「納豆」が意識障害を招く? 肝臓が弱い人が知っておくべきタンパク質の罠【医師解説】

納豆に含まれる良質な植物性タンパク質は、多くの方に有益です。しかし、肝臓の機能が著しく低下している方にとっては、タンパク質の摂取そのものが身体の負担になる場合があります。肝臓疾患と納豆の関係、そして薬の代謝への影響についてわかりやすく解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

納豆のタンパク質と薬の代謝:肝臓への影響を考える

納豆は1パックあたり約8gの良質な植物性タンパク質を含んでおり、貴重なタンパク源です。しかし、特定の疾患、特に肝臓の機能が著しく低下している場合、タンパク質の摂取そのものが身体の負担となることがあります。また、多くの薬は肝臓で代謝(分解・処理)されるため、肝機能の状態や食事内容が薬の効果に影響を及ぼす可能性についても理解しておくことが大切です。

肝臓疾患とタンパク質摂取の関係

肝臓の機能が著しく低下した状態である肝硬変の末期などでは、食事から摂取したタンパク質の代謝が正常に行われなくなることがあります。タンパク質が体内で分解される過程で生じるアンモニアは、通常であれば健康な肝臓で無害な尿素に変換され、尿として排泄されます。しかし、肝機能が低下しているとこの処理能力が追いつかず、血中のアンモニア濃度が上昇します。高アンモニア血症は、脳に悪影響を及ぼし、「肝性脳症」と呼ばれる意識障害や異常行動を引き起こす原因となります。

この肝性脳症を予防・治療するため、重篤な肝疾患を抱えている方は、タンパク質の摂取量を厳密に制限するよう指導されることがあります。納豆は健康的で良質なタンパク質源ではありますが、このような病状の方々にとっては、摂取量が厳しく管理されるべき食品の一つとなります。食事療法の内容は病状によって大きく異なるため、必ず専門医の指示に従ってください。

肝臓で代謝される薬と食品の相互作用

肝臓には「薬物代謝酵素(チトクロームP450など)」と呼ばれる、体内に取り込まれた薬を分解・無毒化して排泄しやすくする酵素が多数存在します。食品に含まれる特定の成分が、この酵素の働きを強めたり弱めたりすることで、薬の効果が予期せず増強されたり、減弱されたりすることがあります(薬物相互作用)。納豆の成分がこれらの酵素に直接的に大きな影響を与えるという明確なデータは限られていますが、高タンパク食や栄養状態全体が薬の代謝に影響を及ぼすことは広く知られています。

特に、高齢などで複数の薬を同時に服用している方(ポリファーマシー)は、食事と薬の相互作用が起こるリスクが高まります。肝臓や腎臓の機能が低下している場合はなおさらです。薬の種類や量が多い方は、かかりつけの薬剤師に相談し、「お薬手帳」を活用して服用しているすべての薬(市販薬やサプリメントを含む)の情報を一元管理し、定期的に相互作用のチェックを受けることが安全な薬物治療のために非常に有効です。

参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」

農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」