電力自由化から10年……再エネは伸び悩み、ゆがんだ電力システムは維持されたまま
この4月、電力自由化から10年を迎えた。先週、パワーシフト・キャンペーン運営委員会や日本消費者連盟などの主催で、この10年を振り返るシンポジウムが行われた。
電力自由化は簡単に言うと、家庭や商店でも電力会社を自由に選べるようになった制度だ。それまでは地域の電力会社(東京電力や関西電力など)が独占していたが、新電力の参入により、ガスや通信とのセット割引など、安くてお得なプランを選べるようになった。
東日本大震災と福島第一原発事故をきっかけに、原発や火力のような「大規模集中型」から再生可能エネルギー(再エネ)のような「分散型」のエネルギーシステムに変えていこうという国民的議論があった。自然災害の多い日本にはリスクヘッジの視点からそれが適しているからだ。
例えば、新潟県の柏崎刈羽で作った電気を送電線で東京まで運んでくるというのはあまりにもムダが多くリスクも高い。電気も地産地消の方がコスパはいい。
さて、10年間で新電力のシェアは2割を超え、再エネも増えていった。太陽光パネルもリチウムイオン蓄電池もコストが10分の1になった。ただ、10年前は蓄電池の世界シェアでパナソニックがトップだったが、今は中国メーカーに奪われてしまった。
経産省、FIT制度設計でミス
再エネの普及と新電力の広がりに、2012年7月に始まったFIT制度(固定価格買取制度)が貢献したのは間違いないが、経済産業省はこのFITの制度設計で大きなミスをした。
FITは、再エネを電力会社が一定期間、固定価格で買い取ることを国が保証する制度だが、住宅用(10年)や事業用(20年)と設定した。
そのため、発電コストは下がっても買い取り価格だけが維持されているので、投機的な未稼働ゾンビ会社とメガソーラー乱開発を生み出し、再エネ政策全体に対する不信感を作る根本原因になった。
そして、2020年4月には電力自由化の肝とも言うべき「発送電分離」が行われたが、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長はこれを「なんちゃって発送電分離」と厳しく批判する。
発送電分離とは、電気を「作る(発電)」事業と「送る(送配電)」事業を別々の会社に切り分ける制度だ。例えば、東電グループで火力発電所を抱えているのは「東京電力フュエル&パワー」で、そこで作られた電気を各家庭に送配電しているのは「東京電力パワーグリッド」である。
海外では送配電会社は完全に独立した会社で公平中立な立場だが、日本は旧大手電力の傘下にあるため、さまざまな不正や問題が起きている。例えば、九州電力送配電では再エネの「出力抑制」が行われている。再エネの出力は季節や天候に左右されるため、電気が余分に“作られすぎる”と捨てられてしまう。
新電力は再エネの会社が圧倒的に多く、結果として新電力が排除されている形になる。燃料費ゼロのクリーン電力を大量に捨て、高コストな火力が稼働し、まったく出力を調整しない原子力が最優先されるシステムだ。これは送配電網が旧大手電力の子会社であることによる弊害だ。
米・イスラエルのイラン攻撃に端を発した中東危機が続いているが、1973年の第一次石油危機で日本が学んだことは、化石燃料依存を減らすことだったはずだ。燃料費ゼロで発電するのは太陽光や風力など再エネだけであることを今一度思い起こすべきである。
文/横山渉 内外タイムス
