【レビュー】サメが刻む、アナログの鼓動。オーテク「SHARK BURGER」で“世界一有名なサメ音楽”を鳴らす
オーディオテクニカの「SOUND BURGER(サウンドバーガー) 」といえば、1980年代に登場して話題を集めたポータブルレコードプレーヤー。どこにでも持ち運べるコンパクトなフォルムと、“レコードを挟んで再生する”という唯一無二のスタイルが特徴なこのアイテムが、2022年にBluetooth対応の新仕様となって劇的な復活を遂げ、アナログ再燃ブームの令和に再び脚光を浴びている。
そして今、この新世代のSOUND BURGERに、なんともエッジの効いた限定モデルが登場した。その名も「SHARK BURGER(シャークバーガー)」。宮城県気仙沼の伝統産業「サメ漁」とコラボレーションしたという、オーディオ機器としては異例のバックボーンを持つ1台である。
SHARK BURGERは、5月15日までMakuakeで先行販売されている。4月27日時点では購入総額は目標の2,153%を達成。一般販売時の価格は33,000円だが、5% OFFの31,350円で購入できるMakuake割のみ購入できる形で、残り44個と大盛況だ。
「SHARK BURGER」Makuakeプロジェクトページ
公式の「完成したSHARK BURGERを見て、開発チーム一同、ジョーズにできたと自負」しているという一文に、不覚にも持っていかれた
今回はこれを、同じオーディオテクニカのBluetooth機器と組み合わせて、最近ちょくちょく話題になる“レコードのワイヤレス再生”を楽しんでいきたい。加えて、せっかくなので“サメのプレーヤーでサメのレコードを聴く”というテーマでもお送りする。
……まあ要するに、聴いてみたかっただけです、このプレーヤーであの曲を!
気仙沼の海を感じる、こだわりの“サメ革”ディテール
まずはSHARK BURGERの佇まいをチェックしよう。先に言っておくと、機能的には2022年に復刻した通常のSOUND BURGERと変わらない。
改めましてSHARK BURGER。本体側面(この画像で言うと右下)にBluetoothペアリングボタンを搭載する
手軽に持ち運べるポータブルタイプのレコードプレーヤーで、Bluetooth音声出力に対応し、レコードの音をワイヤレスでスピーカーやヘッドフォン/イヤフォンで鳴らせるものだ。
本体はバッテリー駆動で、電源ボタンを入れたらすぐに使い始められる。33 1/3と45回転に対応
では、単なるデザインコラボモデルかというと、それだけでは終わらないきちんとしたテーマもある。
特徴となるのは、背面のハンドル部分にあしらわれた気仙沼産のサメ革。これ、水揚げされたサメの皮を有効活用したアップサイクル素材となっている。
サメ革ハンドル(注:筆者が借りたのはサンプル機のため、製品版と比べて厚みが数mm薄く、若干光沢が強い仕上げになっているとのこと)
というのも、気仙沼港で水揚げされるサメは、加工食品、美容オイル、医療品、フカヒレなど、ほぼすべての部位が活用される一方で、「サメ皮」だけは用途が限られ、有効活用が進んでいなかったのだとか。「ならば使おう、SOUND BURGERに」という気合いが感じられる仕様というか、さりげなくSDGs的な側面を持つプロダクトなのだ。これまで捨てられていた素材に、新しい“音を鳴らす役割”が与えられたと考えるとまた意義深い。
なお、このサメ革ハンドルは天然素材ゆえ、ひとつひとつ模様や質感が異なったものとなるそう。実際、我が家で借りたそれにも、手に馴染む独特の凹凸と艶があり、どことなく野生の力強さが宿っていた。
サメ革ハンドルに手をかけて、気軽に持ち運べる
捕獲海域の座標が刻まれた金属プレートもあしらわれるなど、サメ漁のトレーサビリティを意識した本物志向
