「成果報酬を全従業員に1500万円」驚異のインセンティブ給を支払うハイテク企業と若者の長い氷河期という韓国経済の光と闇

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「巨人サムソン」を超えた

最近、韓国のインターネットコミュニティや会社員の間で最大の話題となっているのは、断トツでSKハイニックスの成果給(インセンティブ)だ。世界的なAIブームにより空前絶後の好況を迎えた半導体専門企業のSKハイニックスは、今年2月、基本給の約3000%(年収の約1.5倍)に達するこれまででも最大級の成果給を支給した。記事によると、3万人に達する全従業員に対し、平均1億4000万ウォン(約1500万円)の成果給が支払われたという。驚くにはまだ早い。2026年には6億ウォン、2027年には10億ウォンを超える成果給が出るという見通しまで提示され、この破格の報酬を巡って甲論乙駁が繰り広げられている。

SKハイニックス(以下、ハイニックス)はSKグループ傘下のメモリ半導体専門企業で、サムスン電子と共に韓国のITを象徴する双璧だ。サムスン電子より約10年遅い1983年に半導体生産に乗り出したハイニックスは、数十年にわたり「万年2位」というレッテルを貼られていた。しかし、新型コロナパンデミック以降、世界を襲ったAIブームはハイニックスに巨大な逆転のチャンスをもたらした。同社のHBM(高帯域幅メモリ)技術が「AIの巨人」エヌビディア(NVIDIA)に独占的に採用され、状況が完全にひっくり返ったのだ。サムスン電子がファウンドリや家電など多角的な事業に注力する間、ハイニックスはHBMに「オールイン」する戦略でAI時代の扉をいち早く開いた。

ついに2025年、ハイニックスは営業利益約47兆ウォンを記録し、創立以来初めてサムスン電子の半導体部門を追い抜いた。10年遅れて出発した追撃者が、ついに「巨人」サムスンを超えた歴史的な瞬間だった。ハイニックスはこの歴史的な成果を社員と共有するため、成果給の上限撤廃を断行した。徹底した「売り手市場」である半導体人材採用市場において、優秀な人材を死守し核心戦力を確保するため、報酬を極大化したのだ。以前はどんなに業績が良くても基本給の1000%(年収の約50%)までとしていた成果給の「蓋」を果敢に取り払い、「営業利益の10%」を財源として社員に分配することを約束した。これが年収の1.5倍という伝説的な成果給へと繋がった。

「毎年宝くじに当たっているようだ」

グローバル投資銀行のマッコーリー証券は、半導体スーパーサイクルに乗ったハイニックスの今後の成果給について、さらに破格の予測を出している。同社の展望によれば、ハイニックスは2026年に256兆ウォン、2027年には447兆ウォンの営業利益を上げ、その10%を原資とした場合、1人あたりの成果給は2026年に約6億ウォン、2027年には約13億ウォン(約1億4000万円)に達するという計算になる。

この予測が、現在、韓国の会社員たちの間で最もホットな話題となっている。会社員向けのコミュニティ「ブラインド」では、「毎日13〜14時間働いているが、成果給の話が特効薬になって耐えられている感じだ」「会社の利益のためにワークライフバランス(WLB)は捨てた。毎日笑顔で残業している」といったハイニックス社員の書き込みが目立つ。一方で、「13億ウォンもあればソウルのマンションが買える」「毎年宝くじに当たっているようなものだ」といった羨望の眼差しがある反面、「ハイニックス社員に超過利潤税を課すべきだ」「株主配当は0.29%なのにやりすぎだ。会社の主人は株主ではないのか」といった嫉妬や批判も少なくない。

ハイニックスの破格の報酬は、国内1位という自負心の強い「サムスンマン」たちを強く刺激している。サムスン電子の労働組合は最近、会社側に対し「年間営業利益の15%を成果給の財源にすること」を強力に要求し、反旗を翻した。今年のサムスン電子の営業利益見通しが最大300兆ウォンに肉迫するという楽観論が出る中、労組はその15%にあたる約45兆ウォンを成果給として支給せよという要求を突きつけたのだ。これはハイニックスの「営業利益10%」を上回る基準であり、サムスン電子の年間研究開発(R&D)投資費(約38兆ウォン)さえも超える規模である。

大企業の門は「ラクダが針の穴を通るほど」狭い

結局、この現象は韓国社会の非情な断面を浮き彫りにしている。韓国の大手企業はグローバル競争で生き残るために透明かつ破格的な報酬体系を構築しているが、これは逆説的に労働市場の極端な二極化を招いている。今年2月、国家データ処(旧・統計庁)が発表した「2024年賃金労働職所得(報酬)結果」報告書によると、韓国の大企業労働者の初任給は月平均で613万ウォン(税引前)であるのに対し、中小企業は307万ウォンと、賃金格差は2倍に達する。そのため、若者たちは大企業への入社を目指して大学卒業を猶予し、金と時間を注いで「9大スペック」と呼ばれるあらゆる資格や経験を積み上げる。が、雇用市場のわずか10%に過ぎない大企業の門は「ラクダが針の穴を通る」ほどに狭い。その一方で、中小企業は慢性的な人手不足にあえぐという奇妙な現象が繰り返されている。

韓国政府はこの深い溝を埋めるために努力してきた。中小企業に就職した若者に2年間で給料以外に最大1200万ウォンの人件費を支援する「奨励金」制度や、若者が400万ウォンを貯蓄すれば政府と企業が800万ウォンを追加で積み立ててまとまった資金を作る制度などを通じ、若者を中小企業へ誘致しようと努めてきた。しかし、目の前の数百万円よりも、大企業への入社一回で決まってしまう人生の資産格差の方がはるかに大きいという事実に気づいた若者たちは、依然として大企業への就職だけに固執しているのが実情だ。

その結果、若者の雇用指標はますます冷え込んでいる。2026年現在、若年層(15〜29歳)の体感失業率は20%を上回り、求職活動をせず「ただ休んでいた」と回答した若年人口は50万人に肉薄する。韓国の就職市場は、長く過酷な氷河期から抜け出せずにいるのだ。

結局のところ、ハイニックスが見せた破格の報酬は「成果があるところに確かな報酬が伴う」という資本主義の論理に忠実な模範的事例といえる。しかし問題は、韓国社会においてこの甘い果実が、努力するすべての若者に許された公平な機会ではないという点にある。実力と同じくらい「どの列に並ぶか」が人生を左右する「運七技三(運が七分、実力が三分)」の論理が、若者たちの意欲を挫くことのないよう、社会的・国家的なシステムを整備すること。それこそが、韓国の若者を苦しめている長い就職氷河期から脱出するための唯一の道となるだろう。

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