企業や業者への信頼を損なうもので、協会としても再発防止と信頼回復に向けた取り組みを進める」と説明した。

 サンクスラボは7日、自社のホームページで「当社のサービス運用の一部において改善が必要な点があったことは真摯に受け止めております。より適正な事業運営とサービス品質の向上に全社を挙げて尽力してまいります」などとするコメントを公表した。