三吉彩花(2025年)

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 若年層を中心に「ファッションの一部」として肯定的に受け止められることが増えたタトゥー。訪日外国人客には、カラフルなタトゥーを隠さない人も多く、日本社会でも目にする機会は確実に増えている。

【写真】タトゥー投稿に英文

 とはいえ否定的な反応を持つ人も少なくない。そんななか、モデルで俳優の三吉彩花が披露した背中のタトゥーにはポジティブな反応が目立った。臨床心理士の岡村美奈さんが、典型的な否定の声が少なかった理由について分析した。

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 モデルで俳優の三吉彩花さんが4月20日、自身のInstagramを更新。美しい背中に咲いた一輪の花のタトゥーを披露し、英語でその経緯を説明した。腰から背中の中央を通ってうなじへと伸びる茎の途中、肩甲骨のあたりで濃い青の花が咲いているデザインで、花は彼女の誕生花である”タチアオイ”だという。

 黒いドレスを身にまとい、フランスのハイジュエリーブランド「ブシュロン」のアイテムを身に着けてポーズをとる彼女。背骨の曲線に合わせて柔らかく花茎が線のようにしなる──。その背中はアートだった。同日、世界29地域で発行される女性ファッション雑誌『ハーパーズ バザー』の公式サイトで、彼女のインタビューも掲載された。

 このタトゥーは賛否どちらの意見も呼んだが、好意的な意見が多数を占めた。世界に目を向ければ、芸能人や有名人、アーティストにアスリートなどのタトゥーは、もはや珍しくない。ファッションとしてだけでなく、生き方や思想、個性につながるケースも多くなった。

自分らしく生きようという区切りや決意

「身体に墨を入れるという行為は同じでも、刺青とタトゥーではその意味はまったく違う」――過去にある暴力団の組長へ刺青の心理について取材した際、そんな言葉を聞いたことがある。

「刺青は秘するもので隠すもの、タトゥーは見せるもの」であり、「刺青はもう後戻りできないという覚悟の証だが、タトゥーはファッション感覚や自分らしく生きようという区切りや決意」だと彼は言った。確かに暴力団が入れる刺青は他者を恐怖させ、威圧する。”隠さねばならぬもの”だろう。

 しかしながら実際、三吉さんの場合、タトゥーは前を向いて生きていくための”決意の証”だ。6月の誕生日には30歳になり、今年は節目の年だという思いがある。

 写真とともに投稿された英語のメッセージで「30歳で人生の新しい章を始めようと思ったとき、タトゥーが浮かびました。自分に正直に生きるという決意の証です」と伝えている。背骨に沿ってまっすぐに伸びるタトゥーの線が、彼女の芯の強さや真っすぐな正直さを象徴しているようだ。

 そして、タトゥーについて「私のもう1つの側面であり、私の生き方を背後から支えてくれています」と続けた。

 さらに「私は背中を直接見ることはできません。でもそこは私の感情や記憶のすべてが宿っている場であり、身体の中心軸だと信じています」と述べ、「そこに私という花を咲かせるという思いを込めた」と思いを丁寧に説明した。

 幼い頃から芸能界で生きてきた彼女には、仕事や家族関係で様々な葛藤やストレスがあったようだが、そこから解放され、自分軸を大切に自分らしく生きることを選択したのだろう。

 タトゥー公開とともに投稿されたメッセージは内面の変化を告白したもので、個人的な思いは他人事として注目されないかもしれなかった。ところが、反響は大きかった。

私の新しい人生はここから始まります

 美しい写真に添えられた彼女の決断は、多くの人から好意的に受け止められた。確かに「勿体ない」「仕事の幅が狭くなるのでは」という声もネットには上がった。それを見越していたのだろう。『ハーパーズ バザー』のインタビューでは「所属事務所とは2〜3年かけて話し合いました」と熟考の末の決断だと述べていた。

 日本ではまだネガティブに捉えられることが少なくないタトゥーを入れたとしても、今の三吉さんならポジティブな反応のほうが上回ると見込んだのだろう。だからこそ、所属事務所はタトゥーを入れることと、世の中へタトゥーを披露することを受け入れた。

『ハーパーズ バザー』のインタビューで手に持っていたアイテムのひとつは、モダンなデザインと繊細な技術で知られる「ブシュロン」の「インパーマネンス コンポジション No5」アザミ。野生のアザミをモチーフにしたこのジュエリーは、歴史と革新を融合させてきたブシュロンが、ハイジュエリー制作に用いられたことがない素材を使うため、新技術を開発して作ったものだという。過去を受け止め新しい未来を切り開く、三吉さんの決意と重なって見える。

「私の新しい人生はここから始まります」という三吉さん。Instagramの写真に添えられた言葉は日本語ではなく英語。バイリンガルでも、大学で英語を専攻していたわけでもない三吉さんが、なぜすべてを英語で説明したのか。その意味するところは大きいと思う。

 タチアオイの咲く美しい背中とともに彼女は生き様を表現し、人々を魅了した。軸足を世界に移し、同じように多くの人を惹きつけていくのが楽しみだ。