そのほかも外観は遊び心満載で、レコードを挟む上蓋には、サメの鋭い歯をイメージしたパーツが配置されている。“挟む”というSOUND BURGERシリーズならではの設計とシンクロし、サメの上顎を想起させる秀逸なデザインだ。
おそらく機能的には何もないが、気分を高めてくれるという意味で大切なサメの歯パーツ
また、スリップマットには気仙沼の生態系が描かれていて、レコードを載せようとするたびに“サメを頂点とする食物連鎖”を滲ませてくる。
ほのぼのテイストで描かれた気仙沼湾の豊かな生態系。これが野生の現実
さらに、付属するオーディオテクニカ製レコード針にはサメ型カバーが装備されている。再生時には、まるでサメがレコード盤の上を泳いでいるように見えるのもニクい演出である。
小さいサメが、レコード盤の上を滑るように泳ぐ感じが可愛い。付属カートリッジはオーディオテクニカ「ATN3600LC」
で、このSHARK BURGERで何のレコードを鳴らすかという話だが……そう、「サメ」に「音楽」ときたら「ジョン・ウィリアムズ」である。
映画「ジョーズ」で世界共通になった“サメが近づく音”
1975年に公開された映画「JAWS/ジョーズ」は、言わずと知れた動物パニック映画の代名詞的存在だ。スティーヴン・スピルバーグの代表作かつ出世作であり、映像の表現方法から音楽演出から、さまざまな面で映画史のひとつの分岐点とされる。
約50年前の映画だが、今観ても傑作としての魅力は健在。そしてやはり、ジョン・ウィリアムズの手がけたBGMは超印象的だ。
もうとにかく、あの“デンデンデンデン……”というたった2音の反復で、“サメが近づく音”をデザインしたのがスゴい。「この2音が反復したら、画面に映っていなくてもサメがいる」と視聴者の共通認識になる設計が神すぎる。
人類を襲うヤバい生き物に関連するサウンドとしては、有名な映画「ゴジラ」シリーズのテーマ(伊福部昭作)もそうだが、ゴジラが架空の怪獣であるのに対し、サメは実在する生き物なので、実際に海でコレを流したらちょっと怒られる可能性があるという現実も含めて、芸術点が高い。
ついでに、動物パニック映画のこだわりサウンドという観点でいうと、本作から遡ること12年前に制作されたアルフレッド・ヒッチコック「鳥」(1963年)もおなじみである。狂気じみた鳥の騒ぐ音を再現するため、当時最先端のドイツの電子楽器を使用したという話が有名だ。
なお、「鳥」は鳥そのものが発生させる音を追求したのに対し、「ジョーズ」はサメ本体の音ではなく、あくまでもBGM演出としてのサウンドを確立しているのもポイント。「ゴジラ」もそうだが、今観てもそれぞれにスゴくて、映画の音楽って本当に素晴らしいもんですね……と水野晴郎先生ばりに感動する。
そんなわけで、この「ジョーズ」のサントラLP(2015年再発盤「Jaws」Label : Geffen Records/Barcode : 602547138415)をSHARK BURGERで再生していこう。これ以上ないマッチングではなかろうか。
いざ、サメのプレーヤーでサメのレコードをワイヤレス再生
今回は、最近よく話題になる“レコードのワイヤレス再生”を体験したかったので、同じオーディオテクニカのBluetooth対応アクティブスピーカー「AT-SP3X」と、Bluetoothヘッドフォン「ATH-S300BT」も借りて組み合わせた。
一般的にレコードを聴くといえば、重厚なアンプに太いケーブル、がっしりしたスピーカーが鎮座する聖域が必要というイメージだが、SHARK BURGERはBluetoothペアリングボタンを押すだけで、これらのワイヤレス機器と繋がって音を鳴らすことができる。
しかもSHARK BURGER自体はバッテリー駆動(USB-C充電)なので、超身軽。Bluetoothの通信範囲であればどこに置いても良いというのは、手軽に持ち運べる“ポータブル仕様”と非常に合っている。このカジュアル環境で成り立つのが、今どきのレコード再生の面白さだろう。
