【女性更年期】ホットフラッシュ・倦怠感・イライラ…“不機嫌な症状”を改善する15の漢方
女性の「更年期」は、一般的に閉経をはさんだ前後10年間がこれにあたり、ホットフラッシュ、ほてり、イライラ、不眠、倦怠感、頭痛などの多様な「更年期症状」があらわれます。原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少によるもので、日常生活に支障をきたすほどの重い場合を「更年期障害」といいます。
漢方では、加齢に伴って女性ホルモンが急激に減少することにより、身体の機能が低下する「腎虚」をベースに、自律神経の乱れによる、血の滞りを中心として、気や水のバランスが保てなくなり生じると考えます。
突然起こる顔やからだの熱感や汗(ホットフラッシュ)、動悸、頭のふらつきなどは気が逆に突きあがることで起こります。下腹部痛や手足の冷えは血の滞り、むくみ、めまい、頭痛は水の代謝障害が原因と考えます。
また最近は30代後半くらいからストレス、食生活の乱れ、生活の不摂生、無理なダイエットなどにより老化が早まり、女性ホルモンのバランスが乱れ更年期と同じような症状がみられることもあります。
生活習慣の見直しと共に、不調の原因からアプローチする漢方薬を見つけて、更年期を上手に乗り越えてその後の人生を健康で実りあるものにしましょう。
(「腎虚」:生命エネルギーを司る腎の働きが低下するためにのぼせ、冷え、腰痛、耳鳴り、疲労感、肌の乾燥、白髪・脱毛、夜間尿、物忘れなどの老化現象が出やすくなること。)
気逆タイプ――ホットフラッシュとのぼせ
【特徴】通常「気」は、上から下に流れますが、女性ホルモンの減少による「腎虚」により上半身に逆流。自律神経の流れが乱れることにより起こる症状
【主な症状】発作的な熱感を伴うホットフラッシュ、のぼせ、冷えのぼせ(熱感と寒気の往来)、イライラ、動悸など
加味逍遥散(カミショウヨウサン)
【主な症状】上半身がのぼせやすく、頭痛、イライラや不安などの神経症状がある、肩こり、動悸、不眠、便秘など症状が日々変化しやすい
【効果】気の巡りを整え、熱を冷ましながら、水毒を解消して様々な症状を改善します。
【成分の効能】柴胡(サイコ)と薄荷(ハッカ)で気をゆるめてリラックスさせながら、当帰(トウキ)でからだを温め、血の巡りを促進して気血を補い、さらに白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)で胃腸の機能を立て直し、多くの症状を改善します。
女神散(ニョシンサン)
【主な症状】比較的体力があり、イライラ、不眠、のぼせ、めまい、不安感
名前の由来は、女性に神効(神がかり的なほどによく効くこと)がある散剤です。
【効果】血の巡りを整え、頭部にあがった熱(気の上衝)を鎮めてのぼせ、めまい、不安感を和らげます。
【成分の効能】当帰、川芎(センキュウ)で血を補い、香附子(コウブシ)、木香(モッコウ)、檳榔子(ビンロウジ)、丁字(チョウジ)で気の巡りを整え、黄連(オウレン)、黄芩(オウゴン)が熱を冷まします。
抑肝散(ヨクカンサン)
【主な症状】ストレスによるイライラ、不眠、夢が多い、神経過敏、落ち着かない、
【効果】肝の高ぶりを整え、筋肉の緊張を緩め、心の安定を図ります。
小児の疳の虫、夜泣きにも用います。
【成分の効能】釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡で神経の興奮を鎮め、当帰と川芎で血を補うことで巡りを改善、白朮、茯苓、甘草で胃腸を整え、水分代謝を促します。
気虚タイプ――倦怠感、脱力、無気力
【特徴】体質的に胃腸が虚弱な人が過労やストレス、緊張により、女性ホルモンが失調し、気(エネルギー)の巡りが悪くなるために起こります。
【主な症状】倦怠感、脱力、無気力、憂うつ、食欲不振、汗が多い、動悸・息切れ、頭のふらつき、軟便傾向、からだの冷え、風邪ひきやすい
補中益気湯(ホチュウエキキトウ)
【主な症状】食欲不振、気力がない、顔色が蒼白い、手足に力が入らない、(寝)汗が多い、低血圧傾向、胃下垂
