【新刊】子供の頃に読んだ魔法小説に似たような、月明かりの下で見る夢に似たような、温かみのある幻想短編集 吉田篤弘氏『月とコーヒー ノクターン』など4冊
新年度の疲れを癒してくれるゴールデンウィーク。ゆっくりと読書をして、頭の中をリフレッシュしてみるのはいかがでしょうか。おすすめの新刊4冊を紹介します。
『月とコーヒー ノクターン』吉田篤弘/徳間書店/2090円
カズオ・イシグロにも『ノクターン(ズ)』という題名の短編集があった。あちらは音楽繋がり。本書は月やコーヒー繋がり。子供の頃に読んだ魔法小説に似たような、月明かりの下で見る夢に似たような、温かみのある幻想短編集だ。独立しながら響き合う編があるのも楽しい。旅する女性の壊れたラジオを修理する喫茶店主の諭しにクス
ッ。ふふ、野菜スープで直すんですね。
『君の不在の夜を歩く』窪美澄/新潮社/1980円
人生にリセットなんてない。現在は過去の上にしかないと、読みながら改めて思う。高校の仲良し男女5人組。美人で性格もよく成績もよかった菜乃子、菜乃子と夫婦になる達也、辛辣だが思いやりのある倫子、沙耶と、彼女がずっと想い続けた健太。ある者の自死をきっかけに、仲間それぞれが別の風景の中を歩き始める。話者を変えた4話を締めくくる5話目が圧巻。救われる。
『サーカスの子』稲泉連/講談社文庫/1012円
炊事係になったシングルマザーの母と共に、4歳から1年間キグレサーカスで旅暮らしをした著者。奇跡のような再会を機に、当時の芸人さん達を訪ね歩く。子供の教育問題などさまざまな理由で退団した人々が辿ったその後とは? 母(久田恵氏)と著者は大宅壮一ノンフィクション賞史上、唯一の親子受賞者。表現というものの故郷がサーカスだったというのに"詩"を感じる。
『ビギナーズ家族』小佐野彈/小学館文庫/891円
物語を面白くするなら"主人公に圧をかけまくれ"という金言通り、ほぼ著者の分身であるこの物語の主人公・秋にかかる圧はハンパない。有名セレブ一家の御曹司で、(慶應義塾がモデルの)一貫校出身で、ゲイを公言し、迎えた養子を同じ軌道に乗せようと奔走する。内面的にも対外的にも圧だらけ。途中秋は錯乱するが読後は快晴。内幕を見せるお受験小説としても刺激的だ。
文/温水ゆかり