さっそくターンテーブルに「ジョーズ」のLPを載せ、針を落とし、SHARK BURGERの上顎(上蓋)をカチッと下ろす。サメがレコード盤の上を泳ぎ始めると、AT-SP3Xのユニットから、“デーン……”とじんわり滲むような低音パートが響き出した。低音が厚い。
例の“デンデンデンデン……”が刻まれてくると、こんなに簡略化した環境かつBluetooth経由であっても(コーデックはSBC)、アナログっぽい“音の重なり感”や“空気感”がしっかりあって、ヤツが近づいてくる臨場感が漂う。
AT-SP3Xは、外形寸法125×136×200mmのコンパクトサイズながら30Wの出力を備えたブックシェルフ型アクティブスピーカー
この表現は、AT-SP3X自体が、オーディオテクニカのアナログ製品に最適化したチューニングを施したスピーカーであることも大きいのだろう。オーケストラ楽器が空気を震わせ、“空間に染み込むアナログ感”をちゃんと享受できるのがすごく良い。
そして何より大切なのは、この音楽ならではの高揚感を得られたこと。深海から巨大な捕食者がじわじわ近づいてくる恐怖を聴覚だけで叩き込んでくるこのテーマを聴くと、むしろテンションが上がってしまうわけで、最終的な感想は「サメ最高」だった。
続いてBluetoothヘッドフォンのATH-S300BTで聴いてみると、スピーカー再生とはまた違った没入感だ。上述のアナログ的な“空間への染み込み感”が、頭の内側で広がっていく。これはこれで楽しくて、結構クセになる。低域の厚みや中高域の豊かさも感じられ、あの“デンデンデンデンデン……”が耳元でダイナミックに躍動する。
ATH-S300BTは、老舗の音響技術とノイズキャンセリング機能を搭載しながら、1万円台で手に入る高コスパなヘッドフォン
最近この仕事をしていて、「レコードのBluetoothヘッドフォン再生を体験してみてほしい」と勧められることがちょくちょくあったのだが、なるほどこういう魅力があるのかと実感した。
あと、何気にATH-S300BT自体が普通に1万円台のヘッドフォンとして、コスパの高い優秀モデルだったのも大きいだろう。帯域バランスが良く、音源の持つ魅力をナチュラルに表現する。今回のような環境で使った場合、“レコードならではの聴き心地”もしっかり実直に表現される。最大90時間のロングライフバッテリーを誇るのもスゴい。
“挟んで、飛ばす”が、レコードを日常にする
レコードという、元来は少し手間のかかるアナログメディアを、“ポータブル×Bluetooth”という身近な技術で解放するSOUND BURGERシリーズ。その絶妙なバランス感は、レコード再生という行為を、重厚な趣味から日常の楽しいイベントに変える。
今回取り上げた限定モデルのSHARK BURGERの場合、サメ革のハンドルを掴んで持ち運ぶたびに、気仙沼の海に思いを馳せられるのがまた一興。回るレコード盤とそこを泳ぐサメのシルエットを眺める時間は、音楽配信サービスでは味わえない贅沢な体験だった。
限定モデルという希少性もさることながら、“今の時代のカジュアルなアナログスタイル”を象徴する1台と言えるだろう。
また、レコードのBluetooth再生環境を実現するとき、アナログサウンドの再現性や動作の安定性などのポイントで、適切な機材を選ぶことが重要になる。その点で言うと、オーディオテクニカが提案するAT-SP3XやATH-S300BTとの組み合わせは、手軽かつコスパも高く、入門向けとして非常に有力な選択肢だと思う。
もしあなたが、レコード再生という大海原へ飛び込むきっかけを探しているなら、 SHARK BURGERを軸にしたこのカジュアルなシステムは、強力な羅針盤になってくれるはずだ。