【効果】生命活動のエネルギーとなる気を生み出すことで元気を養い、胃腸の働きを改善して症状を改善します。病後の衰弱や風邪、感染症が長引いた時にも用います。
【成分の効能】人参(ニンジン)、白朮、甘草、陳皮(チンピ)、生姜(ショウキョウ)が気を補いながら胃腸の働きをサポート、柴胡と升麻(ショウマ)で気を全身に巡らせ落ち込んだ気を引き上げます。当帰は血を補い栄養を全身に運びます。
帰脾湯(キヒトウ)
【主な症状】心身が衰弱し、疲れやすい、こころに不安を感じる、食欲不振、不正出血、動悸、不眠、夢が多い、貧血傾向
【効果】胃腸の機能を立て直し、血を補うことで心とからだに栄養を届けることで症状を改善します。
【成分の効能】胃腸を元気に整える四君子湯をベースに当帰、竜眼肉(リュウガンニク)、酸棗仁(サンソウニン)、遠志(オンジ)で血を補いながら心を落ち着かせ症状を改善します。
十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)
【主な症状】体力が低下して疲れやすい、食欲不振、貧血傾向、めまい、動悸、不正出血、寝汗、皮膚の乾燥
【効能】失われた気と血を補いながら、からだ全体を立て直す処方です。
【成分の効能】気を補う四君子湯で胃腸の機能を高め、血を補う四物湯で血の生成が整い、さらに黄耆(オウギ)を加えることで回復力を高め、桂枝(ケイシ)で全身を温めて巡りを整えて衰弱したからだを改善します。
水毒タイプ――からだが重くむくみやすい
【特徴】水分代謝が滞り体内に余分な水分が溜まることで、様々な症状が起こります。
【主な症状】からだが重くむくみやすい、冷えを伴う頭痛、めまい、立ちくらみ、尿トラブル
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)
【主な症状】比較的体力が弱い、冷え性、むくみ、頭痛、動悸、めまい・ふらつき、肩こり、貧血傾向
【効果】血を補い、巡りを整えることで冷えを解消し、水分の滞りを回復させます。女性の「聖薬」と言われ更年期障害のみならず月経トラブル、不妊症にも用います。
【成分の効能】当帰、芍薬(シャクヤク)で血の質と量を確保し、「血中の気薬」といわれる川芎は血のパワーを高め、茯苓、沢瀉(タクシャ)で水の停滞をさばきます。
苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)
【主な症状】比較的胃が弱い、たちくらみ、ふらつき、頭重感、のぼせ、頭痛、動悸
【効果】消化機能が冷えてうまく働かず、胃に水が溜まり、気の巡りも悪くなるために起こります。胃の中の水を尿に排泄し、のぼった気を下に降ろします。
【成分の効能】茯苓と白朮で消化機能を向上させることで水の偏りを整え、桂枝と甘草で温めて気を巡らせ。上った気を下へ降ろします。
瘀血タイプ――下腹部の痛みや膨満感、くま・あざができやすい
【特徴】女性は月経、妊娠、出産の繰り返しにより徐々に骨盤内に瘀血(血の滞り)を生じます。また偏った食生活や運動不足なども一因となります。からだに必要な栄養素が行きわたらず自律神経の失調が起こりやすくなります。
【主な症状】下腹部の痛みや膨満感、頭痛・腰痛、肩こり、皮膚トラブル、顔色が暗い、くま・あざができやすい
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)
【主な症状】体力は中等度、顔はのぼせ足は冷える、頭痛、肩こり・腰痛、月経痛、月経不順、あざ・くまができやすい
【効果】滞った血の巡りをよくする代表処方で、気や水の巡りも調えます。打撲症にもよく用います。
【成分の効能】桃仁(トウニン)、牡丹皮(ボタンピ)は協力して血の滞りを改善し、桂枝は気を巡らせながらからだを温め、芍薬、茯苓は水分代謝を整えます。
桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)
【主な症状】体力は充実している、便秘傾向、のぼせ・イライラなどの精神不安、月経不順、月経痛、頭痛、腰痛、肩こり、目の充血、顔色はやや赤い、足は冷えていることがある
【効果】血を巡らせながら、余分な熱をさまし便通を整えます。
【成分の効能】桃仁と桂枝で下半身の血の滞りを改善し、大黄(ダイオウ)と芒硝(ボウショウ)で腸を潤わせながら溜まった熱をおろして便通を整えます。
血虚タイプ――皮膚の乾燥、髪のパサつき
【特徴】女性ホルモンの低下により、からだに栄養素やうるおいを運ぶ「血」が不足することが主な原因ですが、血は「肝」で生成するため、肝の機能低下による自律神経にも影響を及ぼします。
【主な症状】気力低下、頭がぼーっとする、冷え、不眠、動悸、貧血、めまい、皮膚の乾燥、髪のパサつき、爪が割れやすい、目の疲れ、立ちくらみ
温経湯(ウンケイトウ)
【主な症状】足腰に冷えや痛み、手掌のほてり、湿疹、手荒れ、不正出血、唇・皮膚の乾燥、不眠
【効果】血を補いながら巡らせ、水の滞りも整えることでからだ全体が温まり、ホルモンバランスを調えます。
【成分の効能】桂枝と呉茱萸(ゴシュユ)でからだを温ため冷えを散らし、当帰、川芎、芍薬で血を補い、天然のコラーゲンである阿膠(アキョウ)が皮膚などの潤いを高めます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)
【主な症状】手足、特に下半身の冷えが辛い、寒さや冷えで症状が強くなる月経痛・頭痛・腹痛、しもやけ、
【効果】からだの深部から温めることで血の質と量を高めて症状を改善します。
【成分の効能】当帰と芍薬で血管を拡げて温めることで抹消の循環を改善し、血の流れをよくしながら、からだを芯から温める細辛(サイシン)、呉茱萸、桂枝を配合して症状を改善します。
腎虚タイプ――足腰のだるさ、目のかすみ
【特徴】加齢や慢性的な疲労による体調不良などにより、腎に蓄えられているパワーが低下し卵巣の機能が衰えることが原因となります。
【主な症状】めまい、ふらつき、のぼせ、疲労感、イライラ、足腰のだるさ、目のかすみ、髪質の低下、尿トラブル
六味丸(ロクミガン)
【主な症状】疲れやすい、口の渇き、のぼせ、手足のほてり、皮膚の乾燥、耳鳴り、頭のふらつき・頭重、視力減退、尿トラブル
【効果】苦味、鹹味、酸味、辛味、甘味、淡味の六つの生薬で腎のパワーを高め、滋養強壮効果を発揮することで症状を改善します。小児の発育不全や夜尿症にも用います。
【成分の効能】地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)は加齢に伴い低下した肝腎や胃腸の働きを補い、牡丹皮、茯苓、沢瀉は衰えた水分代謝を補い余分な熱をさましバランスを整えます。
八味地黄丸(ハチミジオウガン)
【主な症状】疲れやすい・脱力感、寒がり、手足の冷え、ふらつき、倦怠感、むくみ、足腰がだるい、尿トラブル、目のかすみ
【効果】六味丸に腎を温める効果が加わることで基礎代謝が高まりからだ全体が温まります。
【成分の効能】六味丸に桂枝、附子(ブシ)が加わることで、主に下半身を温めて代謝を高めます。別名「腎気丸」といわれ、腎のパワーを補う代表処方です。
清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
【主な症状】倦怠感、胃腸が弱い、緊張やストレスでイライラ・不安、胸苦しい、不眠、膀胱炎・排尿痛、頻尿、帯下、口や舌の乾き
【効果】胃の働きを活発に整え、余分な水分をさばきながら、心の熱をさまして精神を安定させる効果です。
【成分の効能】連肉(レンニク)、麦門冬(バクモンドウ)、黄芩が心を安定させる働きを発揮することでイライラや不眠を改善し、さらに茯苓、車前子(シャゼンシ)が余分な水分を排出して症状を改善します。
【ワンポイントアドバイス】
適度な運動:ヨガ、ストレッチ、ウオーキング
■女性ホルモンに似た働きの栄養素や自律神経を整える食材の摂取
・豆腐、納豆、みそ、豆乳、緑黄色野菜、ナッツ類、乳製品、小魚、赤身肉・魚・卵などの良質なたんぱく質、
・質の高い睡眠
・規則正しい生活習慣への改善
・趣味やリフレッシュの時間
次回は仮題「がん治療をサポートする漢方薬」についての漢方薬を解説します。
